E電各線お乗換え

国鉄時代には首都圏では「電車区間」と「汽車区間」にわかれていて、駅へ行くと「電車きっぷ」「汽車きっぷ」などという表示が出ていて、それぞれの駅までの切符を手売りしていました。
電車区間とは、北方面へは大宮まで、西は高尾まで、南は大船まで、東は千葉まで、常磐線なら取手までというように、まあ、簡単に言えば101系や103系の国鉄電車が走っているところで、ほぼ待たずに乗れる区間でした。
それに比べて、汽車区間になると、あらかじめ時刻表で列車を調べてから乗るようなところで、そういうところには113系や115系などの近郊型電車が走っていました。
その「電車区間」のことを「国電区間」と呼んでいて、101系や103系は国電だったわけで、私の経験からすると113系や415系などの近郊型電車は「国電」とは呼ばずに、どちらかというと長距離電車の部類で、「かぼちゃ電車」とか「うめぼし電車」などと高校生たちがニックネームを付けていました。
その後、国鉄がなくなってJRになると、「国電」ではおかしいということになって、JRは一般から愛称を募集しました。そして、「E電」という名前に決定しました。
ある日突然発表があって、「明日からはE電と呼んでください。」となったわけです。
これには国民はとても違和感を覚えました。民営化したというのに、いかにも押しつけがましいやり方で、親方日の丸的に感じたのと、「イーデンってなんだ?」「ふざけた名前を付けるな!」というような反響でした。
JRは駅の表示や、車内放送でE電という名前をしきりに宣伝しました。
たとえば長距離列車が東京駅や上野駅に到着するときに、「ご乗車お疲れ様でした。次は終点の東京です。E電各線はお乗換えです。」というような車内アナウンスを車掌さんがしていました。
でも、全く定着しなかったんです。
これほど外したキャンペーンはないというぐらい広まらなかった。
そして、そのうち、このE電という名前は消えていきました。
この間、20代30代の鉄道好きの人たちに「E電って知ってる?」と尋ねたら「????」でしたから、つまりは死語になったのです。
私は、この「E電」という言葉は、時代を先取りしすぎていたんだと考えています。
今なら、eメールやeコマースなど、イーなんとかが当たり前になっています。でも、当時はそんな言葉はありませんでしたから、全く定着しなかった。つまり、時代より2歩も3歩も先に進んでしまっていたわけです。
一般公募の中から選ばれたとはいえ、JRの幹部の人たちが選ぶわけです。彼らは頭脳明晰な人たちがたくさんいて、これからは「E」の時代だということはわかっていた。だから、こういうネーミングをしたわけですが、それが国民に受け入れられなかったのは、世の中というのは、いくら正しいことでも、時代の2歩も3歩も先を行くようでは、一般のマーケットに受け入れられないということを、JRの幹部の人たちは理解しなかったわけです。
だから、このような頓馬なキャンペーンを張ったわけで、私は、このE電の教訓から、「時代の半歩先を行くのがビジネスである。」ということを学びました。そして、今、いすみ鉄道でそれを実践しているのです。
そしてJRはE電キャンペーンを失敗であったと認めないまま、30年近くもその頓馬なキャンペーンを張った頭のいい人たちが上から目線の経営をしてきて、今の現状があるわけです。
とまあ、こんなふうに考えているのですが、実は、私が死語になったと思っているこのE電という言葉が、実は死語にはなっていないということに気づきました。
それがこれです。

JRのホームページで見つけた「駅ナンバリングのご案内」
ここに「E電区間」という言葉を見つけました。
電車特定区間のことを「E電区間」と表示しています。
ということは、死語ではなくて実際に使っているということです。
あれだけのキャンペーンを張ったのだから、自分たちはあのキャンペーンは失敗だったと言えないんですね。
こういうところが私は頓馬だと思いますよ。
世の中に受け入れられなかったんだから、失敗を認めて改善していくのが民間企業です。
それなのに30年近くたつ今でも、自分たちはしっかり使っている。
おもしろい考え方ですね。
私のブログはJRの幹部や国交省の幹部の人たちも読まれていますが、それを知ったうえであえて申し上げるとすれば、
「今なら、国民に受け入れられますよ。」ということ。
今の時代なら「イーデン」はすんなりと受け入れられて、若い人たちを中心に「いいね」がもらえます。
そのためには、いったん仕切り直しをして、キャンペーンを張りなおす必要があります。
会社の中で「死語」と認めていないのなら、そのぐらいのことをやりましょうよ。
お役所なら明治時代や戦前にできた法律を盾に、実情に合わなくなっていることを平気で押し通しますが、JRは民間会社だと自分たちでそう言っているわけですから、今から、もう一度「イーデンキャンペーン」をやりましょう。
さて、私が今日言いたいことは、このE電の話ではありません。
このニュースにあるように、JRが駅にナンバリングを付けて、スリーレターコードを付けるということについてです。
このスリーレターコードというのは、Abbriviationといって、航空会社が昔から使っているものです。
JRは国鉄時代から電略というコードを使っていて、電車の横に「八ミツ」とか、「千マリ」などと書かれているのがそれですが、航空会社ではHND、ITMなど、この略号を世界的に使用しています。
この略号は、例えばAKBとか、SKEとかHKTとか、芸能界で使われ始めて数年が経ちますから、おそらく今ならすんなりと国民に受け入れられると思います。
原則としては、間の母音を抜いて表現することですが、航空会社でなぜこのようなAbbriviationが使われたかというと、2つ理由があって、1つは記号化することで間違えを防ぐということ。もう1つは電信費用を安くするということ。昔は通信費用が一文字いくらでしたから、できるだけ要件を短く伝えるためということです。
今回は、外国人に対応するためのキャンペーンのようで、これならどこの国の人にでも理解できると思います。

東京:TYO、上野:UEN
秋葉原はAKB。AKHにしなかったところは素直でよろしい。
武蔵小杉がMKGか。では武蔵小金井はどうなる?
いやあ、これ、おもしろいですよ。
当面は首都圏だけのようですが、そのうち全国に広がるでしょうからね。
先につけてしまえば、後から付けるときにはそのコードが使えないということでしょう。
大崎がOSKだから、もう大阪はOSKにできない。
でも、大阪はOSAだろうな。
そんなことを考えたら夜も眠れない。
旅行業の資格試験には絶対に出るな。
だけど、ここまでやるんなら、乗車券の券面表示だって当然「IKB→NPR」ぐらい考えているだろうね。
まあ、金額表示でしょうから「SJK→160円」とかかな。
これは定着すると思いますよ。
時代に合ってるから。
だけど、定着するということは、人々に受け入れられるということで、人々が受け入れるということは、独り歩きを始めるということです。
独り歩きを始めるということは、すなわち自分たちが予期せぬ方向に行くということになります。
これが世の中の動きであり需要でありますから、民間会社を自認するのであれば、その世の中の流れをどうつかんでいくかということが求められますね。
つまり、お客様に合わせて自分たちが変わっていかなければならないということです。
30年近く前に失敗に終わったキャンペーンをいまだに引きづって、「E電区間」などとホームページに表示して、自分たちの正当性をさりげなく主張しているようでは、利用者からは「いいね」がもらえないということです。
日本語もどんどんAbbriviation化していくのは、将来楽しみでもあります。何なら絵文字が入ったって構わないと私は考えておりますが、どんな楽しい路線図が出来上がることか。
JRさんのお手並み拝見と行くことにしましょう。