最近思うこと

今日から5月

すでにゴールデンウィークも始まっていて、4年ぶりとなる制限のない行楽地はたくさんの人々でにぎわっているようです。

昨日の千葉県印西市の北総鉄道のイベントも、雨風が強い中、あんなにたくさんの皆様方にお越しいただいたことを見ると、やはり世の中は動き出していますから、こういう時にはきちんと取りに行かなければならないと思います。

ではその「取りに行く」というのは何を取りに行くのかというと、もちろん「売上」です。
会社ですから売り上げが一番大切で、売上があってはじめて会社が回ります。
まして赤字の会社ですから、少しでも赤字を減らす努力をしなければなりません。
営業部門がきちんと売り上げ計画を立てて、どうすれば売り上げが上がるかを常にPDCAサイクルで考えていかなければなりませんから、会社の稼ぎ頭である営業部の戦略というのはとても重要なことで、これができなければ会社は成り立ちません。

そういう話をすると、皆さんの多くは私のことを「金儲けの事しか考えていない。」と思われていることでしょう。
なぜならば前職時代からお金を稼ぐという使命を負わされていて、それに忠実に従って結果を出してきていますから、そう思われても当然と言えば当然ですね。

では、売り上げが本当に大事かというと、どうなのでしょうか?

「売上よりも利益率だよ。」

当然そう思われる方も多いと思いますが、皆さんはどう考えますか?

例えば雪月花。
利益率はとても低いんです。
でも、私はそれでよいと思っています。

なぜかわかりますか?

では逆にお聞きしますが、雪月花に利益率を求めたらどうでしょうか?
「うちの雪月花、とても儲かっているんですよ。」
と、私がニコニコして言ったら、皆さんどう思いますか?

利益率が高いということは、原価率が低いということになります。
つまり、お料理の原価が低いということですから、そういう列車に乗りたいと思われるでしょうか?

お料理の原価を低くするためには、素材の質も低くなります。
お料理屋さんへの発注費用が安いですから、協力してくれる事業者さんにもうまみがありません。
そういう列車だとしたら、当然ですが、シャビ―なサービスになりますよね。

もし、高いお金を払って粗末な料理しか出なければ、そういう観光列車には「次は無いな」と思われるでしょう。
そして何よりも、わざわざ新潟県まで来て低品質のサービスでしたら、「新潟県って、大したことないね。つまらないね。」となりますから、地域にとってもマイナスのイメージです。

私が言うのも何ですが、雪月花はクルーのおもてなしも素晴らしく、お料理も新潟を代表するクオリティーですから、何度もリピーターになっていただける方々がたくさんいらっしゃいます。

そうなってくると経営者の中には欲を出して、ちょっとぐらい品質を落としても大丈夫だろうと考える人も出てきます。
飲食業だけじゃないですけど、人気が出たりすると商品の品質が落ちるのってよくあるでしょう。

いろいろ理由はあるとは思いますよ。
例えば人気が出たから業務拡大する。
そのためには借金をして設備投資をする。
だから、返済が生じるので原価率を下げる必要が出て来る。

そうやって、せっかくうまく行きかけている商品や会社をダメにしてしまう経営者もいますね。

でも、私は、去年雪月花をリニューアルするときに、地域の看板を背負っているのだから安売りはしないというポリシーで、思いきって大幅値上げをして、その分思い切ってお料理の質を上げたんです。
つまり原価率を高くした。

久しぶりに雪月花にご乗車されたお客様が皆さん「かなりブラッシュアップされましたね。」と言われます。

だから、もちろん赤字ではありませんが、「雪月花はあまり儲からないんですよ」と私は胸を張って言うのです。

そういう私を見て、「儲からない商品を売るなんて、お前は経営者として失格だ。」と言われる方がいらっしゃいましたら、「もう少し経営の勉強をした方が良いと思いますよ」と言うことにしています。

