最近の日本人は、1つの品物にいろいろな値段がついているということを感覚として理解しているように思います。
1本のペットボトルの飲料が、コンビニで買えば140円で、スーパーマーケットならば100円前後。
そのコンビニとスーパーマーケットが同じ系列資本だったりすると、20年ぐらい前までの日本人は、
「同じ系列なのに値段が違うなんておかしいじゃないか?」
などと文句を言う人もいたのですが、今ではそういうことを言う人もほとんどいなくなりました。
道を歩いていて、のどが渇いてドリンクを買いたければコンビニに入って、サッと商品を取って、並ぶことなくレジでお金を払えばよいわけで、それが高いと思うのであれば、ちょっと遠くでもスーパーへ出かけて、レジの列に並んで安い商品を買えばよいのです。まして、そのスーパーを出たところの自販機で同じ商品が150円で売っているのですから、昔の日本人ならば「ああでもないこうでもない」と文句を言いそうですが、今の日本人は皆さん、自分の事情で使い分けていますね。
スーパーマーケットの前の自販機で定価の飲み物を買っていく人がいるなどということは、昔では考えられなかったのです。
さて、この、一つの商品にいろいろな値段があるということは、このように販売する場所によって値段が変わるということは感覚として理解されている方がほとんどだと思いますが、では、同じ商品が時間によって値段が違うっということについては、皆さんいかがお考えでしょうか?
時間による値段の違いとして一般的なのは、八百屋さんや魚屋さんが、仕舞い間際になってくると、その日の売れ残りを値引きして売り切ってしまおうという作戦に出ます。これは昔も今も同じようにみられる光景ですが、これとは逆に、時間が遅くなると値段が高くなる商売というのもあります。
例えば、私たち不良仲間がよく池袋辺りでたむろしていた40年近く前の話ですが、喫茶店の1杯のコーヒーが、夜の11時を過ぎると深夜料金になります。
お正月3が日なら、お正月料金として、ふだんは400円のコーヒーが800円にも1000円にもなることを私たちは理解しています。
人が休んでいるときに働いているわけですから、そういう時に休んでいる人が、働いている人から受けるサービスには当然特別料金が加算されるという考えで、「高いコーヒーを飲みたくなければ、そんな時間に喫茶店などに入らなければよい。」ということです。
こういう経験は不良少年ならば40年も前からしてきたのですが、これはサービスに対するコストをどう負担させるかという話で、例えばタクシーも深夜になると割増料金になるというのも同じです。
ところが、最近では不良少年じゃなくて、善良な市民の皆様でも、こういう目にあわされていると言いますか、時間による値段の違いをうまく乗り越えていかないと、とんでもない目にあわされるようです。
先日の3連休に、私の知人が九州へ行ってホテルが取れないといってFacebookで嘆いていました。
3連休に予約なしで旅行に出かけて、ホテルが取れないというのは、あたり前と言えば当たり前なんですが、実は、ホテルが取れないというのは、空室がないということではなくて、自分の予算に見合うホテルがないということなんです。
どういうことかと思って、インターネットで調べてみました。
▲福岡のホテル検索。11月22日、シングル1泊です。
▲安いホテルの代表格と言えばココ。
料金を見てみたら・・・
▲1泊素泊まりが25000円。
びっくりポンだす!
