ローカル鉄道は文化です。

地域で鉄道を使った活性化に頑張っていらっしゃる方から、
「社長に『ローカル鉄道は文化です』と言われたことが励みになっています。」
と声をかけられました。

その方とは2年ちょっと前にお会いしてそう申し上げたのですが、久しぶりにお会いして私の言葉が励みになって今でもがんばっていらっしゃることを聞いて、とてもうれしく思いました。

そうです。
私がポリシーとしていることの1つが、「ローカル鉄道は文化である。」ということです。

今まで何度かこの話をしてきたと思いますが、初めての方もいらっしゃると思いますので、今日はおさらいをしておきましょう。

文化に対して文明という言葉がありますね。

文明というのは技術革新などで今までできなかったことができるようになるということです。
電気が点いたり、テレビ放送が始まったり、飛行機が飛んだり、スマホで画像まで送れるようになったり、これはすべて文明です。
そして、鉄道の歴史というのは「1分でも早く目的地へ行く。」ことの追求でありますから、これもすなわち文明です。

たとえば「札幌―函館、2時間台」とか言って、実は2時間59分だったりするわけですが、つまり1分でも早く行くんだというのが明治5年に鉄道が走り始めてから今日まで続く歴史ですから、鉄道会社はそのための絶え間のない努力や技術革新をして来ているわけで、これ、すなわち文明なのです。

この文明に対して文化とは何か。
例えば、鉄道が1分1秒を競って速く走ることをやめてみるとどうなるか。
今まで2時間かかっていたところを5時間で走ってみたらどうなるか。
それをやってみたら今まで見えなかったことが見えるようになって、わからなかったことを知るようになるのではないか。
だとすればこれすなわち文化ではないか。
私は若いころからゆっくり走る列車に乗る度にそう思っていました。

列車が何分でその区間を走るということは、時間という物差しがありますから誰の目にもはっきりしています。
これが文明です。

でも、ゆっくり走ってみたら見えて来るもの、感じるもの、わかるようになるものがありますよと言っても、そういう感覚的な価値観は個人個人によって違いますから共通の物差しがありません。つまり、人それぞれ感じ方が違いますから、ある人にとっては良いねということも、別の人から見たら「よくわからん」となるわけですが、実はこれが文化の特徴なのです。

例えばダビンチの「モナリザ」を見て、「素晴らしい」という人もいれば「どこが良いの?」という人もいるでしょう。
それが文化の特徴なのです。

だから、ローカル線の列車がのんびりと走っているのを見ても同じように「いいね」という人もいれば、「どこが良いの?」という人もいるわけです。

鉄道の特性というのは高速性と大量性です。
たくさんの人や物を高速で運ぶことができるというのが鉄道の特徴ですが、ローカル鉄道にはそのどちらもありません。1両か2両の列車がゆっくりと走っているのですから。

だから、文明で勝負をすると「こんな列車は要らないね。」ということになりますが、文化として考えてみると「いいですね」という人が出てくる。
まぁ、芸術のようなものですから万人に理解してもらう必要は無いと思いますけど、私の実感としてはローカル鉄道ののんびりと走る列車に対して「いいですね」と言ってくれる人が最近増えてきているように感じます。

日本が発展途上の時代を見てきた人間としては、貧しい国の国民は「少しでもよくなりたい」と思っていますから、とかく文明に走ります。
その象徴が物欲です。
昭和40年代には三種の神器と呼ばれたテレビ、洗濯機、冷蔵庫を誰もが欲しがりました。
昭和50年代になるとクーラーやマイカー、あるいはマイホームを欲しがりました。
そして昭和60年代になると海外旅行ですか。
こうして豊かになってきた日本ですが、身の回りが物で満たされるようになると、次の時代としては精神的な満足度を求めるようになって、今の時代は別に遠くへ行かなくても、身近な所でも気に入った所があれば何度でも行くようになりました。
こういう過程を発展途上国から先進国になったと私は思っていますので、先進国民としては心を豊かにすることが求めるものになってきていて、それが文化度だと思っています。

ちなみにいつだったか中国人の友だちに聞いたところ、「古い鉄道車両に愛着を持つなんて理解できません。」と言われたことがありましたが、つまり、まだまだそこまでなんでしょうね。

ということで、鉄道が早く走ることをやめてゆっくり走ってみると、そこには文化があると私は思っていますから、だとすれば万人には理解してもらえないかもしれませんけど、熱心な人たちにご理解をいただくようになれば、地域を含めて活性化して行くと私は考えています。

ではその活性化とは何か。
これは単純明快で人の交流、経済の交流です。
ということは商売ですから、飽きずに毎日コツコツと地道に続けていかなければならないのです。
だから、「やりましたけどダメでした」ではなくて、続けていくことが大切だと私は思います。

大井川鐵道で走る旧型の客車などは、これは完全に文化でありますから、乗ってみてそこからあなたは何を感じますか? ということがテーマなのであります。

1日フリー乗車券4800円でEL急行に朝から夕方まで乗ると、見えてくるものがありますよ。

たぶんね。