国内線を飛んでいるパイロットの人たちはご存じだと思いますが、日本には暗黒地帯があります。
北海道や東北方面から東京へ帰ってくる航空路は仙台の西側を飛行して茨城県の大子を目指して南下してきますが、夜の便では仙台を過ぎて5分ぐらいすると、飛行機の左前方から暗黒地帯が近づいてきます。
夜間飛行は都市の明かりがとてもきれいで、海岸線は町々や道路の明かりが輪郭を作って昼間よりはっきりと見ることができます。
街道や高速道路にも光の帯が続いています。
北から帰ってくると、進路の左側で仙台市内の明かりがひときわ大きくきれいで、港の形もくっきりと見えるので、いつも見とれてしまうのですが、その約5分後、仙台から南に続いていた海岸線の明かりが消えてしまいます。
海岸線だけでなく、道路の明かりも、集落の明かりも、何も見えなくなって、暗黒地帯が広がるのです。
この暗黒地帯は半径20kmから30kmに及びますので、飛行機の左手に数分間にわたって真っ暗な、誰も人が住まない、人間の生活感のない地域が続きます。
私はここを飛ぶたびに、わずか数分間のこの暗黒地帯がとても長く感じられます。
海岸線には、問題となっている発電所だと思いますが、2つ3つ煌々と光っている地域がありますが、明るいのはそこだけで、他の地域のように、人間が生活している灯が何も見えないのです。
今まで、原発の避難区域をこのような目で見た報道はありませんが、私は、この暗黒地帯を作ってしまったことは、やはりとんでもないことだと思います。
経団連の爺さんが、自分に課せられた日本経済を活発にするという任務がまるで達成できないことをごまかすかのように、「産業界にとっては死活問題である。」なんて言って政治を恫喝していますが、原発事故が天災でなく人災だとすれば、高度1万メートルから見渡す限りの暗黒地帯を、私たち日本人は作ってしまったわけです。
それだけではありません。
先日も事故がありましたが、今後、原子炉建屋に残されている数千本といわれる燃料棒の処理を誤れば、この暗黒地帯がさらに広がって東京までもが避難区域になる可能性がないわけでもありませんし、東南海地震などが発生すれば、この暗黒地帯が日本全国いろいろなところにできることになるわけです。
今を生きている私たちが、緊急事態が発生した時に自分たちがコントロールできないシステムを、便利さゆえに運用していて、その理由が、発電用、つまり「お湯を沸かすため。」なのですから、あまりにも身勝手で、後の世に活躍するこれからの人たちに対して、どう説明しても正当化できないことなのだと、今、あたらめて思う次第です。
世界中で原子力が見直される傾向になるようですが、日本の場合、地震国で、活断層の上に平気で原発があるのですから、世界常識とは比較にならないほど緊張感があって当然だと思うのですが。
いかがなものでしょうか。
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