おもてなしとは何か?

JR東日本の四季島のサービスクルーが乗務中にお客様に提供するお酒を飲んでいたということがニュースになっています。

私が驚いたのは、お酒を飲んだということよりも、四季島のサービスを担っているのが「JR東日本びゅうツーリズム&サービス」という子会社であることです。

JR東日本の四季島という列車はJRの最高峰の豪華列車だと私は思います。
自社の看板列車です。
その看板列車に乗務して最高峰のサービスをするスタッフが子会社の人間であるということに対して、私はものすごく大きな違和感を感じます。

通常であれば、最高のサービスを提供するのであれば、最高の人材を充てるでしょう。
例えば国際線の飛行機のファーストクラス。
新人クルーを乗せることはまずありません。
クルーになって一生懸命乗務して、サービスが洗練されるようになってきて初めてファーストを任されるというのが通常のコースでしょう。
きっと数年かかりますし、誰でもというわけではありません。

ホテルだって、採用からいきなりコンシェルジュになることなどないと思います。
裏方、下積みから始まって、何年もかけてたどり着くのがコンシェルジュであり、ドアマンであると私は思っています。

ホテルのドアマンってすごい仕事なんですよ。
常連さんの顔と名前はもちろんですが、乗ってくる車のナンバーまできちんと覚えていますから。
そういうところが一流だと私は思いますが、ドアマンなんて誰でもできるだろう的に考えているところは一流ではありません。

私も時々一流ホテルにゲストとして呼ばれる時がありますが、そういう時にはホテルの黒服がドアのところに居るんです。
そして、降りた瞬間に
「鳥塚様、お待ちいたしておりました。」
と声をかけられます。
私は「どうして私のことを知ってるんだろう?」と不思議に思いますが、ネットか何かで顔を事前に調べておいて、そろそろかなと思う頃合いに玄関で待っていてくれるんですよ。
新幹線を降りて駅からタクシーで乗り付けるのですから、車の番号は関係ないし。

そういうサービスを受けると、「一流だなあ」と思うわけですが、一流が一流たるゆえんがそこにあると私は考えます。

JRの最高峰の列車って、列車の中で食事をして、列車の中でお泊りをする列車でしょう。
でも、列車の中で食事をするってのは「食堂車」だし、お泊りをするってのは「寝台車」ですが、そのどちらもめんどくさいからという理由でやめてしまったら、働く側は修行する場所がないし、サービスを磨く場所もありません。
にもかかわらず、最高峰だけやりたいって言うんですからね。
ちょっと虫が良すぎる気がします。

毎日一生懸命列車の中でお食事を提供し、毎晩一生懸命列車の中で寝台を提供するようなサービスの延長線上でなければ、最高峰のサービスなどありえないと私は思うのですが、基本的なサービスの提供はめんどくさがってやめてしまっている会社に、最高峰のサービスができるわけないと私は思っています。

でも、そこを挽回して最高峰のサービスを目指すのであれば、少なくとも自社の優秀な社員を選別してチームを作り、直営でサービスを行うべきだと思うのですが、昨今の正しい経営とされているのはそうではなくて、子会社に委託して、そこの職員が本社の意向を忠実に実行するというスタイルなのでしょうかね。
その方がコストが安いでしょうし。

ちなみにこの子会社の募集要項はこんな感じです。

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仕事内容

JR東日本が運行するクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」における、接客・添乗業務など
具体的な仕事内容
◆車内及び旅行行程中の接客業務
◆観光地での添乗業務
◆ダイニングカー及びラウンジカーでの食事、飲み物のサービス
◆客室、ラウンジカー、ダイニングカーなどの清掃業務
◆ベッドメイキング
◆荷物や食材などの積み込み・積み下ろし業務
※上記の業務全般を担当していただきます。

現在、3チームのシフト制を採用(1チーム10~11名)。
「TRAIN SUITE 四季島」は、10両編成で最大34名のお客さまが乗車され、各チームが交代で勤務しています。

