なぜ雪が降ると電車が止まるのか。

東京に15センチか20センチの雪が降って交通機関がマヒをしました。

雪国の友人たちに言わせると、「弱いねえ。こっちならそのぐらいの雪にはびくともしないよ。」となりますが、ではなぜ東京は雪に弱くて、東京の電車は雪が降ると止まるのでしょうか。

その理由はたった1つです。

「準備ができていないから。」

つまり、雪に備える設備がないからです。

雪国であれば、雪が降っても大丈夫なようにいろいろな設備が整っていますが、では、どうして東京には設備が整っていないのかというと、その理由もたった1つ。

「めったに雪など降らないから」です。

 

この間同じような大雪が降ったのが4年前の2014年ですが、つまり、何年かに一度あるかないかのような雪に備えて、鉄道会社は十分な準備ができていないのであって、そういうところに設備投資をするということに対して消極的になっているからです。

 

2週間ほど前、新潟でも電車が止まって、たくさんのお客様が車両の中に缶詰になって一晩明かしたという話がニュースになっていました。

東京とは雪の降る量も雪質も違いますから、雪国の新潟で電車が止まるということは相当な雪だったと思いますが、でも、よく考えてみたら、同じ雪の中を新幹線は走っているんです。

では、どうして新幹線は走って、在来線は止まるのか。

その理由は、新幹線は雪に対して設備投資をして、雪が降っても大丈夫なようになっているからです。

 

では、この違いはどこから来ているのでしょうか?

 

それは、新幹線は特急料金など高い金額を払って、なおかつ遠くへ行くためのお客様ですから客単価が高くて儲かるからで、在来線は数百円のお客様がほとんどですから儲からない。だから、設備投資に差があるのです。

 

これは民間会社だからという理由で、堂々と経営トップが口外しているのを見ればよくわかります。

 

民間会社だから、儲からないところには投資をしない。儲かるところに投資をする。

そして、何年かに一度、あるかないかのような大雪に対して設備投資をすると過剰設備になるから、設備投資はしないということです。

 

では、設備投資をしなければどうなるっかというと、雪に弱い鉄道になりますから、当然いつも通りのオペレーションができなくなるという前提で物事を考えるようになる。だとすると、列車の本数を減らして間引き運転を行いますから、当然お客様が混乱する。

列車の本数が減れば、お客様がホームにたまりますから乗降に時間がかかるようになる。乗降に時間がかかれば列車が遅れる。列車が遅れればさらにホームにお客様が増える。そうなると駅の改札口を締切にしてホームにすらいかれない状態になる。でもって振替乗車が始まる。そうなると、いつも通りちゃんと電車を動かそうと努力している鉄道会社にお客様が流れて行って、まるでとばっちりを受けたかのように他の路線まで混乱が始まる。

こういうことが、今回の大雪で発生したんでしょう。

 

電車が雪で止まるというのは、都会の路線の場合はポイント凍結や信号機の故障、あるいは車両そのものが気象条件に対応していないなどですから、つまりは設備投資をすれば、ある程度の雪には対応できるわけで、今回ぐらいの「大雪」であれば何とかなったのです。だから、雪国の人たちは、「あの程度の雪で止まるなんて」と笑っているのです。

 

さて、新幹線は走るけど在来線は止まる。都会の電車は設備投資をしていない。なぜなら民間会社だから儲かるところにはお金をかけるけど、儲からないところにはお金をかけない。この論理って、なんだかおかしくありませんか?

 

だって、民間会社になる時に、儲からないところまできちんと営業することができるようにということで、新幹線の営業もやらせてもらっているし、駅構内の敷地も譲り受けて、そこでいろいろな関連ビジネスも展開することができているのですから。

そういう儲かるところをきちんと配分されて、だから儲からないところもきちんとやるのですよというのが、当初から決まっている国民とのお約束なのです。

民間会社になって30年が経過すると、そんなお約束は国民の側でも忘れている人が多いから、それをよいことに、あたかも儲かるところだけをやって、儲からないところはやらないということが正義のようになってきている昨今の風潮は、実におかしい。

なぜなら、儲からないところもきちんとやるのですよ、というお約束で、国民に天文学的な借金を棒引きにしてもらって、国民の財産である線路や車両などももらっているわけですから。

 

だから、ちゃんとやらなければいけないのです。

 

儲からないところに投資をすると株主に訴えられる可能性がある。

 

なんだかもっともらしいことを言っているようですが、そんなことは経営者の力量で何とでもなるのです。

 

「株主の皆様方は、公共交通機関に投資をしているということを忘れないでください。私たちは公的サービスを提供して国民全体に利益をもたらすことで、ひいては日本という国に貢献することを目的としています。株主の皆様方は、そこのところを十分にご理解の上、私どもに投資してください。」

 

そう言えばよいだけのことです。

そうすることで、地域も良くなって、トータルで考えたら黒字になるように、会社発足の時に、お約束されているのですからね。

 

「車内販売はありませんのでご了承ください。」

「遅れるかもしれませんのでご了承ください。」

お客様にばかり了承させて自己責任でご利用くださいと言っておきながら、お金集めのためには投資家に尻尾を振る。

そういうことは経営者としての理念がない証拠なのです。

 

トータルで考えて、黒字になるってことは、私鉄の名経営者たちは、皆さん常識として持ち合わせていることなのですから。

 

(つづく)

 

30年前の国民とのお約束。