雷銀座の空の上

全国あちらこちらで大雨が降っているようですが、関東地方でも今日も雷がありました。

 

北関東の栃木県宇都宮市から茨城県の下館市付近は昔から雷銀座と呼ばれていて、この季節は毎日のように雷が発生していますが、最近は温暖化の影響でしょうか。局地的な水害をもたらすほどの大雨が短い時間で降るようになって来て、気候が変わったことを実感させられます。

 

積乱雲は航空関係者ではCb(シービー)と呼ばれていて、発達すると頂点は地上から高度10㎞以上に達しますから、当然飛行機にも影響を与えます。というのも積乱雲の内部や下部は上昇気流と下降気流が入り乱れていて、氷の粒で覆われていますから、これが「突風が吹いた」とか「ヒョウが降った」などとニュースで伝えられているものなのですが、まともな神経のパイロットなら、そんな積乱雲に突っ込もうなんて誰も考えません。「Cbを見たら逃げろ。」というのが常識になっているんですね。

 

自宅に帰ってくるときに、車の窓から飛行機がいつもと違うコースを飛行していて、北の空に大きな積乱雲が発生していて、その中がピカピカ光っていましたので、帰ってから早速パソコンを開いて「フライトレーダー」で確認してみました。

 

羽田から札幌へ行くコースですが、本日のJAL505便の航跡です。

この便は朝8:30に羽田を出る便で、離陸後北へ向かって宇都宮の上空を飛行しているのがわかります。

朝の時間は積乱雲はありませんから、通常このコースを飛んでいきます。

 

こちらは16:30発の523便。

宇都宮上空で積乱雲が発生したため西へ避けて日光の上空を飛行しています。

 

その1時間後、17:30に出発する525便は、おそらく積乱雲が大きくなって避けることができなくなったのでしょう。

羽田を離陸後、茨城県の水戸上空から海岸線を北上しています。

 

さらにその1時間後。18:30発の527便です。
積乱雲が埼玉県から千葉県北部、茨城県へ南下してきたため羽田空港を離陸後、すぐに左旋回をして群馬県の高崎方面へ向かって、日光市のさらに西を通って北上しています。

 

その1時間後、19:30発の529便の航跡は、先ほどまでとは打って変わって通常のコースに戻ってきています。

日中に発達した積乱雲は日没を迎えると急速に衰退する傾向がありますから、大きく迂回する必要もなくなってきたということですね。

 

羽田を離陸して札幌へ向かうという同じ区間の飛行機ですが、気象状態によって、これだけ大きくコースが変わるんですね。

 

着陸便も面白いですよ。

 

こちらは札幌発羽田行、今日の502便の航跡です。

羽田空港に10:35に到着する飛行機ですから、積乱雲の影響を受けず、通常のコースで下りてきています。

 

こちらは19:35到着予定の522便の航跡です。

茨城県南部から千葉県北部に積乱雲が広がっていたために。水戸の上空から太平洋に出て銚子上空を大きく迂回していすみ市あたりから羽田空港に着陸しているのがわかります。

この迂回のため、この便は約20分到着が遅れています。

 

このように飛行機というのは途中で悪天候があっても大きく迂回して目的地へ向かうことを常としていますから、鉄道とは大きく異なる飛行機の利点なんですね。

航空関係者の皆様方は、刻一刻と変わる気象状態を見ながら、その時できる可能な限りの対応を取っている。これが飛行機屋さんの仕事の仕方なんですね。だから、どんな事態になっても「想定外」などという言葉は、飛行機屋さんは使わないのです。

 

私はなんだかんだで10年も前に飛行機の世界を離れていますから、もやはすっかり単なるお客さんなのですが、最近ではパソコンでこんな画面も見られるようになりましたから、今日みたいな悪天候のときは、どうしても気になるのであります。

 

それにしても本日の522便。低空で飛んできて、ピカピカ稲光がしている積乱雲を大きく避けながら、これだけ迂回して大回りしてくれるとしたら、単なるお客さんとしては実にわくわくしますね。

もっとも、それは私のようにわかっているお客さんの話で、飛行機をよく知らない人や、できるだけ乗りたくないと思っている人から見たら、縁起でもないというお話になると思います。

つまり、同じ状況に置かれても、楽しめる人もいれば楽しめない人もいるという、そういうことも世の中の節理の一つなのだということになると思います。

 

私はなんでも楽しんじゃいますけどね。

 

航空関係者の皆様、本日はお疲れ様でございました。

 

 

平成最後の8月は、こうして過ぎていきました。