全国いろいろなところに鉄道が走っています。
それぞれの土地にいろいろな特徴があって、名産品や特産品がある。
大井川鐵道の沿線にももちろんたくさんありますが、今日お話しする「特徴」というのはそういうものではなくて、鉄道としての特徴についてです。
それは何かというと、大井川本線も井川線も、機関車が引く列車が走っているということです。
JRがどんどん機関車をやめていく中で、大井川鐵道は機関車けん引の列車が走っています。
ここで基本に立ち返ってもう一度機関車けん引の列車の特徴を考えてみましょう。
まず、機関車の列車は動力が先頭、または後部にあります。
これに対して電車やディーゼルカーの列車は編成の中に数か所、あるいは全部に動力が付いています。
こういうことから機関車が引く列車を動力集中方式、電車やディーゼルカーの列車を動力分散方式と言います。
機関車が引く列車は動力集中方式ですから、欠点として加速減速が遅い。先頭の機関車が引っ張って、後ろの客車はただ引かれていくだけですから機関車に列車全体の負荷がかかります。
これに対して動力分散方式は編成中の至る所に動力がありますから、当然と言えば当然ですが加速減速が速い。
つまり、駅間距離が短く、列車本数が多くて高密度輸送が求められる都市部などでは動力分散方式が威力を発揮します。
では、機関車はダメなのかというと、実はそうでもなくて、機関車1両あれば旅客列車も貨物列車も引くことができますから、閑散線区のようなところではとても重宝するのです。
だから国鉄時代は地方路線へ行くと機関車が引く列車が旅客も貨物も走ってました。
ところが国鉄が民営化されて旅客鉄道と貨物鉄道が分かれて運転するようになりましたから、貨物鉄道は今でも機関車けん引ですけど、旅客鉄道は機関車は要らなくなって、みんな動力分散方式にしてしまいました。
えちごトキめき鉄道では、ひすいラインに直流区間と交流区間の2方式の電化方式があります。
地方へ行くと交流区間が多くなるのは、実は発電所から送られてくる電気というのは交流ですから、そのまま使える交流電化の方が電気を交流から直流に変換してから架線に流さなければならない直流電化に比べて建設コストが安いのです。
ところが、当時の電車は直流モーターで走っていましたから、交流電化をすると架線から取り入れた交流電気を電車の中で直流に変換してからモーターに流さなければなりません。
これに対して直流区間の電車は架線から取り入れた電気をそのままモーターに伝えられます。
ということは、交流区間を走る電車は直流電車に比べて余分な装置が取り付けられている関係上、車両価格が高いのです。
つまり、どういうことかというと、交流電化は安く直流電化は高い。これに対して交流電車は高く、直流電車は安いということです。
ということは、都会に比べて列車本数が少ない田舎の線路は車両数が少なくて済みますから建設費が安い交流電化がふさわしく、列車本数が多い都市部では車両をたくさん用意しなければなりませんから、多少建設費が多くかかったとしても直流電化の方が良いということになります。
だから、大都市近郊は直流電化で、田舎へ行くと交流電化というのがある意味定番なのです。
で、交流区間には動力車をたくさん揃えることはコスト的に無理でしたから機関車1台あれば旅客も貨物も引くことができるという、機関車けん引の列車が多かったのです。
と、ここまではよろしいでしょうか。
さて、旅客と貨物が分離されると交流区間でもどんどん電車列車が増えてきました。
JRになって利益が出るようになってきましたので、多少コストをかけてでも新型車両を導入してサービスアップに努めなければなりません。
これが世の中の流れですね。
で、JRのうちはよかったのですけど、これが並行在来線になってくると果たして良いのか悪いのか。
なぜなら価格が高い車両を配備して維持していかなければならないからです。
えちごトキめき鉄道の場合は初代社長の嶋津さんという方がたいへんお知恵のある方でしたので、交直両用というどちらでも走ることができる電車は高いことから、開業の時から全線電化にもかかわらずディーゼルカーを走らせてきましたが、電車が走っているところは高価な電車を揃えなければなりませんから、経営的になかなか大変なのです。
まして、交流電車の払い下げなどめったにありませんからね。
私が455・413に目を付けたのは安く手に入って、すぐに使えて、使い方によっては集客のツールになると考えたからなのです。
さて、話を大井川鐵道に戻しますね。
大井川鐵道は機関車を使う会社です。
ということはどういうことかというと、機関車があれば需要に応じて後ろに連結する客車を調節すれば需要の変化に対応できるということです。
観光列車ですからラッシュのようなギューギュー詰めというわけにはいきませんね。
皆さん座って旅ができることが前提です。
ということは、車両数で調節するしかありません。
でも、電車のように各車両に動力やあるいは運転装置が付いている車両は大変高価です。
そういう車両をたくさん準備しておいて、高需要期に対応するとすればたくさんのお金が必要です。
でも、客車であれば動力も運転席もありませんから導入費用も維持管理費も電車やディーゼルカーに比べると格段に安いのです。
だから、閑散期に車庫に停めておいても痛くもかゆくもないし、高需要期には連結する車両数を増やしてたくさんのお客様を運ぶことができる。
これが機関車列車を運転する大井川鐵道の特徴であり、経営的な優位性なのです。
私の友人の松田淳浩さんが撮影した先週末の井川線の列車です。
井川線は今紅葉のシーズンですからふだんは4~5両の編成を長くして8両で運転しています。
大井川本線もSLやELを使っていますから、2両だったり5両だったり、季節に応じて編成両数を変えて需要に合わせています。
閑散期には車庫で待機させていたとしても、客車であれば整備費用などの維持費も安いですから、そういうことが可能なのです。
これが機関車が引く列車を走らせている大井川鐵道の経営上の強みであり、他の鉄道会社ではなかなか真似ができないところなのです。
考えてみれば、嵯峨野観光鉄道や黒部峡谷鉄道など需要の変化が激しい観光列車の鉄道は機関車けん引なんですよね。
その方がお客様が多い時期にしっかり稼ぐことができて、お客様が少ない時期には車庫で休ませていたとしても、設備投資的には大したことありませんからね。
電車やディーゼルカーの鉄道ではこれができないのです。
大井川鐵道としては、安い客車をもっともっと増やさないといけませんね。
皆様どうぞご期待ください。
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