10㎡の狭いシングルルーム。
え~!と思って、11月の値段表を見てみると、
▲同じ部屋が、翌日は4167円、今日24日は7408円、25日は11112円、26日は20371円と、激動ともいえるような価格設定になっています。
そして、何よりすごいのは、26日から28日まで、ふだんは5000円しないシングルルームが2万円以上の価格にもかかわらず、満室になっていることなのです。
同じ商品が時間や日付によってふだんよりも高い値段で売るというのは、先ほども申し上げましたが、お正月料金や深夜料金のように、サービスを提供する為のコストを価格に転嫁しているというのが昭和の時代から続くやり方でしたが、このホテルのように、日によって値段を変えるやり方は、コストではなくて、需要によって値段をコントロールしているということになります。
つまり、3連休のようにお客様が多い時期は、高く販売し、お客様がいない日は安く販売する。
需要を見越して、値段を変える戦略で、1部屋から上がる収益を最大限にしようとする考え方です。
こういう考え方をRevenue Managementと言って、最近のホテル業界では、このホテルだけじゃなくて、だいたいどこでもやっています。
▲同じ福岡という条件で考えると、私も良く宿泊するこのビジネスホテルは。
▲12月のシングルルームの空室状況はこんな感じです。
通常料金よりも土曜日が500円ほど高いのがわかります。
▲高級ホテルはどうかというと、
▲さすが、1泊24000円しますね。
でも、高級ホテルだけあって、シングルルームが21.5㎡あります。
▲12月の価格表です。
土曜日の価格が4000円高い28000円です。
こうしてみると、福岡市内のホテル需要は、ビジネスホテルでも土曜日や休前日が多いということがわかりますね。
でも、このホテルの場合、4000円高い28000円に設定してある日は、12月22日以外はすでに満室になっているのです。
ということは、私としては、この28000円という値段の設定が、もしかしたら少し安めなのではないかと考えてしまいますが、皆様はどう思われますか?
例えば32000円ぐらいに設定したとしても、もしかしたら、いや、もしかしなくても、おそらく満室になるのではないか。だとすれば、みすみすもうけそこなっている部分があるのではないか。
そう考えると、最初にご紹介したアパホテルが、20000円以上の価格設定でも満室になっているのですから、「株式会社の商売」としては、間違ってはいないと、私は考えます。
では、もう一軒、こちらのホテルは如何でしょうか。
▲ちょっと地味目ではありますが、全国チェーンの法華クラブ福岡。
▲こちらはアパホテルが25000円の日に、7500円でした。
で、同じように12月の価格表を見てみると、
▲実に全日同じ価格の7500円。
4000円台から25000円まで値段を細かく設定しているホテルがある一方で、12月ひと月間同じ値段で販売しているのです。
すでに月の前半は埋まりつつありますし、年末も満室ですね。
でも、売れ残っている日もかなりあります。
ホテルの部屋の販売というのは、営業のやり方がそれぞれの会社によって異なりますから、いちがいにどれが正しいというのはありません。
だから、あとは、お客様の好みの問題ということになるのではないでしょうか。
ちなみに、私はアパホテルのやり方、ある意味嫌いではありません。
自分がこの会社に出資して、株主になるのならば、取りこぼし無くお金を稼げそうですから、好意的に見ることができますが、でも、お客さんとしては、足元を見られているようで、25000円払って10㎡の部屋に泊まりたいとは思いませんね。
需要による価格コントロールは、その辺の勘所が難しいところなのではないかと思います。
どうせ20000円以上払うのであれば、高級ホテルに泊まりますし、そういう部屋って、意外と空室があったりするのも事実なんですよね。
一つだけ言えるとすれば、ホテル業界は、外国人観光客が増える中で、熾烈な競争を戦っているということになるのは間違いないと思います。
6月ごろだったか、このブログに「東横インが1万円になる日も近い」というような記事を書きましたが、すでに1万円どころか、2万円を超えるビジネスホテルが出始めているというのが現実なのです。
でも、そんなビジネスホテル業界にあって、法華クラブ、気になりますよねえ。
同じ部屋を年末年始を含めて毎日同じ価格で販売しているなんて、良心的ですよね。
実は、法華クラブのチェーン店は、現在、私が住む佐倉市ユーカリが丘のデベロッパーである山万株式会社が運営しているのです。
私は、そういう会社が拠点を置く町に住んでいますから、この価格表を見て、なんだか少しホッとしたところでございます。
そういう会社には、もう少し商売っ気をだして、儲けてもらいたい気持ちになるから、不思議ですね。
本日はホテルのRevenue managementのお話でした。
(つづく)
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