ふぞろいの美学

日本人は均一に揃っているものがお好きのようですね。
野菜とか、果物とかも、形や大きさが沿っていないと出荷できないらしい。
その理由はパックや段ボール箱に入らないからだとか。
教育も、公立学校ではまん中より少し上に照準を合わせて、同じような人間を作ろうとするようです。
その理由は国や会社にとって扱いやすい人間にするためでしょうか。

私の場合は、天邪鬼なところがありますので、どうも形や大きさが揃っていたり、均一だったり、標準化されているのが好きではない。
てんでんばらばらで、適当なのが好きなのですが、それはたぶん子供の頃に見た鉄道の影響があるのではないかと思います。

子供の頃、山手線は１０１系の黄色い電車でした。
徐々に緑色の１０３系に置き換わるころで、ホームで待っていると黄色が来たり、緑が来たり。
日暮里で常磐線に乗り換えると茶色が来たり、青が来たり。
秋葉原で総武線に乗り換えると、茶色が来たり、黄色が来たり。

ブルジョアが乗る特急列車とかは編成が揃っていましたが、置き換えの時期もあったんでしょうけど、庶民の電車はなんだか適当でした。

その１０３系ですが、転属車が入ると京浜東北線の先頭が緑色だったり黄色だったり。
当時はすでに線区別色分けが徹底していましたから、京浜東北線の線路に緑や黄色の電車が来ると誰も京浜東北線とは思いませんから、誤乗防止用にヘッドマークがついていたり、ドア上に「京浜東北線」と書かれたステッカーが貼ってあったりしました。

昨日も書きましたが、列車のドアが開けっぱなしで走っていた時代ですから、乗客もそのぐらいのことは屁とも思わなかったんでしょう。
今なら大クレームものかもしれませんが。

写真は１９７０年代後半に撮影した大糸線。
キハ５５＋キハ５１＋キハユニ２５でしょうか。
急行用のキハ５５に車幅が狭く車高が低い１０系気動車のキハ５１、そして郵便と荷物と人間を運べる合造車のキハ２５。
用途も車幅も車高も色合いもバラバラの編成です。
房総もそうでしたが、子供の頃にこういうのを見てしまうと魅力に取りつかれるわけで、色も形式も形も揃った編成には興味を示さなくなるのです。

だから、ブルートレインや特急列車よりも機関車が引っ張る夜行急行列車が大好きで、普通車、グリーン車、A寝台、B寝台、食堂車、そして荷物車、郵便車と色も形も大きさも違う車両がごちゃ混ぜになって編成を組んで走る姿に私の感性が「美しい」と定義付けしたのです。

こちらは青梅線のクハ５５。
小学生の時に撮ったものですけど、なぜシャッターを押したかと言うと、当時の青梅線は７３系ばかりで、２０ｍ４扉車が当たり前だったんですが、たまたまやって来たこの電車は先頭がクハ５５。つまり３扉車。
４扉車と３扉車が混成で編成を組んでいたのです。
まぁ、小学校６年生としては後ろの車両との違いまで表現することはできませんでしたけどね。

米子で何度か見かけた編成に、DD51がけん引する客車列車の後ろにキハが１～２両ぶら下がっているのがありました。
後藤工場へ検査のために入出庫するキハを普通列車の後ろに連結して運んでいたものでしたが、これもよだれが出るほど「美しい」編成でしたし、電車の編成では運転台同士が向かい合っているのではなく、運転台と中間車が連結されているのが当時はよくありまして、特に非貫通の１０３系とかでそういうのがあると、通り抜け禁止ですから、わざわざその連結面に乗ったりしたものです。

これは震災前の三陸鉄道島越駅で見たごちゃ混ぜ編成。
イベント用のレトロ車両が中間に入っていて、なかなか素敵でした。