いすみ鉄道の沿線は自然が豊かで、風景がきれい。
といっても、富士山が見えるわけではありませんが、私たちがともすれば忘れがちな日本の原風景が、いすみ鉄道の沿線には、今でもふつうにあります。
温暖な気候で、作物もよくでき、人々が助け合いながら穏やかに仲良く暮らしています。
この間お話しした90歳のおばあちゃんが観光客に汽車の中で席を譲る、
そんな心温かい地域が、いすみ鉄道沿線です。
私は、東京からほど近い房総半島に、こんな素晴らしいところが残っていることを皆様に知っていただきたくて、この地域を「房総のムーミン谷」と呼んで、ムーミン列車を走らせています。
だから、本当に、そのことがわかる人にだけ来ていただきたいのです。
「ここには 何もない があります。」
あえてこう申し上げているのも、ふつうの田舎の風景の良さがわかる人だけに来ていただきたいと思っているからです。
テレビや雑誌で、たくさん紹介していただくのはとてもありがたいのですが、そうやって広く一般の人々に知られるようになると、たくさんの人が押しかけてきて、ローカル線の風情が無くなってしまいます。
いすみ鉄道は黄色いいすみ200型が6両に、キハ52が1両の計7台しか車両がありません。
線路も単線ですから、都会の列車のように長くすることも、増発することもできませんので、運ぶことができるお客様の数も限られています。
そこに、たくさんのお客様が一度にいらしてしまったら、満員電車になってしまいますし、乗り切れない人が出てくるかもしれません。
だから、私はことあるごとに、「乗りに来なくてもよいですよ。」と言っているのです。
ローカル線は乗客が少なくて、誰も乗る人がいないから廃止される。
だから、一人でも多くの人が乗ることで、存続ができる。
一般的な常識人でしたら当然このように考えて、「乗りに行こう!」 「協力しよう!」と、少しでも貢献できるようにと乗りに来てくれます。
それなのに、鉄道会社の社長である私が、「乗りに来なくてもよい!」と言うのですから、早とちりする人は「あいつはけしからん奴だ。」となって、会社にお手紙がたくさん舞い込んでくるのです。
でも、私は、机上の空論でローカル線の存続をやっているわけではなく、実践として、実業としてローカル線ビジネスを展開しているのですから、そのようなお手紙をいくついただいても、全く意に介しません。
私の辞書では、ローカル線というのは、空いてなければいけないのです。
都会からふらりとやってきて、ふつうに座って旅行ができるのがローカル線なのです。
地元の人や旅行者が数人乗り合わせて、見知らぬ同士で会話がはずむのもローカル線だし、一人で文庫本をもって、居眠り半分で、汽車の揺れに身を任せるのもローカル線です。
経営効率だけを考えて、クロスシートをロングシート化し、長編成を短編成にして、少ない車両でできるだけたくさんのお客さんを乗せようとしているローカル線が日本にいくつもありますが、どの路線も乗客離れが続いています。
なぜならば、鉄道が車やバスに対抗するのですから、利便性で勝るはずはありません。
車はいつでも好きな時に利用できますし、バスならばショッピングセンターや病院、役場の前で降ろしてくれますから。
だから、都市交通や都市間輸送以外で鉄道が車やバスに対抗するためには、のんびりと景色を楽しむとか、ゆっくり座ってコーヒーが飲めるなど、「ゆとり」を提供するしかないのです。
だから、ローカル線は空いていなければ、ローカル線ではないのです。
これが、私のローカル線ビジネスのスタートラインです。
ここで、皆様方のご意見が2つに分かれると思います。
1:少しでも利用客のアップに努力しなければけしからん。
2:鉄道会社の社長が「乗らなくてよいです。」と言うからには、何かからくりがあるはずだ。
1の人は、いすみ鉄道の(私の)やり方は受け入れることができないと思っていらっしゃる方でしょうから、おそらく、ここで、SO LONG。
2の人は、きっと乾いたスポンジのような頭脳をお持ちの方でしょうから、次回以降のこのブログをどうぞお楽しみに。
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