二重価格、三重価格

 昨日はホテルの話をしました。
外国人観光客が急増して、安いビジネスホテルが取れない。
でも、意外と高級ホテルが直前割引などで空室があって、ビジネスホテルとそれほど変わらない値段で泊まれたりすることがある。
私は、そうやってシティーホテルにビジネスホテル並みの価格で泊まることが良くあります。
と、そんな話でしたが、あるとき、シティーホテルに滞在中に予定が変更になって、もう1泊しなければならなくなりました。
そして、フロントに相談したのです。
「もう1泊宿泊したいのですが空室はありますか?」
するとフロントの係りの人は、「お部屋に空きはございますが、○○円になりますがよろしいでしょうか?」と、正規の値段を伝えてきました。
正確には覚えていませんが、8000円ぐらいの料金で宿泊していたのですが、15000円ぐらいの値段を言われたと思います。
今日まで2日間、1泊当たり8000円で泊まっている同じ部屋が、もう1泊延泊すると15000円になるというのですから、普通だったら納得いきませんね。
でも、私はかつて航空会社に勤務していました。
航空会社では、空港の航空券の発券カウンターでは基本的には正規運賃しか売ることができません。
格安航空券は旅行会社の窓口で販売するものであって、たとえ自社便であっても航空会社のカウンターでは格安航空券は販売することができません。こういう経験というか、システムがあるのを知っていましたので、その時はホテルのフロントの人に、「ありがとう。検討してみます。」と言って、部屋に戻りました。
そして、インターネットを開いて、ホテル予約サイトからそのホテルの今宿泊している部屋と同等の部屋を8000円で予約しました。
数分後に、フロントに戻って、同じ係りの人がいましたので、「もう1泊予約しましたから、よろしくお願いします。」と言うと、彼は手元の機会を操作して私の予約が入ったことを確認して、「はい、それでは同じお部屋にどうぞもう1泊されてください。」と笑顔で答えました。
こういう仕組みが、今の世の中、あたり前になってきているのですが、皆様方はお気づきでしょうか。
1本のジュースを買うのに、コンビニとスーパーでは値段が違います。
今の若い人たちは、そんなことは当たり前で、コンビニは手近にあって便利でレジにもほとんど並ばなくて済みますが、その便利さと引き換えにお客様は定価で商品を購入します。
スーパーは広い売り場からお目当ての商品を見つけて、レジの列に並ばなければならないという手間がかかりますが、割安で購入することができます。
今の時代の消費者は、同じ商品がさまざまな値段で販売されているということを、感覚として理解しているのですが、コンビニが出始めた30年ぐらい前の日本では、そういうことがなかなか理解されませんでした。
例えば、あるコンビニチェーンが、大手スーパーの系列だったとします。
すると、昔の消費者は、コンビニの店員に向かって、「お前のところはあのスーパーと同じ系列だろう。だったらどうして値段が違うんだ。」なんてことを平気で言っていましたし、そういうことが平然とクレームとして扱われていたんですね。
国鉄の末期に、繁忙期と閑散期という期間を設けて、繁忙期の指定席券を200円程度値上げしたことがあります。そして、閑散期を値下げしたのですが、やはり、利用者からは「同じ座席でどうして時期によって値段が違うんだ。」というクレームがたくさん上がりました。
そう考えると、当時の消費者というのは、見切り品とか、在庫処分でもない限り、価格は常に同一であるべきだという「正義感」にとらわれていたのだと思いますが、今思うと本当に昭和というのはそういう時代だったんですね。
今では、首都圏のグリーン車の料金は乗車前に買うのと、乗車後に買うのとでは同じ座席でも料金が違うなんていうのは当たり前になりましたし、書籍だって家電製品だって、同じ品物や同じサービスを受けるにしても、購入の仕方によって値段が違うなんてことは常識になりましたが、だとすると、あの昭和の時代の正義感はいったいどこへ行ってしまったのでしょうか。
もしかしたら正義というのも、時代とともに変化していくものなのかもしれませんね。
今は、購入方法で値段が違うのはけしからん、などというクレームをしたら、その人本人が笑われる時代ですし、商品によってはクレームをしないという前提で安く買えるものもあるようですから、私は面白い時代になったと思います。
皆様の周りにある商品には、いくつの価格が付いているか、調べてみたら面白いと思いますよ。