鉄道は文化です。

今日は文化の日。
鉄道は文明の象徴と考えられています。
蒸気機関車から電車、ディーゼルカー、そして新幹線と、明治大正昭和と技術革新によってどんどん発達してきました。

1分でも早く目的地へ行く。
そのためにはスピードアップ。

これは文明の発達によるものですから、明治5年以降、鉄道の歴史は文明とともにあるのです。

そう、列車少しでも速く走ろうとすると、鉄道は文明なんですね。

でも、列車がゆっくり走ろうとしたら、これは文化になる。
私はそう思っています。
だから、百年前にできた鉄道をどうやって現代風に利用して後世につなげようかと考えた時に、文明の利器として考えると行き詰ってしまうのですが、文化として考えるとまだまだ活用できることは、16年前に私が提唱し始めた時はなかなかご理解をいただけませんでしたが、最近では観光列車という側面から、多くの皆様方にご理解いただけるようになったのではないでしょうか。

ところが、今から半世紀以上も前の昭和40年代から、鉄道を文化として捉えて、それを記録し続けてきた皆様方がいらっしゃいます。

その皆様方の写真展が都内の池袋で開催されていますので、今日はふらりと訪ねてみました。

この写真を見てすぐに熊本県の高森駅だってわかってしまう自分が怖いですね。
どうしてわかるかって?
だって、機関車はC12でしょ?
C12が走っていた路線は限られるし、バックじゃなくて正面向いているでしょ。
駅構内なのに線路がカーブしているし、だとすると向こうに見える山は阿蘇の外輪山。
そう考えると高森線(今の南阿蘇鉄道)の高森駅でしょう。
高森線は立野から高森へ向かう列車がバック運転でしたから、高森駅から立野に向かう列車は正面向きなのです。

まぁ、このぐらいのことがすぐにわからないようであれば、「昭和の国鉄を再現する」なんてことは恥ずかしくて言えませんからね。

大先輩の鈴木さんの作品です。
この鈴木さんの作品、すごいですよ。
何がすごいかって、

わかります?
C11が客車12両をけん引しているのです。

今は廃線になってしまった島根県の大社線です。
大阪から急行「だいせん」として荷物車にA・B寝台車にグリーン車、そして普通客車列車を連結した12両編成を、C11が単機で、しかも逆向きでけん引しているシーンです。

家にある1972年当時の時刻表です。
出雲市を7:05に出る125列車ですね。
大阪を前夜21:32に出て急行「だいせん」として走ってきた夜行崩れの列車です。
7:19に大社に着いて、すぐに機関車を反対側に付け替えて126列車として出雲市まで走ります。
その次の127・128列車もSLけん引の客車列車ですね。
朝の通勤通学列車は乗客が多いので、当時貴重だった気動車では両数が足りないため、客車をたくさん連結して輸送をさばいていました。

大阪から来た夜行列車がそのまま通勤列車になるという、車両のやりくりの苦労がうかがわれる運用ですが、この列車を撮影するためには、それよりも早い時間に現地へ行っていなければなりません。
当時高校生だった鈴木さんは、多分133Dで出雲高松へ先回りしていたのでしょうね。

1970年と言えば私が小学校5年生の時でした。

「あぁ、あと数年早く生まれていれば・・・」

そんな気持ちだったのですが、
「当時の若者たちはみんなそう思ってましたよ。あと1年早く生まれていれば、○○線の蒸機に間に合ったとかね。」
と、鈴木さん。

先輩方皆さんそう思われていたのですね。

こういうことがわかる人は鉄道を文化として捉えられると私は思います。

そして夕暮れ迫る池袋。
ここは私の故郷なんです。
鈴木さんが「だいせん崩れ」のC11を写された1970年は、前の大阪万博の年でした。
この西武デパートの壁に「EXPO70、大阪万博開幕まであと○○日」と書かれた看板がデカデカと掲げられていました。

ちょうどバスが止まっているあたりに都電の折り返し停留所があって、向こうのビルは確かキンカ堂という1階から5階ぐらいまですべて手芸用品のデパートで、おふくろと一緒に池袋へ買い物に行くと、必ず立ち寄るのです。
それが、つまらなくてね。
いやでいやで仕方なかったんですが、そのキンカ堂の地下に食堂があって、お買い物の後は地下の食堂でお子様ランチを食べさせてくれるので、仕方なくおふくろの買い物に付き合っていました。
そのお子様ランチのプリンが、昔ながらの昭和のプリンだったのです。
まだ、プッチンプリンなどが出る前でしたからね。

キンカ堂の向かいにあるのがタカセ。
パンと洋菓子を売る店ですが、ここは当時のままですね。
タプンとしたカスタードクリームの入ったシュークリームがうかまった。
めったに買ってもらえなかったけど。

というようなことが、池袋の町を歩いただけで走馬灯のように浮かび上がってくるから不思議ですね。
故郷というのは、そういうところなのでしょう。

ということで、今日は文化の日。
文明の利器である鉄道を文化ととらえて活動してこられた先輩方の作品群を拝見して、ただただ「すごいな~」と思った1日でありました。

本日はありがとうございました。

さて、うちのC11は何両引けるのでしょうか?
今度試してみましょうかね。

(写真展の展示写真は許可を得て撮影したものです。)