道南いさりび鉄道の観光列車「ながまれ号」が鉄旅オブザイヤー2016でグランプリを受賞しました。
日本一です。
関係者の皆様、おめでとうございます。
北海道文化放送を伝えるYAHOOニュース
こちらはNHK北海道Webニュース
▲道南いさりび鉄道の「ながまれ号」
道南いさりび鉄道は、皆様ご存知の通り、昨年3月の北海道新幹線の開業で地元に移管された江差線を引き継いだ第3セクター鉄道で、今回の受賞は開業1年目の受賞ということでとても大きな意味があります。
というのも、開業1年目から観光列車を走らせるというのは、強い地元の意志を感じるからで、それだけ、地元の人たちが道南いさりび鉄道に対してマイレール意識が高いからだと思います。
▲道南いさりび鉄道の車内広告です。
地元の宣伝ですが、地域の顔を感じますよね。
▲こちらは木古内駅に貼られていたポスター。
沿線住民のメッセージです。
地域住民の顔が見えるローカル線です。
北海道新幹線ばかりではなく、この道南いさりび鉄道に対する意識の高さが感じられます。
そういう地域だからこそ、開業1年目から観光列車を走らせようとなるわけですが、その「ながまれ号」は決して豪華絢爛な車両ではなくて、JRから譲渡されたキハ40型を簡単に改造した車両ですから、外観ではなく、中身で勝負なんですね。
何しろ沿線の風景は津軽海峡に沿って走るこの景色ですから。
ここで、地元食材を使った地域の味を提供していただければ、お客様としては十分にご満足いただけるのではないでしょうか。
ただ、疑問に思われる方もいらっしゃるのではと思います。
なぜ、開業したばかりの第3セクター鉄道が、観光列車を企画して集客して運営できるのか、と。
そうなんです。
鉄道屋さんが一番苦手とするのが、商品企画、集客、運営。
鉄道屋さんは決められたことを、決められた通りに、きちんと仕事をすることは得意なんですが、自分で考えて、新しいことをやりなさいというと、全く手も足も出ない職員がほとんどなんです。
おそらく道南いさりび鉄道も営業担当の数名を除いて、現業部門の人たちは他の鉄道と同じだと思いますが、実は、この「ながまれ号」の企画や集客は、プロ中のプロである日本旅行の皆様が仕掛け人となっているのです。
▲開業当初の日本旅行の商品パンフレット。
旅行会社というのは、例えば旅館やホテルなどが企画した各種「商品」を代行販売するのが仕事と考えられていますが、この会社の違うところは、道南いさりび鉄道の「観光列車を走らせたい」という思いを、どうやったら具現化できるか。お客様にいらしていただくためにはどういう商品内容が必要か。それを実際に売るためにはどうするかということを鉄道会社と一緒になって白紙の状態から参加していることで、では、どうしたら旅行会社がそんなことができるのかといえば、実は、企画立案をしているのは、鉄道をこよなく愛する幹部の方々なんです。
裏方で全く名前は出ませんでしたが、昨日、大宮の鉄道博物館で行われた表彰式には、そういう裏方の方々の功績をたたえる部分も大きな意味があったのです。
鉄道は事業です。
たとえ、新幹線と引き換えというお約束で地元が引き受けざるを得なかった並行在来線であっても、きちんと集客をして運営していかなければなりません。そのためには、人口減少の沿線地域では、地域輸送にプラスして、観光鉄道化していろいろなことをやって行かなければなりませんから、そういう所で、観光のプロが参加するということは大切なことだと思います。
そして、そういうプロの人たちであれば、お客様がどういうものを望まれるかという所がわかりますから、地元感を取り入れて沿線の味を提供することでご満足頂くことができますし、自分たちのルートを使ってきちんと販売できますから、そういうスタイルも評価されたのではないかと思います。
とかく、地域というのは、「自分たちにはこれがある。」「ここの名物はこれだ。」といきなり地元感を出そうとしますが、問題なのは「はたしてそれが都会から来るお客様が求めているものなのか。」ということと、「では、どうやって告知して販売しますか。」という点に欠けているところがほとんどなんですが、この「ながまれ号」は鉄道を愛するプロの旅行マンに支えられて、開業わずか1年目で、日本一を受賞したのだと私は考えています。
これから求められるのは、こういう部分だと思います。
簡単に一言で表現するとすれば、「上中下分離」とでも言いましょうか。
線路の部分と列車が走る部分の経営を分けて考えるのが上下分離ですが、さらに、上部を列車の運行と企画営業に分けて上中下分離ということになりますが、どこも上下分離でうまく行かないのですから、そういうことも考えなければいけませんね。
もう一度、「関係者の皆様方、地域の皆様方、グランプリの受賞おめでとうございます。」
と申し上げたいと思います。
そいうことで、うちもそろそろ、ながまれ方式を取り入れましょうかね。
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