迷惑な存在

このあいだ、地方の町で町おこしをしている会の代表の方と話をする機会がありました。
その方は、大きな町で本業を別に持っているのですが、廃れていく地域を見て、「こうやればできるでしょ。」といろいろな企画を提案し、アニメで町おこしの活動をしている中心人物で、アニメが好きな人たちから見たら、その町を全国的に有名にした方なんです。
ところが、まだ40代のその彼の口から出てきた言葉を聞いて、私は思わず笑ってしまいました。
「私は地元では迷惑な存在なんですよ。」
私はどうしてですかと聞き返したのですが、彼が言うには、
「田舎の町の人たちにとったら、訳わからない人間がやってきて、『アニメで町おこしをしましょう。』なんて言い出すこと自体が、まず迷惑でしょう。」
私は「なるほど、なるほど」と彼の話に聞き入りました。
「だいたい、自分たちは平和に暮らしているわけだし、とりあえず生活はできているわけで、そういう新しいことをやるとか、町おこしの必要性自体を理解してないし。」
「ほう、ほう」
「少子化とか高齢化とか言われているのはわかるけど、自分のことだとも思ってないし、自分の町が消えてなくなる対象に入っているなんて考えていないわけで。」
「それから、それから」
「そういう状況のところで、町おこしやるからイベントに協力してくれだとか言われても、役場にしてみたって完全に余計な仕事でしょう。」
「確かにそうですね。」
「まして、役場がやっているイベントとか祭りに参加させてくれと言ったって、毎年恒例のイベントは効果の検証もないまま実行委員会のプログラムはコピペでできているし。」
「それで」
「そういう地域のお祭りには、地域住民の出し物ばかりで、部外者が新しいことをやるために入り込むスペースなどないですから、本当に迷惑がられるんですよ。」
「そうでしょうねえ。」
「だから、外を巻き込んでやるしかないと思って、マスコミやテレビ、同人誌などに働きかけたら、彼らは趣旨を理解してくれますから、すぐに来てくれる。」
ここで私が、こう言いました。
「テレビや雑誌等、外部から評価されて初めて地域の人たちに認めてもらえるってことでしょ?」
「そうなんですよ。おじいちゃん、おばあちゃんはまだ理解があるんだけど、特に役場がねえ、動かないんですよ。」
今度は私が、「だって、今までずっと同じことをやってきて、それで今、廃れた現状があるのだから、今までと同じやり方じゃダメなのにね。」
「でも、行政の人って絶対に新しいことはやろうとしないでしょ。」
「そうですよ、それが行政ですからね。」
「だから、地域が今こうなっているわけで、それでも、現状こうなっているのは自分たちの責任じゃないけど、何かやって失敗したり、問題が起きたりしたら、それこそ自分たちの責任になる。」
「だから、余計なことはやらない。何もしない。」
「そうなんですよ。だから僕みたいな人間は本当に迷惑な存在なんです。」
そんな会話をしているところに入ってきたのは地方創生国家戦略特別区域担当の石破茂大臣。
大臣は、彼の顔を見るなり、「頑張っていただいてますね。ありがとうございます。」とご挨拶。
そして隣にいた私に、「いやあ、いすみ鉄道さん、すごいですよね。いつも注目していますよ。今度お邪魔させてください。」と、こういう流れになったのです。
最初に話していた彼はある県の代表として招かれていた方で、私は千葉県の代表として招かれていたのですが、代表と認めてくれたのは内閣府大臣官房であって、二人とも、たぶん、Maybe、Perhaps、地元の一部の方々からは迷惑な存在なんだろうなあ。
「今まで静かだった町が観光客が来るようになってうるさくなった。」とか、
「今まで列車には十分座れたのに、座れなくなった。」など、
いろいろな意見を言う人たちがいて、そういう話をきちんと聞いてあげなければならないのが役場の仕事なんでしょうけど、いすみ鉄道は会社ですから、匿名の投書やクレームには今まで一切お返事していませんし、今後もお返事はしないつもりですが、「総論賛成、各論反対」など、今どき政治の世界だってありませんからね。
