江ノ電探検

昨日は神奈川県の江ノ電に出かけました。
江ノ電は私たち東京育ちの人間にはなじみが深い電車で、ちょうどサザンが湘南を背景にデビューしたこともあって、ガールフレンドと一緒に江ノ電に乗って江ノ島、鎌倉へ行くのが、私たちの時代の高校生のデートの定番コースでした。
今は江ノ島電鉄と言っていますが、私が高校生だった当時は江ノ島鎌倉観光という会社名で、江ノ島と鎌倉という2つの観光地を社名に取り入れているのが面白いなあと思っていましたが、当時から江ノ電と呼んでいましたので、今の社名の江ノ島電鉄の方がしっくりくる気がします。
さて、私がなぜ江ノ電に出かけたのかというと、台湾国鉄との姉妹鉄道提携にからんで江ノ電ともご縁ができまして、お互いに訪問しあったりということを始めたのですが、先日久しぶりに江ノ電に乗ってみて、私は大変興味を持ったのです。
それは、電車のオペレーションに関してなんですが、私が見た限り、江ノ電にはたくさんの問題があるのです。
その問題というのは、
・すべての交換可能駅で列車が交換している。つまり線路容量がいっぱい。
・折り返しの鎌倉と藤沢の両駅ともに、ダイヤ上の折り返し時間が2分しかない。
・朝から夜まで4両編成の電車が走っている。
・駅のホーム、交換設備は4両編成での運転が最大。
・車庫などの検修設備が敷地の制約を受けて拡大できない。
・各駅のホーム幅や長さもこれ以上拡張できない。
・電車の形式がさまざまで、統一されていない。
・無人駅での改札対応ができない。
ざっと見渡しただけで、オペレーション上ネックになっていることがこれだけあるわけですが、それに加えてさらに
・沿線には勝手踏切と呼ばれるような生活道路がたくさんある。
・道路と線路が併用されている区間がある。
・軌道として建設された経緯から、急カーブが連続している。
などなど、とにかく大変な環境の中で毎日のオペレーションを行っているわけですが、どうやって対応しているのか、昨日はじっくりと見せていただいたのです。


こういう狭いところをくねくねと走り、見通しがきかない区間や、自動車だけじゃなくてスーパーに出入りする歩行者や自転車などに気を使いながら、12分間隔で線路容量一杯の電車が走るわけなんですが、運転士さんと車掌さんが実にきびきびと基本動作に忠実に乗務しているんですね。
※注:線路容量がいっぱいというのは、単線の路線で、すれ違い設備の関係から、もうこれ以上列車を走らせることができないという状況のことです。
それに加えて、ホーム長の関係から最大4両編成での運転しかできないわけですから、すでにこれ以上の輸送力は提供できない状況にあります。
まして、4両編成の電車が止まる駅のホームは4両編成がぴったりのところが多く、停止位置も余裕が無かったりしますから、私が見たところ、秒単位の運転スケジュールではかなりの熟練度が要求される路線でした。
何しろ、江ノ電は日中時間帯は観光客であふれているわけです。
観光客というのは、基本的には皆さん不慣れで、どうやって切符を買ったらいいのかとか、どちらから乗るのかなど、よくわかっていない人たちで、そういう人たちがごった返している中で、折り返し駅の鎌倉、藤沢で、折り返し時間2分でオペレーションするためには、運転士さんは時刻通りに運転するのはもちろんなんですが、車掌さんも各駅で遅れないようにドア扱いをして、終点では降車口の案内をちゃんとやって、お客様を誘導している。その案内は、誰がやっても同じ内容の文言で、お客様が迷わないようになっている。駅では構内踏切の両側に駅員さんが立って、列車の往来と人の横断をきちんとコントロールしている。
このように、働いている職員の皆さんが、実にきびきびと動いているのに気付きました。
ところが、それだけじゃないんですね。
観光鉄道として、観光客にいらしてもらっているわけですから、いくら自分たちの仕事が忙しいからと言っても、そういうことは顔には出さず、皆さんニコニコしているんですね。ホームに入ってくる電車に向かって、老若男女、たくさんの人がカメラを向けるわけですが、「俺を写すな。」的な運転士さんはいないし、緊急停車したり、過度に警笛を鳴らすこともなく、実にスムーズなオペレーションなんですね。
江ノ電は働く人に支えられている。
職員の皆様方が、江ノ電を大切にして、仕事に誇りを持っていて、それがお客様に伝わってくる。
そんな鉄道だと感じました。
朝夕は通勤。日中は観光鉄道としての役割があるのですが、電車の運転は観光鉄道だからと言って、のんびりしているわけじゃなく、ダイヤも車両も駅構内もすべてギリギリ、最大の稼働率で動いている。にもかかわらず、それでも、観光客の皆さんは、みんな笑顔で、観光鉄道の旅を楽しんでいらっしゃる。
その部分が実にスムーズなんですね。
これは、いすみ鉄道も見習わなければならないところだと思いました。
いやあ、勉強させていただきました。
ご対応いただきました江ノ電の関係者の皆様、どうもありがとうございました。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。

[:up:] 藤沢駅の車止。
遊び心があふれています。
この他にも江ノ島駅に田んぼやガーデンがあったり、スタッフの皆さんのアイデアがあふれています。


[:up:] 台湾国鉄「平渓線」との乗車券交流のラッピング車両。

[:up:] 江ノ島駅の中には台湾国鉄コーナーがありました。

[:up:] こちらは台北駅のポスターです。





観光客であふれる台湾の平渓線。
なんとなく江ノ電と雰囲気が似てませんか?
江ノ電という電車は、今や江ノ島、鎌倉の観光には欠かせない存在です。
これは、輸送機関というだけじゃなくて、観光のシンボルなんですね。
そう考えると、いすみ鉄道だって、房総半島の観光の一つのシンボルになれるわけです。
いや、もう既になっているかもしれませんね。
都会の人たちから見たらきっとそう見えるんでしょうけど、地元の人たちは、まだ見えていないのかもしれません。
「見える化」しなければならないのが今の課題です。