釧網本線で観光列車を走らせる場合は、できるだけお客様を入れ替えて回転率を上げるべきだというお話をしました。
でも、それだけでは不十分で、観光列車そのものの回転率を上げなければならないと私は考えます。
釧網本線の話をすれば、当然、根室本線(釧路ー根室)の話もしなければなりませんが、根室本線も釧網本線に負けず劣らず観光的要素が強いところで、こちらはさらに日本の最東端の駅、東根室がありますから、鉄道ファンならずともぜひ行って見たいところということになります。
地元の人はなかなか理解できないかもしれませんが、われわれ内地の人間にとってみたら、最北端とか最東端とか、実にそれだけで旅行の目的地になるような、郷愁を誘うような言葉の響きがありまして、「北へ向かう」などというと、旅情を掻き立てられるのです。
そのことは、かつて走っていた「北斗星」の予約率にもよく表れていて、札幌へ向かう列車は満席でも、上野へ戻ってくる列車は空席があるということがよくありましたが、まさしくこれは、「北へ向かう」という旅情なのでありまして、北斗星は往路を楽しんで、帰りはサッと飛行機で帰ってくるというのがお客様の要望だったのでありますが、だとすれば、せっかく釧路まで行くのですから、観光のお客様としては、絶対に根室にも行って見たい、日本の一番東の駅にも降り立ってみたいという気持ちになりますから、そこに観光地としての需要があるのです。
また、根室本線の沿線は、厚岸湾や霧多布湿原など、鉄道の車窓からは味わえない素晴らしい景色もありますから、例えば釧路発着のツアーで、行きは鉄道、帰りはバス。そしてその反対コースと2つのコースを設定すれば、1往復の列車で2組のお客様にご乗車いただくことができますから、客回転が上がりますね。そして、同じ編成の車両を使って、土曜日は根室本線、日曜日は釧網本線というコースを組めば、釧路に滞在して両方の列車に乗りたいという需要にも答えることができると思います。
また、根室本線は釧網本線に比べると距離が短いですから、片道3時間程度の観光列車になると思います。とすれば、列車は夕方の4時頃には釧路に戻ってきますから、その車両を釧路ー白糠あたりを往復させて、夕日を見ながらおいしいシシャモなどの海産物に舌鼓を打つという「夕暮れのチョイ飲み列車」のようなものを走らせることも可能です。これが列車の回転を上げるということです。
1編成の観光列車が、土曜日に釧路→根室・根室→釧路と2組の客を乗せ、戻って来たらチョイ飲み列車で1組乗せて、翌日の日曜日は釧網本線で4組の客を乗せる。こうすれば土日で7回の客回転ができますね。そしてその度に食事や飲み物、お土産品なども売れるということになりますから、鉄道運賃収入だけじゃない部分も大きなものになります。
では、土日に根室、釧網で7回の客回転をした列車はどうするかというと、月曜日に釧路から札幌へ向かうクルーズトレインとして丸一日かけて移動します。当然、全区間乗せる商品だけではなくて、釧路ー帯広・帯広ー札幌でお客様を入れ替えて回転を上げることも必要でしょう。そして札幌で火曜日1日整備を行います。というのも、現在のJRの運行体制を考えると、例えば車両の点検やトイレの汚物処理など、各地域でできない可能性がありますから、週に一度ぐらいは札幌に一旦車両を戻す必要があるからで、その整備点検を火曜日に行って、水、木、金曜日は冬の期間であれば札幌ー小樽ーニセコ(ー長万部)のコースで1日1往復。夏であれば札幌から富良野を1日1往復して、土曜日は札幌から宗谷本線の稚内まで、1日コースの「さいはてクルーズ」。朝札幌を出て、夕方稚内に到着した列車は、夜行列車となって一晩かけて札幌へ戻り、翌日の日曜日に再度「さいはてクルーズ」で稚内へ向かい、月曜日の朝帰って来て、整備を受ける。こういうことを繰り返すことで、道東地区、道北地区、札幌地区の観光列車が1編成で出来上がるわけです。
箇条書きにするとこんな感じです。
土曜日 根室本線 釧路ー根室ー釧路 釧路ー白糠ー釧路
