イジメが無くならない理由

新聞やテレビでは学校でのいじめが深刻な事態になっていて、学校や教育委員会がいくら対策を立ててもイジメが無くならないどころか、今まで水面下に潜んでいたものまで出てきて、かえって数が増えている事態だと言っています。
でも、その原因にあるのは、学校や先生たちには解決できないもっと大きなところにあるのではないでしょうか。
たとえ吹けば飛ぶような規模であれ、鉄道会社の社長をしているといろいろな方とお会いする機会に恵まれています。
今までの人生でお会いできなかったような皆様方とお会いできることは、私にとってはたいへん光栄で幸せなことですから、私は今日はどなたと会えるだろうか、明日はどなたと会えるだろうかと毎日わくわく楽しく生きています。
でも。私は社長ですから、私に近づいてくる相手は「ニコニコ顔」なのは当たり前で、本当はどういう人で、何を考えている人なのかわかりません。
そういう時に私が昔から目安にしている判断基準をお話いたしましょう。
それは、その人の「下の人間に対する態度を見ること」です。
私が特に警戒するのは、上にはゴマをするけれど、下には横柄な人間。
かつて航空会社時代にもいましたが、仕入れ先や下請け業者など、自分がお客様の立場に立てるときには自分より下の相手には言葉づかいも違えば態度も違う。「木で鼻をくくった」という言葉そのものの態度を取るのですが、自分が相手より下の立場になるとコロッと態度が変わる人。
話す相手が私の部下など、自分より下の人間と見ると横柄な態度を平気でするくせに、上司である私に対してはニコニコ。
「烏は白い」と上司が言えば「ごもっとも、ごもっとも。」という人。
こういう人は私はあまり信用できませんから、大きな仕事を任せたり、深いお付き合いをしないようにしています。
なぜなら、私は基本的には「誰にでも分け隔てなく接すること。」をポリシーにしているから。
ポリシーというのは信念のことですが、簡単に言えば、小さい時に教わってきたことや、当たり前だったことが、大人になるにつれ、皆さん忘れてしまいますので、それを忘れないようにしましょう、ということです。
私は「人生ロックだぜ!」と思っていますから、強いものや大きなものに反発する精神を持ってこそロックなわけですが、人間、長年会社や社会でもまれてくれば、さまざまな処世術を身に着けるものです。ある人にとってみれば、目上の人間と目下の人間で接する態度を変えることが当然だと思っている場合もあるわけです。
そんな中で「ああやればよいのか。」と学習する人もいれば、「ああはなりたくない。」と学習する人もいるわけで、どちらが良いとか悪いとかはそれぞれの人生ですので私がどうこう言うことではないのですが、強きを助け弱気をくじくような人は、少なくともパートナーとして一緒に仕事をするのは遠慮させていただきたいと思います。
大人たちの社会がこのようになっていて、学校でも家庭でも接する大人たちが世の中の荒波をどう生きるか、どう処世術を身に着けてうまく立ち回っているかという姿を子供たちは見ているわけです。
つまり、そういう大人たちが子供たちの手本になっている。
テレビをつけても、新聞を見ても、誰が総理大臣になったとしても必ず批判され、引きづり降ろそうという勢力が、まるで悪魔のささやきのように今の世の中に蔓延しているわけですから、こういうこと自体、大人社会の中のイジメなわけで、そんなことではどんなにアンケートを取っても制度を変えても、学校でのイジメはなくならない。と私は考えています。
だから、私たち大人がまずやらなければならないのは、誰にでも分け隔てなく接すること。
社長である私にニコニコ顔で近寄ってくるのであれば、私の会社のスタッフにも同じようにニコニコ顔で接してほしいし、同じような言葉づかいをしてほしいと思います。
仕事で頑張っている人や、一生懸命やっている人に対しては、たとえ自分より立場が下の人間だと思っても相手を尊敬し、素直な気持ちで褒めてあげてほしいし、相手が成功したなら、自分のことのように喜んであげてほしい。
大人たちの社会にそういう風潮が広がれば、子どもたちにもそれが伝わって、イジメが根本から消えてなくなると考えています。
いすみ鉄度沿線では、地域の大人たちがみんなで協力して駅構内の草取りや花壇の整備、掃除、沿線の草刈りをやっています。
これは第3セクターになってからずっと続いていることです。
自分のお父さん、お母さん、おじいさん、おばあさんたちが、誰に頼まれるでもなく、自分たちから率先して鉄道を守るために、利用していただくお客様のために自主的に一生懸命働いている。
そういう地域で、そういう人たちの姿を毎日見て育ったのが、いすみ鉄道沿線の子どもたちですから、中学生も高校生もみんな車内で行儀よく乗っています。
日本全国のローカル線では、高校生の乗車マナーの悪さが問題になっていますが、いすみ鉄道では、全くといってよいほどそういう問題が発生していません。
大人がまず自分たちのやっていることを振り返り、身を正して生きていくことで、子供たちもそういう大人を見習って、立派な大人になっていく。それが地域社会だと思います。
だから、政治家の人たちを批判するのではなく、一生懸命やっている人を褒めることから家庭内の会話で始めれば、イジメの問題も徐々に減っていく。
私はそう思います。
選挙運動が始まりましたが、大人たちのやっていることがお互いを批判し、ともすればイジメではないかと子どもたちに見られないようにしなくてはいけませんね。
皆さんはどうお考えですか?