いすみ鉄道では、昭和の気動車キハ52・キハ28の2両編成による「夜行列車」を昨日から今朝にかけて運転いたしました。
いすみ鉄道で夜行列車を走らせるというと、皆さんは「????」となるでしょう。何しろ全長26kmで片道50分で終点に着いてしまう距離の路線ですから、「夜行列車でどこへ行くんですか?」という疑問がわくのは当然です。
夜行列車というのは昭和の時代に「寝ている間に移動できる優れもの」として重宝がられて、東京から九州や山陰、北陸、東北などはもちろんのこと、近場でも長野や新潟、会津や仙台などへも夜行列車がたくさん走っていましたし、そういう列車はどれも結構混んでいて、寝台車は高級でしたから、庶民の皆様は座席の夜行で一晩汽車に揺られるのが定番だったわけです。
ところが、航空路線と新幹線と高速道路の発達で、一晩かけて列車に乗って目的地へ行くという需要はすっかりなくなってしまって、夜行列車は寝台列車も座席の列車もほぼ絶滅状態なのが昨今ですから、「いすみ鉄道がどうして夜行列車を走らせるのですか?」という質問は当然と言えば当然であります。
でも、私が考えるには、「夜行列車に乗って目的地へ行く。」という需要はなくなってしまったかもしれないけれど、「夜行列車に乗ってみたい。」という需要は必ずあるはずで、どこへも行かなくたって一晩列車に揺られて朝を迎えるのは意味があることだし、なんだかとても贅沢なことなんじゃないかなあと思うわけです。
そこで、このような「どこへも行かない夜行列車」を世に問うてみたのが今年の1月。そうしたら、賛同してくれる人がたくさんいて、あっという間に満席になりました。そして5月に2回目を実施したところ、こちらも満席。そして昨日の3回目も満席のお客様にご利用いただいたのです。
ただし、昭和の時代の夜行列車は4人掛けのボックスシートに4人座って、さらに通路に新聞紙を敷いて座っていったのは当たり前でしたが、今の時代にそれをやってしまうと、皆様方が大切にしている昭和の夜行列車の思い出を壊してしまうことになりかねませんから、いすみ鉄道の夜行列車は4人掛け1ボックスを1人か、仲の良い友達と2人で専有するプランや、ロングシートにごろ寝するプランとして、ゆったりとお楽しみいただける構成にしてみたのです。
昔、よく、廃車になったSLに寝台車両を連結した列車ホテルがありましたが、あれは走らないから気分が出ないわけですが、いすみ鉄道の夜行列車はちゃんと臨時ダイヤを設定して走りますから、気分も盛り上がるわけで、演歌にある「上野発の夜行列車」ならぬ「大原発の夜行列車の旅」が一晩繰り広げられたということでございます。
ちなみに1ボックスを1人で専有するプランは13500円。この料金には、発車前にホテルへ行って新鮮なお刺身とバイキング料理の豪華夕食と入浴が含まれていて、さらに、ご乗車記念のキットやキハ52特製ブランケットのお土産付ですから、ご参加されたお客様は、「これでいすみ鉄道は儲かるのですか?」というご質問をいただくほど。「儲かる」というほどではありませんが、地元のホテルにお金が落ちる仕組みをきちんと作って、地域経済に貢献するということも、第3セクター鉄道であるいすみ鉄道の役目であると私は考えているのです。
次回、第4回の夜行列車は11月23日の運転ですが、ありがたいことにすでに満席のご予約をいただいております。
第5回目は1月中旬ごろを予定していますので、ご乗車ご希望の方は、いすみ鉄道のホームページと私のブログをしっかりとご覧くださいね。
17時過ぎに急行5号として大多喜に戻ったキハ2連は、洗浄線に入りました。
車内ではスタッフ総出でレストラン用のテーブルの取り外しです。
21時50分の大原駅。夜行列車のお客様が思い思いに記念撮影をされています。
応援団の掛須団長と記念撮影をする美女。紅一点のお客様ですが・・・
車内はこんな感じです。
1ボックス2人掛けでも、昭和の規格の車両に現代人の体系では少々窮屈そうですね。
でも、仲良しのお友達同士なら、それもまた楽し、です。
国吉駅で30分停車中の夜行列車。
何しろ路線長26kmですから、すぐに着いてしまいますので、のんびり行程です。
その国吉駅では動態保存車のキハ30と記念撮影。
昨日は近隣のイベントに招かれたボンネットバスが待機して、キハ28とキハ30にボンネットバスの組み合わせで、参加された皆様方は大満足でした。
国吉駅から10分ほど走って大多喜駅に到着するとここでも30数分の大休止。
ボンネットバスが先回りして車内見学もできるようなサービスです。
バルブ撮影でキハを撮る人もいれば、夜鳴きそばをすする人も。
駅前の番所のマスターが家族で蕎麦屋を臨時開店。
やはりこの時間になると汁物が欲しくなりますよね。
と、先ほどの紅一点の美女がマスターと記念撮影。
もうどなたかお分かりですね。
鉄道アイドルの木村裕子さんが、まったくのプライベートで参加してくれたんです。
「キハの中で一晩過ごせるなんて最高です。」とおっしゃられましたが、本当にマニアな方なんですね。
23:36に大多喜駅を発車して上総中野へ向かう夜行列車。
私は今日も朝から仕事でしたので、ここでお見送りをさせていただきましたが、この後、車内灯を減光し、列車は午前6時まで大原と上総中野の間を行ったり来たりしました。
多分、大多喜町やいすみ市の皆様方は、夜中にいすみ鉄道でボンネットバスや夜鳴きそば屋をやってるなんてご存じないでしょうね。
国吉の駅を発車してすぐに、ファンションセンターの吉田さんが窓から手を振ってくれていました。
吉田さんありがとうございました。
沿線の皆様方にはご迷惑をおかけいたしました。
そしていすみ鉄道のスタッフの皆様、お疲れ様でした。
次回23日もよろしくお願いいたします。
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