日曜日 釧網本線 釧路ー網走ー釧路
月曜日 クルーズトレイン 釧路ー札幌
火曜日 点検整備
水曜日 札幌ーニセコ(富良野)
木曜日 札幌ーニセコ(富良野)
金曜日 札幌ーニセコ(富良野)
土曜日 クルーズトレイン 札幌ー稚内ー札幌(帰路は夜行)
日曜日 クルーズトレイン 札幌ー稚内ー札幌(帰路は夜行)
月曜日 点検整備
火曜日 チャーター運転用予備日
水曜日 札幌ーニセコ(富良野)
木曜日 札幌ーニセコ(富良野)
金曜日 札幌ーニセコ(富良野) 札幌ー釧路(夜行)
という2週間1サイクルです。
根室本線、釧網本線、宗谷本線はそれぞれ1週おきの運転になりますが、当初は集客に苦しむことも考えられますから、まずは1編成の観光列車で、いかに回転を上げてたくさんのお客様を乗せることができるか、ということが勝負になるでしょう。
もちろん、世界中から注目を浴びている北海道で観光列車を走らせるのですから、いすみ鉄道のようなオンボロのディーゼルカーではお話になりませんね。まして気象条件の厳しい大自然の中を走る北海道の鉄道ですから、世界中のお客様をお迎えするという意味でも、きちんとした観光列車用の車両を作る必要が出てくるでしょう。
ただし、観光列車は高速運転する必要はありませんから、ディーゼルカーだとしても全部の車両にエンジンを搭載する必要はないでしょうし、最新鋭の技術が必要なこともないと考えられますから、比較的安価に製作することは可能でしょう。個室でバスタブを付けるなんてこともやる必要ありませんから、せいぜいグループ6人用のコンパートメントにカラオケを取り付けて、夜行列車になる時はB寝台になるとか、食堂車を連結してバーカウンターを設置するなどの工夫があれば十分だと思います。
それと外国人用として忘れてはならないのがお座敷車両。通路を挟んで畳が敷かれて、掘りごたつになっているような車両があれば、外国人に大人気になりますし、日本人でも高齢者にとっては喜ばれるでしょう。
コンパートメント+食堂車+グリーン畳+グリーン座席+普通座席車というような感じでしょうかね。
普通座席車を連結するのは、列車本数が少ない北海道では地元の人の利用に応える必要があるということと、時刻表に載るということ。時刻表に掲載されれば、いつ、どこで観光列車が走るか、誰にでもよくわかりますからね。
そして、その観光列車の車両の最大の条件は、「撮り鉄」の皆様方の注目を浴びる車両であること。わざわざ北海道まで出かけて行ってでも撮影したくなるような車両じゃなければ意味がありません。
その理由は、乗せて何ぼの鉄道ビジネスではありますが、実際に乗せることができるお客様には限りがありますが、撮り鉄の皆さんであればたくさん来ても困りません。困るどころか、そういう皆さんが地域のお金を落としてくれて、地域を宣伝してくれるのですから、そういう意味で観光列車を走らせる大きな価値があるのです。
どうですか?
夢が膨らみますね。
列車の回転を上げて、お客様の回転も上げて、一週間ごとに道東と道北で走って、平日は集客のしやすい札幌近郊で走り、道東、道北の行き帰りにはクルーズトレインや夜行列車にもなる。まして、車両は鉄道ファンの皆様方が、わざわざ北海道まで撮影に来たくなる車両であれば、たった1編成、せいぜい5両編成程度の列車を作るだけで、北海道全体の観光振興になる。
これが現時点で私が考える北海道の観光列車の在り方ということであります。
そして、問題としては、お金をどうするかということと、誰がやるのかということ。
まあ、お金は何とかなるとして、きちんとしたサービス、それも最高峰のサービスをいったい誰がやるのか。
ここなんですよね。
克服しなければならない問題は。
ああ、考えるとまた眠れなくなりそうなのであります。
以上は、ひとり言の戯けですから、皆さんあまり気にしないでくださいね。
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