県立高校校長会

昨日は千葉県県立高校校長会という会合に呼ばれ、講演をしてきました。
学校嫌いの私が、先日に続いて校長先生の勉強会に「話をしてくれ」と呼ばれ、校長先生ばかりの集まりに出かけたわけです。
会場にいる人は皆さん校長先生なわけで、目の前にたくさんの校長先生を目にすると不思議な感じがしました。
一人一人の校長先生は良い人なのでしょうが、集団になると私としては嫌悪感が先に出るわけで、「私のような人間の話を聞きたいということは、学校というところはずいぶん迷える人たちの集まりなんですねえ。」などと憎まれ口をたたいてしまうのです。
日本は雇用の流動性が低く、今の50代では、私のように人生のうちで何度か「業界を変えている」人は少数派になります。
例えば、学校の先生は22歳、23歳で先生になってから定年になるまで、40年近くもずっと「先生」と呼ばれているわけですから、世間的に見たら「おかしな集団」です。
教育関係者というのは基本的に教育業界に何十年もいる訳ですから、自分たちの常識がすべてになっているわけです。
でも、そのことに気づかない。
これが一番危ないところなのですが、そこに気づかない。これが普通なのです。
先日テレビを見ていたら、原発に賛成、反対という意見を聞く会議の席上で、電力会社の社員という人が、一生懸命原子力発電の必要性を説いている。
彼は、電力のプロとして、自分が信じて疑わない原子力の安全性、必要性を一生懸命説いている。
でも、そのことが世間からかなりずれているということに気が付かないわけです。
これが、業界君の陥りやすい罠で、原子力ムラの特徴だとか言われていますが、教育業界だって教育ムラなわけで、自分たちでしか通じない常識に支配されているのです。
航空業界もしかり、鉄道業界もしかり。
学校を出てそのまま一つの会社に勤務してきた人間の集団というのは、少し独特なものがあるんだということだけでもわかってないと、だんだんずれが大きくなって、取り返しがつかなくなるのです。
勝浦に県立高校があります。
土地柄、水産課程があるユニークな学校です。
その学校の生徒さんたちが特産品のカツオを使って甘辛く煮込んだ角煮を作っています。
これがとてもおいしいので、いすみ鉄道で販売させてくれとお願いしました。
地元の高校生が特産のカツオで作った角煮ですから、いすみ鉄道のラベルを付けて販売すれば一躍全国区になる。
私はそう考えて申し出たのですが、答えはNO。
なぜなら県立高校だから、学校の施設を使って商売行為はできない。
ということらしい。
3年前のことです。
「そうですか、それは仕方ありませんね。」
とニッコリ笑って話を聞きましたが、
そんなことだからダメなんだよ! と腹の中で「阿呆!」と叫んでいました。
その勝浦の高校が廃校になる危機に面しています。
県立だから、公立だからという理由で、何もしないでいるとそういうことになるんだなあ、という典型例でしょうか。
あの時、いすみ鉄道でカツオの角煮を売り出していれば、今頃全国区になっていて、全国のファンから「これだけ素晴らしい高校をどうして廃止するのか。」と「廃校反対!」のコールが巻き起こっていたかもしれませんが、教育ムラですから、仕方ないのかもしれません。
結局、ムラ社会ということろは、今までのやり方で今後も続けていくことを前提としているわけです。
でも、今の世の中、過去の経験の延長線上に未来はないわけですから、今までと同じ制度、同じやり方を変えられないということは、残れないということです。
校長先生というのは、ある意味で「上がりのポジション」でしょうから、大過なく数年を過ごせば「めでたしめでたし」なわけで、10人校長先生がいれば8人はそういう人なのでしょう。
それはそれで生活のための仕事ですから否定はしませんが、忘れていけないのは生徒のこと。
どうも、生徒不在の意見が飛び交っているような気がしてなりません。
大多喜高校も、いすみ鉄道の存続と大多喜高校そのものの存続が決まって、私から見たら何だかのんびりしている。
もう余計なことはしなくても大丈夫と思っているのでしょうか。
でも、その大多喜高校のおひざ元に、市原の私立高校がスクールバスをまわして生徒を連れて行っているが現実なのです。
大多喜高校は進学校として伝統があるようですが、現状を見る限りではGMARCHにやっと数名入っている程度。
その程度で進学校と言っていられるのもせいぜい数年だと私は思っていますが、県立だからあれはできない、これもできないと言っているうちに、少子化の生徒をみんな私立に持って行かれるということは目に見えているわけですから、今のうちからいろいろと名前を売って注目を集めて生徒の関心を引くような手をいくつも打って行かなければならないと私は思う訳です。
いすみ鉄道だって、存続が決まってから、次々とビジネスプランを打ち出しているのを見ればお分かりいただけるはずなのですが。
結局は、今いるムラ人たちが長年かかってダメにしていくわけで、これは地方のシャッター商店街と全く同じ構図なのです。
「何を話しても構いません。」ということでしたので、学校嫌いな私が県立高校の校長先生の前でこのような好き勝手な内容の講演をしてきましたが、さすがに昨日集まっていた校長先生方は目の色が輝いている人たちが、約半分ほどいらっしゃいました。
上がりのポジションなのに半分も目を輝かせているというのは、なかなか捨てたもんじゃありません。
私と同じように公募で校長になられた先生がいらっしゃったのは新鮮な驚きでした。
※GMARCH(ジーマーチ)
東京を代表するビジネスクラス大学を今の受験界ではこのように呼んでいます。
Gくしゅういん、Mえいじ、Aおやま、Rっきょう、Cゅうおう、Hうせい。
ビジネスクラス大学とは、ファーストクラスの下という意味の私の造語です。