では、その雪月花より高額な、えちごトキめき鉄道の最高額商品である「クロザ」はどうでしょうか。

おひとり様27500円です。

実はこれ、儲かるんです。

何しろ最高額商品と言っても、お料理もお酒も出しませんし、アテンダントのきれいなお姉さんもいません。
立ち合いの職員一人を付けますが、添乗指導という業務を兼ねていますから基本的なコストは発生しません。
だから、ほぼ百パーセント、利益です。

「お前、そんな商品を27500円で売るなんてけしからん!」

そう言われる人は、やはりもう少し経営の勉強をした方が良いと私は思います。

なぜなら、商品価格というのはコストの積み重ねの上に利益を乗せて決定するものばかりとは限らないからです。
線路の石だって1個500円で売れるんですからね。

つまり、商品にはいろいろな特性があって、その特性に合わせた顧客が居るということです。

高田から直江津まで、タクシーだと3000円です。
バスだと最短距離のバスで390円。遠回りしていくバスだと560円。
トキ鉄は280円です。

でも、トキ鉄に乗るためには駅まで行かなければなりません。
駅まで行くなら家の近くにバス停があればバスに乗った方が、多少高くてもいいという人はいるでしょう。
でも、電車もバスも相手の時刻に合わせなければなりませんから、呼べば家の前まで来てくれるタクシーなら、まぁ、3000円でもいいかな、という人もいるでしょう。

これがそれぞれの商品特性に合わせた顧客ということになりますが、そういう商品は日常的に使用するものですね。
でも商品特性としては日常使用するものはできるだけ安く買いたいでしょうけど、趣味の品とか、耐久消費財のように何年かに一度しか買わないものであれば、お値段ではなくて自分の嗜好に合わせたものを買いますよね。

自動車であれば、雨風をしのげて目的地まで到着できれば軽自動車で十分だと思いますが、ベンツやBMWを買う人もいます。

つまり、価格に左右されない需要というのがあるわけで、雪月花もそうですが、クロザという商品は、お金ではなくて、自分としてめったにできない体験を買う商品ということになりますから、はっきり言って5万円だって10万円だっていいんですよ。

では、なぜ私がそういう商品を作り出して売っているかというと、お客様に喜んでいただきたいからなんです。

商売というのはお客様に喜んでいただくこと。
これが大事なんです。

儲かれば何でもいいという話ではなく、儲からなければやらなくてもよいというものでもありません。

その商品が売れるということで、売った会社はもちろん喜びますが、買ったお客様も喜んでいただける。そうすることで、その商品を作るのに協力していただいた地域の事業者さんも喜んでいただけるし、その商品を購入した方がトキめき鉄道沿線にいい思い出を持っていただければ地域全体にプラスになる。

売り手よし、買い手よし、世間よし

これがいわゆる「三方良し」ということなんです。

商売を知らない人たちは、例えば大学の経済学の先生などはよく「Win Winの関係」などと言われますが、あれはアメリカ型経済の話で、売り手と買い手の話だけですから、つまり「儲かれば何でもよい」ということなんです。
そして、アメリカ型経済では、人を押しのけて莫大な利益を出した経営者は、皆さんその反省の意味も込めてチャリティーなどへ多額の寄付をしたり、慈善事業をやったりする。
これは宗教感の違いからくるものですが、私は日本型経営ではやはり「三方良し」という方がしっくりくる。
ましてやインフラとしての交通事業ですからね。

つまり経営理念の話です。
会社というのは儲かることだけをやっていればよいというものではありませんし、儲からなければやらなくてよいというものでもありません。
きちんとした経営理念があるかどうかが問われると私は思います。

ゴールデンウィークが始まって、お客様にたくさんいらしていただく時に、ともすれば利益優先になりがちですが、「どうしたらお客様に喜んでいただけるか。」ということを忘れてはいけないなと、最近よく考えるのであります。

さて、ここから先のお話しはオンラインサロンの方でしましょうかね。
ただで聞かせる内容でもありませんから。(爆)

https://lounge.dmm.com/detail/3777/