キハ52の単行運転終了です。

この夏は平日にキハの単行運転を試験的に行いました。
予想よりもたくさんのお客様にご利用いただきましてありがとうございました。
また、ふだん大好評の伊勢海老特急「お刺身列車」の運転を止め、「イタリアンランチクルーズ」も運転本数を減らして、その分、廉価版のお手軽食堂車やカレー列車などの運転を行いました。
夏休みに、親子や友達同士でいすみ鉄道で楽しい思い出を作ってもらいたいというのが趣旨なんですが、実は別の2つの理由があったんです。
その1つが平日の観光需要。
いすみ鉄道の現状では、土休日はほぼ限界に達していますので、これ以上ビジネスを拡大することができません。観光需要の伸びシロはどこにあるかと言うと、平日なわけです。
そこで、この夏は試験的にキハの単行列車を夏休み期間中18日間運転いたしました。
土休日の16日間はキハ2両で運転しますから、まだあと今週末の運転が残っていますが、合計32日間もキハが走ったことになります。
「平日に走れば乗りにいかれる。」と言っている人もたくさんいるようですが、これで来ない人は、何をやっても来ませんから、私は鉄道ファンの皆様へ向けたサービスは、この夏、十分にオファーしたと考えています。
それともう1つは、廉価版の食堂車。
一人1万円以上する観光列車の食堂車はなかなか手が出ないけれど、5~6000円ぐらいならば乗ってみたいという需要がたくさんあることもわかりましたので、今後の展開として、平日の観光誘致とお手軽食堂車が一つのテーマになっていくと思います。
ただし、それと並行してもう一つのことをやっていかなければなりません。
それは地域輸送需要の見直しです。
私は、就任してから5年間、列車本数を減らすことなくやってきました。
ところが、沿線住民の皆様方の少子高齢化が急速に進んでいて、以前に乗ってくれていたおじいちゃんやおばあちゃんの中には、姿を見かけなくなった人もたくさんいるようになりました。また、大多喜町役場の職員の皆様方の通勤経路見直しで、通勤定期の利用者がいきなり30%も減少するなど、列車の運転が現実の輸送需要に合わなくなってきています。
つまり、誰も乗らない列車がたくさん走っているということです。
そこで、地域行政から経営的課題を与えられているいすみ鉄道としては、これ以上利用客のいない列車を走らせることができなくなってきていますので、5年間減便することなく列車を走らせてきた私も、いよいよ需要の見直しを行わなければならなくなりました。
皮肉なことなんですが、観光客は次から次へ来てくれるけど、地元住民は乗らなくなっているのが実情で、だからといって地元の利用客を増やすことは、私は鉄道の仕事ではなくて行政の仕事だと考えていますので、なぜなら、いすみ鉄道沿線のような過疎集落では、「ノーマイカーデー」などの鉄道利用促進法は通用するはずもなく、地元利用客を増やすにはまず人口を増やさなければだめだからで、それは行政の仕事なわけですが、だからといって、そのやり方では即効性が期待できませんから、少子高齢化が急速に進んでいる中では、鉄道を維持するためにはコストを減らすことをしなければならない状況にいよいよなってきたということなんです。
いすみ鉄道は、今後、平日観光需要の開拓と、需要のない列車の運転取りやめという2つの課題を同時にやっていかなければなりません。
どうやっていくかは、今、毎日のように一生懸命考えていますが、現状では早朝、夜間、日中閑散時間帯の列車の減便を来春のダイヤ改正で行うことになりそうです。
ちょっと乱暴に聞こえるかもしれませんが、いすみ鉄道が国や沿線自治体から支援していただいているのはあくまでも上下分離の下の部分、路盤維持管理費であって、運行経費等を含む上の部分に関しては会社の責任部分、要するに私の責任ですから、乗客がいない列車を走らせるわけにはいかなくなってきているということなんです。
これがこの国の行政の一つの問題点で、公道の上を走る路線バスは黒字企業であっても運行経費の補助を出して走らせるのに、鉄道は線路の維持管理にしかお金を出さないのですから私はアンフェアだと考えているのですが、それは公募社長の条件でもありますから、今更そんなことを言っても始まりませんので、私としてはやはりコストコントロールの手法を列車の運行にも取り入れていかなければならないということなんです。
具体的なことは何一つ決まっておりませんが、テレビや雑誌でこれだけ取り上げられるようになった今を時めくいすみ鉄道でも、こういう問題があるということと、経営的にこれをしくじると、5年前までのように再度廃線の危機に直面するという現実があるということは皆様方に知っていただきたいと考えて、本日のブログとさせていただきます。

本日最終日だったキハ52の単行運転。
皆様十分にお楽しみいただけましたでしょうか。
明日は台湾からVIPがご訪問されます。