青森県の弘前地区を走る弘南鉄道の大鰐線が先日運行休止の発表をしました。
運行休止というのは事実上の廃止と言われていますが、その期日が2027年度末。つまり2028年3月末と発表しています。
この大鰐線の廃止のニュースは全国を駆け巡りました。
ちょうどJR久留里線の一部区間廃止の発表と同じ時でしたので、大きな話題となったのだと思いますが、私が不思議に思うのは廃止発表の時期を2028年3月としていることです。
ふつう、鉄道会社の廃止届け出は1年前。
バスなどの代替交通手段が確保できれば1年を切っての廃止も可能です。
廃止発表が11月末であれば来年の11月末には廃止できるのですが、弘南鉄道は2028年3月末としているのです。
ではどうして弘南鉄道は今から3年半も先の2028年3月末に廃止すると表明したのでしょうか。
皆さんわかりますか?
この時期を選んだのは来春高校に入る新入生が卒業する時期だからです。
中学3年生はもうすでに志望校をほぼ決めている時期です。
この時期に鉄道の廃止を表明すれば、例えば1年後に鉄道が廃止になると発表すれば、すでに進路を決めている学校を変更しなければなりません。
なぜならば高校3年間の途中で通学の足がなくなるのですから、そんな学校に通うことはあり得ませんよね。
つまり、中学3年生の皆様方に動揺が起きるのです。
この時期ですから、もうすでに沿線の学校に進路を決めている子供たちがたくさんいるはずです。
2028年3月廃止というのは、その子供たちが安心して学校へ通えるように、卒業まで待ってくれるということなのです。
鉄道会社というのは、実はそこまで地域のことを考えているのです。
本当なら、赤字を食い止めるためであれば、今すぐにでも廃止にしたいはずです。
だから来年の11月末の廃止でも良いわけです。
でも、きちんと地域のことを考えて、子供たちの将来のことを考えて、今、すでに進路を決めている子供たちが不安にならないように、来年入学する高校1年生が卒業する2028年3月に廃止しますと言っているのです。
これが地域輸送を担う鉄道会社の責任感です。
でも、不思議なことに、ネットニュースを含めて、こういうことに触れている報道はほとんどありません。
弘南鉄道はこんなに立派な志を持って地域輸送を担っている会社なのに、マスコミは報道しない。
ていうか、たぶん気が付いていない。
地域の自治体も、一株式会社が、赤字だからできるだけ早く運行をやめたいはずなのに、来春入学する高校生たちがきちんと学校に通えるように、3年間待ってくれるという、これだけ地域のことを思っている会社に対して、お金が無いことを理由に鉄道が存続できるだけの支援をしないと見限ったということなのです。
日本の田舎はどこだって苦しいんですよ。
全国的にどこもじり貧です。
でも、現行制度では支援できないと見限ることって、ありなのでしょうか。
これだけきちんと真面目に地域のことを考えている会社を支援できないような地域は、おそらく20年後、30年後には消えていく地域の仲間入りをするのでしょうね。
そして、そういうことを掘り下げるマスコミがいないんですから、私はちょっと悲しい気持ちで、なるほど、そういう地域なんですね。
と感じるのです。
弘南鉄道大鰐線廃線へ/27年度末で運行休止|青森ニュース|Web東奥
弘南鉄道が「廃止」ではなくて「休止」と発表している理由がわかりますか?
地域に向かって、「まだチャンスがありますよ。」と問いかけているのです。
本当なら、すっぱりと切り捨ててもいいと思いますよ。
でも、「廃止ではなくて休止ですよ。」と言っているということは、「まだチャンスがありますよ。」と地域に向かって言っていることですから、私は会社の持つ地域に対する愛情の表れだと思います。
こういう立派な経営理念を持つ会社の皆様方の爪の垢を煎じてもらって飲みたい気持ちです。
そして、そういう会社が生き延びていかれないような国は、やはり国力が衰えていく。つまり、国全体がじり貧なんだと感じざるを得ませんね。
日本から一歩外へ出てみるとわかるんですよ。
日本という国がじり貧であることを。
でも、国の価値というのはGDPとかGNPだけではなく、きちんとした志を持っているかどうかということではないでしょうか。
弘南鉄道には仲の良い友達がいます。
一生懸命頑張っていますから、この冬は久しぶりに会いに行こうかな。
そして爪の垢を煎じてもらって来ようと考えています。
▼一応、私は2011年にDVD化しておりますので、ご興味のある方はご乗車ください。(黒石線、大鰐線の稜線を収録しています。)
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これを撮ったのが今から13年前。
この13年間よく持ちこたえてくれたと思います。
そして、今から同じ時が流れて13年後は地域はどうなっているのでしょうか?
ジリ貧の日本がどこで挽回するか。
その時私はもう力尽きていると思いますが、ローカル鉄道の存続の道筋をつけることは、この国の将来を作ることになりますから、力尽きるまでお仕事させていただこうと思っています。
それがいつまでかはわかりませんが、とりあえず生涯現役を目指します。
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