活性化するということは、内部だけではできませんから、当然外部からたくさんの人が来るということだし、そういう流れは、自分たちの都合の良いようにコントロールできないものなんですが、都会の人にとってみたら当たり前のことでも、田舎の人にとって見たら迷惑極まりないことなのかもしれません。
昨日、鎌倉からの帰りに横須賀線のグリーン車に乗りました。
すると、ベビーカーを押した若い夫婦が乗ってきて、子供は二人で、乳児と幼児。
比較的静かな子供でしたが、それでも子供ですからギャーギャー言いますよね。
私は5人子供を育てましたから、電車の中でいろいろな人に迷惑をかけてきた側だし、だいたい子供の泣き声は騒音じゃないと思っていますから、微笑ましく見ていましたが、そういうことを騒音だとか迷惑だとかいう人もいるわけで、それを知ってか知らずか、まだ30代お父さんもお母さんも、子供を抱いて席を立って連結部のむこうへ行ったりとしきりに恐縮してる様子。
私自身は子育て中に小さな子供を連れてグリーン車で移動した記憶はありませんが、じゃあ、普通車だとしたら、もっといろいろな人に迷惑だって思われるのかもしれないし、迷惑かどうかなんて、本当に迷惑な行為だとしたら、グリーン料金払っている人が声を大にして言える性質のものでもないし、普通車だからって周りが我慢する必要もないと思います。
私は荷物が大きかったので、車端部分の10名ぐらいの個室にいたのですが、そのお父さんお母さんだって、他のお客様に迷惑にならないように最大限の注意を払って、その車端部分の個室に来たんだと思いますから、うるさいと思ったら自分から出て行けばよいだけの話です。
こういう議論は以前にもどこかでさんざん炎上していた記憶がありますが、言っていることを見るとどうも「小者」ばかりなような気がするし、でも、声を出した方が勝ちなのが今の世の中かもしれないですね。
そんなことを考えながら、ふと網棚の下を見ると、緑のランプが4つ、ちゃんと点灯しているんです。
30代の若いお父さんとお母さんは、子供も座席を専有するためでしょうか。ちゃんと乳児と幼児の分までグリーン券を買ったんだと思いますよ。
混み合う時間帯でもないし、もともと自由席のグリーン車だから、別に買わなくてもとがめられないのを知ってるだろうに。
その人の懐具合は知りませんが、こういう行為はお金があるとかないとかに起因するもんでもないでしょう。
新幹線の指定席に自由席券で乗って、追加料金を取られたことにクレームする大学の先生もいるようですが、「うるさい、迷惑だ。」とクレームをしながら、あわよくば料金の支払いを免れようとする大人は恥ずかしいですよね。
若い人の中には、人が見てなくても、きちんとしたふるまいをしようとする人もたくさんいるし、大人たちの中には、あわよくばごまかそうとする人もたくさんいる。
でも、実はそういう人たちの声が大きくて、そういう声ばかりが独り歩きするのは、私は良くないと思います。
話を地域おこしの話に戻しますが、その場にいたほとんどの方が、彼の話にうなずいていました。
「お前が余計なことをするから、俺たちの仕事が増えるじゃないか。」と思われてる人たちって、迷惑な存在なのでしょうか。
アニメで地方創生ができるのなら、ローカル線だって地方創生できるでしょう。
「今までやってきて、その結果として今の姿があるのですから、今までのやり方じゃだめなんですよ。」
いつのころから石破大臣に私のフレーズをパクられたようですが、アニメでできるなら、ローカル線だって絶対にできます。
軍事じゃだめだろうけどね。
今日は雨に打たれたせいか、午後から熱が出て体の関節があちこち痛い。
熱にうなされて書いた本日のブログでございました。
※特定の個人や団体を言っているものではございませんのでご了承ください。www