お客様の購買周期

商品を販売する場合、お客様の来店頻度や購買周期を念頭に置く必要があります。
毎日の生活に必要な食料品でも、魚や肉、総菜などは毎日買いに出かけますが、味噌や醤油、おコメなどは数週間に一度でしょうし、モノによっては、数カ月に一度という商品もあるでしょうが、日用品を扱う商売は、基本的には朝刊の折り込み広告を見たお客様が午後にはお店にやってくるという商売です。
居酒屋さんなどの商売ではお客様の来店頻度は週に1~2回から月に数回程度ですから、季節ごとにメニューを工夫して、今なら「秋の味覚」の新メニューで広告を打って、一週間以内の来店を見込むのが一つの目安と言うことになると思います。
観光地も同じようにお客様がいらっしゃる頻度を考えて商売をします。
日帰り観光地でしたら、お客様が旅行に出ようと思う頻度はだいたい2~3ヶ月に1回。
宿泊を伴う観光地の場合は、1年に1~2回が来店頻度ということになるでしょう。
いすみ鉄道を例に見ますと、3月に菜の花のシーンをテレビや雑誌で見て、
「いい所だなあ、行ってみたいなあ。」と思ったお客様が、実際にやってくるのはゴールデンウィークか夏休み。
もちろん、テレビで見た菜の花を見に、翌日すぐにいらっしゃる方もいるとは思いますが、そういう人も、次に来るとしたらやっぱりゴールデンウィークか夏休みでしょう。
そして、気に入ってその次にまた来てくれるとしたら秋の行楽シーズンや紅葉の季節と言うことになります。
観光の商売をしている人は、このように、お客様が来訪される頻度を計算して、「どうしたら来ていただけるか」「来ていただいた方をどのようにして自分の商売に取り込むか」などと、商売の作戦を考えるのです。
これが、沖縄とか北海道となると、来訪頻度は年に一度程度ですから、夏の観光シーズンのお客様は、おそらく前の年の夏ごろに、また年が明けたお正月頃から、「今度の夏は沖縄のビーチに行こう!」とか、「涼しい北海道に行くぞ!」と心に決めるものだと思います。
だから、観光地で商売をする人たちは、自分が仕掛けた商売の仕掛けで、お客様が実際にやってくるまで、何か月もじっと我慢強く待っていなければならないのです。
これが、朝刊の折込広告を見て、午後にすぐにお客様がやってくるような、スーパーマーケットなどの日常の商売と違うところです。
ということは、観光の商売では、テレビや雑誌で紹介されても、実際にお客様がやってくるまでのこのタイムラグを我慢することが必要ですから、お客様がやってくるまでの数か月間を耐えるだけの資金力がなければ、せっかくシーズンになってお客様がやってきても、「あれ? テレビで見たお店がない。」ということになってしまいます。
特に最近では「口コミ」というのが大きなウエイトを占めるようになって来ていますので、「口コミ」の場合は、宣伝効果としてはテレビや雑誌よりもずっと時間がかかり、実際にお客様がやってくるようになるまで半年から1年かかることも珍しくなく、お客様が来るまで「ガマン」しなければならない期間がその分長くなるのです。
いすみ鉄道でも、国吉駅構内で営業していたたこ焼き屋さんも、バーベキューチキンも、コーヒー屋さんも、みんな、シーズンになる前に、お客様がいらっしゃる前に、こんなはずじゃなかった、と撤退してしまいました。
でも、今、土日の国吉駅は大賑わいで、お客様は食事をするところもなく、個数限定の駅弁は11時半には売り切れてしまう状態が続いています。
私から見ると、彼らがもう少し我慢強く商売をしていたら、おいしい思いをできたのに、もったいないなあ、と思うのです。
もっとも、この時期、皆さんそれぞれ本業が忙しいでしょうから、なかなか観光客のお相手をすることができないのかもしれません。
房総半島は昔からそういうところですから、観光産業を「片手間」でやっている印象があるのです。
私の父親の実家(勝浦のおばあちゃんち)もそうでしたが、漁師や農家が片手間で民宿や食堂をやっている。
これ、40年も前の話だけど、房総半島は今でもそんなところです。
見方によっては素朴で良いとも言えるけれど、やっぱり「片手間」ですから、いつまでたっても洗練されることなく、創意工夫もない状態で、他の地域にお客様をどんどんとられているのですね。
マーケティングでいわれる原則があります。
業界で5つの会社を1位から5位までのシェアの順番で並べます。
不景気になって、20%お客様が減ったとすると、
1位から5位まで、一律に20%ずつお客様が減るのではなくて、4位と5位の会社のお客様がゼロになるのです。
つまり、強いところが残り、弱いところが消えていくのです。
私が子供のころに見られた現象ですが、外房線の駅にお客様が汽車待ちであふれかえり駅前広場まで並んでいました。
臨時列車も運転されていましたが、運びきれないほどのお客様が夏の房総にはあふれていました。
そういう時代ならともかく、今のような厳しい時代では、片手間にやっている商売は、やっぱり淘汰されていくというのが、教科書通りなのかもしれませんね。
ちなみに、いすみ鉄道で私が展開している商売は、
・毎日、通勤通学などでご利用いただいているお客様
・毎週来てくれるお客様
・毎月来てくれるお客様
・数か月に一度のお客様
そして
・いつか来ようと思っているお客様
このどのお客様にも対応できるスタイルを取っているのです。