本日の北海道新聞

ネットに出ていた本日の北海道新聞。
私のインタビュー記事です。
(もう少しまともな写真を使ってよ。)

山線と呼ばれる小樽から長万部までの区間を含む函館―小樽間の函館本線が、2030年の北海道新幹線の札幌延伸開業で北海道と地元の市町村が運営する第3セクター鉄道になる予定ですが、そのことについて、先日北海道新聞社からZOOMでインタビューを受けた記事です。

拡大すればお読みいただけると思いますが、紙面が限られているために詳しいことまで述べられておりませんので、いくつか補足解説させていただきます。

いすみ鉄道とトキめき鉄道の違いについてですが、同じ第3セクター鉄道ですが会社の成り立ちが違います。
いすみ鉄道の場合は国鉄からJRになるときに、「赤字だから引き継げないよ。」と言われた路線を地元が引き継いだ鉄道です。
国鉄の末期には赤字ローカル線をどんどん廃止対象路線としてノミネートしていきました。
日本全国で約80の路線が廃止対象路線としてバス転換をするように言われました。

そういう路線を特定地方交通線と言いましたが、国鉄(つまり国)から廃止にしなさいと言われた鉄道を「自分たちでやるんだ!」と言って引き継いだのがいすみ鉄道のような昭和の第3セクターなのです。
だから、なんとしてでも鉄道を残すんだという頑張りと踏ん張りがある地域なんですね。そして、自分たちで費用も含めて維持管理してきた。

これに対して並行在来線というのは、「新幹線が開通すれば大きな利益が地域にもたらせるのだから、それまでの在来線は県や沿線市町が引き受けましょう。」という国と地元とのお約束で誕生した第3セクターです。

通常ならば新幹線の延伸開業は県庁所在地を通ります。
県庁所在地を通るということは、自分たちの県に新幹線を誘致するという「悲願」が達成されるわけですから県を上げて歓迎します。
北陸新幹線の場合も、長野県も富山県も石川県も、そして次に延伸する福井県も県庁所在地を通ります。
でも、新潟県だけは県庁所在地を通りません。
ありがたいことに新潟県には40年も前に新幹線が来ているのですから、新潟にとっては新幹線があるのはある意味で当たり前。北陸新幹線は県庁所在地から遠く離れた県の外れの地域をチョコッとかすめるだけなんです。
そんな新幹線なのに、なぜ県や沿線市町が信越本線や北陸本線を引き受けなければならないのか? おかしいだろう?
これが当時の県知事の考え方でした。
つまり、並行在来線というのは新潟県と沿線市にとっては押し付けられた鉄道のようなもので、これがいすみ鉄道のような特定地方交通線を引き継いだ第3セクターとの大きな違いです。

でも、国とのお約束で新幹線を通したのですから、その国とのお約束で、並行在来線は最低でも30年間は県と沿線自治体が責任を持ってやらなければならないのです。
なぜなら、新幹線というのは目に見えない大きな利益を地元にもたらしているからで、もし、トキ鉄の沿線市が並行在来線をやりたくないということになれば、北陸新幹線から上越妙高と糸魚川という2つの駅が廃止になるのです。

そういうことを開業前に地元は基本的な議論をしていませんので、根本に戻ってきちんと議論をして並行在来線を最低でも30年間維持管理していく仕組みを作りましょうというのが私の使命だと考えているのです。

また、並行在来線というのはかつての○○本線ですから、とても大きな設備を持っています。
トキ鉄で言えば旧北陸本線区間のひすいラインは人口が過疎で、地形が険しい地域を長大トンネルでぶち抜いた複線電化区間で、糸魚川を境に交流電化と直流電化が分かれます。
ということは旅客輸送としては電気を使わないディーゼルカーですから、過剰設備なんです。

では、なぜ過剰設備かというと、昭和40年代に国の輸送力増強政策で物流の大動脈として整備されたからです。

昭和40年代に国の政策で物流の大動脈として整備された複線電化区間ですからそれから50年が経過して全体的に設備更新の時期に来ています。
50年前に整備して、45年間国鉄とJRが使ってきて、5~6年前にトキ鉄が引き継いだ路線ですが、その更新工事をトキ鉄がやるんですか? おかしいんじゃないでしょうか? やはり、国がきちんとやるべきではないでしょうか? なぜなら、今でもこの国の物流の大動脈として機能しているのですから。

これが私が1月の大雪の時にお見舞いにいらしていただいた時に赤羽大臣に申し上げたことです。

JR北海道は今、できるだけ多くの路線を廃止することが自分たちの経営を楽にすることだと信じているようです。
つまり、これは店仕舞いの発想です。

そういう御仕舞いの発想の会社が沿線の自治体に対して「鉄道を残してほしいなら、線路の維持管理の費用は地元で出していただけませんでしょうか?」という問いかけをしている。
出してくれるわけないですよね。
それをわかったうえでそういう問いかけをして、「いやぁ、無理ですね。」と地元の自治体が言ったら、「では、仕方ありませんね、廃止です。」という「合意」で廃止に導こうとしています。
これは一種の詭弁だと私は考えていますが、百歩譲って日高線や留萌線ならそれも仕方ないかもしれませんが、函館本線は違うでしょう。
なぜなら函館本線は国の大動脈としての機能があるのですから。
ふだん大動脈になっている室蘭本線沿線には有珠山のような世界的にも珍しいほどの活火山がある。
何が珍しいかというと江戸時代から数十年ごとに大噴火を繰り返している。
こんな火山は世界的に見て珍しい。
2000年の大噴火は記憶に新しいところですが、その前は1977年で、その前は1945年。
その度に室蘭本線が通れなくなって、2000年の時にも函館本線の倶知安回りがバイパスルートとして有効活用されたのです。

そういう国家の危機管理に当たるような路線を、店仕舞い志向のJR北海道と、できるだけお金を払いたくない沿線自治体の市長さんや町長さんたちに存廃の判断をゆだねて言い訳がありませんよね。

というのが私がZOOMのインタビューでお話したことです。

北海道新幹線の札幌延伸開業は2030年。今から9年後ですね。
でも、基本的な問題として、その2030年の段階でJR北海道という会社が存在しているかどうかもわからないのですから、そういう会社に新幹線開業後の並行在来線をどうするかという議論に入っていただく必要はないのではないでしょうか?
並行在来線の問題は、利益が上がる小樽-札幌間も含めて、どういう仕組みを作るかということは、北海道庁と国がイニシアチブをとって行うべきではないでしょうか。

そう申し上げたことはさすがに道新さんは書かなかった。
と付け加えておきます。