ぶっきらぼうで、融通が利かないことを例えて、「お役所のような仕事だ」と言います。
でも、私は、この言葉はお役所に失礼だと思います。
昭和の頃は知りませんが、今のお役所はサービス業の鏡みたいなところもたくさんあります。
公務員の人たちも周りの目があるからでしょうか、皆さん熱心で、丁寧。
いや、周りの目があるというのは、10数年前のことで、最初は周りが見ているからと始めたサービス向上かもしれませんが、やっているうちにお客様(市民)から感謝されるようになる。そうすると、働く方もやっぱりうれしいし、頑張ろうと思う。すると、お客様からさらに喜ばれる。
そういう好循環が出来上がっているのが今のお役所です。
だから、怠惰で、セクショナリズムで、マニュアル的で、余計な仕事をしたがらないことを称して「お役所的」という言葉は全く当てはまらないのです。
でも、世の中にはいわゆる「お役所的仕事」をしている民間会社は結構身近にあるものです。
特に、自分たちで「私たちは民間会社です。」などと言っている昔お役所だったような会社は、そういうところがある。
昔お役所だった時代の考え方や悪しき風習が今も色濃く残っているわけで、そういうところでは、昔お役所だったころから働いている人ばかりでなく、民間会社になってから入社した人たちにも不思議とその悪しき風習が受け継がれているのですから目も当てられません。
だから、今、「お役所的だ。」といわれる仕事をしている民間会社のことは、本当は「旧お役所的だ。」とか「昔のお役所みたいだ。」とか、もっとさかのぼって「お奉行様的だ。」とでも言った方が正しいのです。
私が勤務していた航空会社は30年近く前に民営化されました。
それまでの国営航空から民営化された当時はさぞ戸惑ったことでしょう。
と思いたいのですが、実はそうでもなくて、私たちの先輩にあたる当時の職員は実に態度がでかかった。
具体的には昭和一けたのおじさん達でしたが、「乗せてやるぞ。」的な態度でしたから、その下で働く私たちは見ていてハラハラしたものです。
幸いにも航空業界はその後激しい競争の時代に突入しましたので、私たちは若いころから接客については相当鍛えられました。
つまり、昔お役所だったころの悪しき風習を次の世代に引き継がなかったのです。
そのために必ずやらなければならないこと。
それはセクショナリズム(縦割り)の打破です。
一見難しそうですが、実はこれは簡単なことで、どうすればよいかというと、かかってきた電話に出た人間が最後まで責任を持つということ1つだけ。
「それは別の部署になりますので何番へお掛け直しください。」
こういう会社は民間企業ではほとんどなくなりましたが、自称「民間企業」では往々にしてありがちです。
なぜなら「別の部署である」というのは会社の中の都合であってお客様には関係がないこと。
でも、昔のお役所であれば、お客様のことよりも自分たち組織の内部事情が絶対的優先権があったからです。
だから、電話に出た人間は、「では担当者から折り返しお電話をさしあげます。」と言って、自分で別の部署に連絡し、繋げばいいのです。これを責任を持って行うこと。
そして、いろいろいただく話に関して、できない理由を探すような対応をしなければよいのです。
これができるようになるかならないかがセクショナリズムを打破できるかどうかのポイントです。
従業員が100名だとか、1万名だとかは理由になりません。
従業員5万名を抱え、全世界に路線網を持つ航空会社で実践できたことですから。
さあ、皆さん、「昔のお役所みたいな仕事をしている会社」、身の回りにいくつあるか数えてみましょうか。
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