★☆………………………………………………
未経験者も安心。約半年間の導入研修を用意
…………………………………………………★☆
<研修スケジュール(目安)>
▼1~2カ月目
座学研修を実施。列車の知識をはじめ、安全運行、サービスの基礎を学びます。

▼2~3カ月目
上野駅の「TRAIN SUITE 四季島」専用ラウンジ等での実践的な研修を通して、サービス内容を習得します。また、車両センターで積み込み、積み下ろし業務のサポートも行います。

▼4~6カ月目
実際に乗車してのOJT研修がスタートします。

★研修中には、ワインや添乗員の資格など、業務に関連した資格取得も目指します。

チーム/組織構成
「クルーズトレイン本部」への配属となります。
20~50代まで、性別問わず、幅広い年齢層の社員が活躍中です。

対象となる方

【学歴不問】接客経験をお持ちの方◎ホテルやレストランのスタッフ、添乗員の経験者歓迎
【歓迎するスキル・資格・経験】
◆高い語学力(英語・中国語など)
◆ソムリエ・ワインエキスパート・レストランサービス技能士・バーテンダーなどの資格
◆旅程管理主任者の資格

ホテルやレストランのスタッフ、添乗員の経験者は特に歓迎します。

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旅行費用に百万円からの金額を払うお客様はすべてお見通しだと思います。
同じJRでも子会社丸投げじゃないところもあるようですが、何のためにこういう列車を走らせているのか。
グランクラスの乗務員もそうですが、やっぱりなあと思うのであります。

ちなみにですけど、こういう列車の中で出されるワインなどのお酒というのは、当然1本数万円から数十万円するものでしょう。
高額な旅行費用とは別にご注文されます。
そういうお客様って、たいていは全部飲まずに、ボトルに少し残すんです。

なぜか?
ソムリエが味を覚えるためです。

ソムリエといえども1本何万円、何十万円というお酒をそう頻繁に飲めるわけではありません。
だから、お金持ちの人たちは全部飲まずにボトルの底に少し残しておくのです。
つまり、ソムリエを育てるのです。

これはノブレスオブリージュの1つと言われていますが、今回はそういうお酒をどれだけ飲んだかは知りませんが、処分されるほど飲んでたということ。しかも30数名のチームの中の6名ということになれば、各チーム2名ずつ。下請事業者に丸投げするということは、つまりはその程度だということになると私は考えます。

私は今まで伊勢海老レストラン列車や雪月花などの豪華列車から居酒屋列車、夜行列車などの庶民向け列車など各種の観光列車をやってきていますが、子会社に丸投げするようなことはせず自社で完結するサービスを心掛けて来ています。

その理由はお客様の顔が見えるからで、自社のサービスの評価がわかるからです。
そうして少しずつ積み上げてだんだんと改良して行くのがサービスだと思っていますからね。

ということで本日の私。
トーマスの発車の前にお客様をこの姿でお出迎えしました。
仕事がありますので列車に一緒に乗っていくことができませんが、いらしていただいたお客様に喜んでいただこうと、私なりのおもてなしです。

ちびっ子たちや家族連れの皆様は大喜びです。
でも、誰も私が大井川鐵道の社長だとは気づきませんでしたけど。

実はこの衣装、ものすごく暑いのです。
発車の前20~30分ほどこの姿で皆さんの記念撮影に応じたりしていると汗だくになります。
でも、暑いなんて言えませんよ。
だって、横にいるSLの乗務員はもっと暑い、いや、熱いのですから。

彼らは私のこの姿を見て笑ってますけど、私は私なりに少しでも彼らの環境に近づけたらいいなとも思っています。

お盆のピークシーズンを迎えていますから、今日から3日間、私はこの姿でホームに立とうと思っています。
それがお金のない会社の社長のおもてなしサービスであります。