JR北海道の不思議 3

昨日、札幌で北海道観光列車事業推進検討会議が開催され、私は委員として参加してきました。

 

 

 

この会議は2年ほど前から継続している「今のJR北海道でどうやったら観光列車を走らせることができるか」という検討会議で、北海道庁の交通政策局が事務局になり、北海道大学の吉見教授が座長となるオフィシャルなもの。JR北海道の経営が怪しくなり、なかなか観光用の列車を走らせることが難しくなってきましたが、外国人が北海道に250万人以上もやってきているという現状を踏まえ、どうしたらJR北海道に無理を強いることなく観光列車を走らせることができるだろうかという趣旨で、今年は3年目に入る継続的な会議です。

 

1年目は「どうやったら観光列車が走れるか。」ということを検討し、2年目である昨年は「実際に貸切列車として観光列車を走らせる。」ことをテーマとして、釧網本線や宗谷本線でモニターツアーを実施しました。そして、3年目の今年は「インバウンド対応として、東南アジア方面からのお客様を対象としたモニターツアーをやっていく。」という方向性で具体的な商品造成をやっていきましょうということがテーマになっています。

 

初年度、この会議をスタートした時には、「観光列車を北海道で走らせることの可否」を含めて、基本的なところからのスタートでしたが、この2年ほどで時代は大きく変わり、「観光列車を北海道で走らせなければならない」という前提での会議になって来ていて、なぜならば、昨年度250万人超えの外国人観光客が北海道を訪れていますが、国の方針として、数年後には500万人の外国人に北海道に来てもらおうということが決まっていまして、その一環として道内7つの空港を民営化して外国からの直行便を含めて、もっともっと積極的になりましょうなどという話をしているわけですから、そうやって帯広、釧路、女満別といった道内地方空港に今後どんどんやってくる外国人観光客の道内輸送には、鉄道というインフラは利用しないわけにはいかないわけで、だから、観光列車は必要だというのが、国と道と民間の共通の認識なのであります。

 

この会議はどういう方々で構成されているかというと、

 

座長:北海道大学 吉見教授

委員:北海道観光振興機構の部長

委員:日本ホテル協会北海道支部長

委員:フォトライター(矢野直美さん)

委員:総合広告業、観光ソリューション事業者

委員:私

 

オブザーバー

北海道市長会

北海道町村会

国交省北海道運輸局 鉄道計画課長

国交省北海道運輸局 観光地域振興課長

北海道 経済部観光局

 

事務局

北海道 総合政策部交通政策局

日本旅行

道銀地域総合研究所

 

とこのような構成になっております。

 

ところで皆様、このメンバーを見て何かおかしいとお気づきになられませんでしょうか。

 

そう、こういう会議を3年もやって来ているというのに、当事者であるJR北海道がメンバーに入っていないのです。

 

これは実に不思議なことだと思います。

 

まず、自分の会社が経営的ににっちもさっちもいかなくなって、現状の維持すら難しい状況にありますから、とてもじゃないけど観光列車どころではない。こういう状況であることは国民の誰もが知っていることです。でも、北海道という地域性を考えた場合、観光は今の時代は主要産業になるべきものでありますから、JR北海道としてはしっかり観光輸送もやっていかなければならない。まして国がその方針として外国人観光客を今後倍増させていきたいと言っているわけですから、観光列車事業というのは経営立て直しの過程で、将来の主たる事業にしなければならないような大きな柱のはずです。

でも、JR北海道の現状を考えると、目の前の輸送をこなすだけで精いっぱいなので、「では、私たちがサポートしましょう。」というお話なのです。

 

にもかかわらず、本当の意味で当事者であるはずのJR北海道から誰も出てきていない。

何も社長に出てこいと言っているわけではなくて、意思決定と判断ができる課長級の人が1人でも良いので委員に入って会議に出てくるべきなのではないでしょうか。

これが私の率直な感想です。

 

初年度ならわかりますよ。

でも、2年目には実際に観光列車を運転したモニターツアーを実施し、きちんとした分析を行って報告書が作られ、それをもとに3年目はインバウンド向けのモニターツアーをやりましょうという時期に来ている、その会議に、本来当事者であるべきJR北海道が委員はともかく、オブザーバーとしても参加していないのですから、「なんだろねえ」なのであって、私は不思議でなりません。

 

まるで、余計なことはやらないでほしい。自分たちのテリトリーに入ってくるな、と言っているような印象を受けますね。

 

 

 

 

ローカル線でもよく見られるのですが、地元の人たちが応援団を作って一生懸命その路線を支援しようとしている。でも当事者である鉄道会社はそういう沿線の活動がどうも煙たいようで、積極的にかかわろうとしないところが多く、「余計なことはしないでくれ。」と言わんばかりのところもたくさんあります。

いやいや、余計なことではなくて、「あなたたちができない部分をこちらでやりますよ。」と言われていることに気づいていないんですね。なぜならば、もともと地域のインフラであって、それに公的なお金を投入して何とか維持存続している状態でありますから、「うちの会社」は従業員だけのものではなくて、地域住民やその列車をお目当てに来る観光客のものでもあるのです。

今回のJR北海道の無対応を見ていても、まったくローカル線と同じで、「自分たちがやっていることに口を挟まないでほしい。」と言っているような、そういう唯我独尊感を感じるのは私だけではないでしょう。

 

あなたたちに任せておいたら、国民の重要なインフラである鉄道がダメになってしまう。鉄道がダメになれば、地域輸送がダメになるし、大きな産業である観光産業もダメになってしまうから、そうなっては国益に反するわけで、だから何とかしましょうという会議なんですよ。

 

「国から言われちゃいましたから、今後は儲かることだけをやります。儲からないことは一切やりません。」

 

7月27日以降、組織内部がイジケてしまっているのか、どうもそんな印象を受けますね。

 

でも、儲かることをやっていくというのであれば、あなたたちが働いていてはダメなんですよ。

その部分を何とかしなければならないというのが結論なんです。

鉄道をダメにしてきた組織の、そのダメにしてきたメンバーがあなたたちなのですから。

 

観光列車検討会議というのは、そういう使命もあるわけで、だから国交省と北海道庁が出てきているのですけど、そういうことすらわからないのが私としては不思議なのであります。

 

えっ? ではなぜ私が出ているかって?

 

それはですねえ、まじめな会議には私のような、何を言い出すかわからないような阿呆が必要なのです。

世の中、そうやって前に進んでいくのですから。