鉄道で働くということ

昔から「職業には貴賎はない」と言われています。

でも、私は鉄道で働くことは実に貴(とうと)いことだと思っています。
鉄道は365日休みなしで動いています。
トキめき鉄道などは深夜時間帯でも長距離の貨物列車が走っていますから、毎日たくさんの職員が夜間勤務で当直しています。

それでたっぷりと給料が払われているならいいのですが、社長としてどうにもならないジレンマではありますが、世間並みの賃金しか払うことができません。

でも、皆さん、一生懸命頑張ってくれていて、安全輸送を支えるのはもちろんですが、ニコニコとお客様に接してくれていて、旅の思い出作りのお手伝いをしてくれていますし、子供たちの夢を実現する原動力にもなってくれています。

高い給料を望むなら都会の会社の方がいいし、夜間労働をするなら三交替で働く工場勤務の方がずっと給料が良いはずです。

でも、きっとそうじゃないんですよね。

人並の賃金で、人並み以上の仕事をする。
それも、日夜働く。
ご利用いただくお客様のために、輸送を支える。
そういう姿勢で勤務しているのですから、私は鉄道で働くということが、実に貴(とうと)いことだと思っています。

その中でも特に頑張っているのが線路の維持管理に携わるいわゆる保線の仕事。
トキ鉄では設備部と呼んでいますが、線路だけじゃなくて、トンネルは土木だし、変電所から架線への電気を管理するのは電力、信号通信もあって、それぞれが皆専門知識を必要とする資格仕事です。

鉄道業というと運転士さんや車掌さん、駅員さんの姿が思い浮かぶと思いますが、設備部の人たちや、車両管理の人たちは基本的にはお客様の前には顔を出しませんから皆様方がご存じないだけで、24時間365日働いていることには変わりはありません。

まぁ、彼らがお客様の前に出てくるときは、大雪が降ったり、事故が発生したりするときですから、出ないに越したことはないのですが、皆様方が知らないところで、夜間も含めて働いてくれているのです。
つまり、輸送を陰で支える裏方さんたちなんです。
運転士さんのように子供たちのあこがれの対象にはなりにくいかもしれませんが、鉄道会社にはなくてはならない職業なのです。

さて、このところ上越もめっきり冷え込んで来まして、明日の朝はもしかしたら標高の高い山の上の方は初冠雪が見られるかもしれないなどとニュースで言ってますが、そうなってくるといよいよ冬支度をしなければなりません。

町中では道路にちょろちょろと水を撒いて雪を解かす消雪装置の点検が始まりましたが、トキ鉄でも除雪機械の点検やポイントの融雪装置の点検などが始まっています。

地元の上越妙高タウン情報というネットニュースにもこんな記事が掲載されていましたのでご一読ください。

降雪シーズンを前に除雪車講習会 (上越妙高タウン情報10月16日)

トキめき鉄道では、お客様を乗せて走る列車ではありませんが、このような除雪機など線路の維持管理をする機械扱いの車両は、設備部の皆さんが乗務して運転操作を行っています。先週はその訓練が行われたというニュースです。


妙高高原駅の屋根の雪下ろし作業です。

屋根の上に2mも積もっているのがおわかりいただけると思います。
屋根の上に乗って雪を降ろしているのは契約でお願いしている地元の建設会社の皆様ですが、そうやって線路に落とした雪を除雪車を運転して飛ばしていくのがトキ鉄の職員の仕事です。

そのためには、下ろした雪を捨てる融雪口も確保しておかなければなりません。


こちらが夏の妙高高原駅。
同じ場所でもこんなに違うんですよ。


この角度から見るとわかりやすいと思いますが、線路と線路の間に融雪用の水路があるんですが、大雪が降って埋もれてしまうと排雪できなくなります。

担当職員は夏の間の景色を覚えておいて、ここの雪をどかせば除雪ができるといった知識を身につけているんです。

鉄道会社といっても実に地道な仕事なんですが、人の目につかないところで黙々と作業をこなしているのですから貴いと、私は声を大にして言いたいのです。

もっとも、世の中にはいろいろな人がいますから、誰もが接客できるわけでもありませんし、運転適性がある人もいればない人もいるわけで、そう考えると、いちいちお客様からクレームされることもなく、人から見られることもなく、日夜黙々と仕事をこなしていくことに向いている人もいるわけで、そういう人たちにとっては、意外と良い仕事だったりするかもしれません。

地元の人たちは私の顔を見るたびに「今年も降るぞ。」と言います。
東京出身で温暖な房総から来た軟弱者の私をからかっているのかもしれませんが、降るか降らないかわからないのであれば、降った時のためにきちんと準備をしておく。

そういう仕事がすでに始まっているのであります。

今年は降るぞ~~

たぶんね。
そして意外と早いかもしれませんが、その時はまたお知らせいたします。

皆さん、鉄道で働きませんか?

「職業に貴賎はない。」

これは間違いないことですが、こうして頑張っているスタッフを私は誇りに思っています。