景気が良くなるということ。

おそらく30代以下の人には記憶がないと思うのが景気が良くなるということです。
バブルの崩壊から20数年、日本は「失われた時代」といわれる長い景気低迷の時代を経験しました。
20数年といえば、おぎゃーと生まれた子供が成人して余りある時間ですから、30歳代の人でも、ほとんど記憶にない、つまり、景気が良くなるということを経験したことがないということになります。
では、景気が良くなるとはどういう時代になるのかというと、長い不景気の時代に苦しんできた日本、特に製造業、販売業等をはじめとする会社の尺度で物事を考えると、これからは売り上げも伸びるし、収入もアップすような「予感」がやってきていますから、「期待できそうだ。」となります。
でも、私は、過去の自分の経験から考えると、景気が良くなるということは、同時進行で物価も上がり始める。逆に言うと、物価が上がり始めるから景気が良くなるわけですから、庶民としては、いつもお財布の中身の心配をしなければならないことは一緒だと思うのです。
そこで、皆様方が気になるのは、景気が良くなる時代はいつやってくるのか、いつからスタートするのかということだと思います。
特に若い世代の人たちは経験したことがないわけですから、ここは年寄りの本領発揮ということで、これからやってくる「景気が良くなる時代」を見極めるバロメーターをお知らせしたいと思います。
今まではデフレの時代が長く続きました。
経済の基本的なことですが、デフレというのはインフレの対極にあるもので、お金がない状態。「金不足」のことです。
お金がないから、物を買うことができず、物が売れません。
だから、物の値段が下がる。つまり物価下落で、企業の収入も下がり、給料も下がるから、更に市中に流れるお金が不足して、物が売れなくなるというのがデフレスパイラルです。
これに対して、インフレは「モノ不足」のこと。
お金はあるけれど、モノが不足しているから、皆がそのモノを買いたくなるわけで、そのモノの値段が上がる。
つまり、物価上昇が起こるわけです。
最近テレビ等で給料が上がる「予感」の報道がしきりに見られますが、物が売れるようになれば会社の景気が良くなり、その分、人件費に回せるお金が増えるから給料が上がりますよ、ということらしい。
らしいというのは、実際問題として会社というのは払わなければならないお金がたくさんあって、それが長年の不況でかなりツケがたまってきているから、売り上げが上がったからといって、いきなり人件費に回せるわけではないのですが、それが、このところのテレビを見ていると、総理大臣が企業の経営者に向かって「給料を上げてください。」と言っているのですから、面白い現象だなあと思います。
これも30代以下の人は経験がないと思うのですが、賃金アップというのは労働者が自分たちで勝ち取るものであって、「君たちはよく働いたからご褒美をあげよう」と、会社が黙っていて賃上げをしてくれるものではないということを、50代以上の人たちは皆知っているわけです。
そのために労働組合があり、その上部団体があるのが私の時代の世の中の仕組みだったわけですが、今の時代は、労働組合の代わりに総理大臣が経営者に向かって「給料を上げてください。」と声をあげているのですから、世の中も変わったなあと実感するのです。
さて、上記の社会の仕組みでご説明申し上げた通り、給料が上がる前にやってくるのがインフレによる物価の上昇なわけですが、では、それがいつ始まるかということの見極め方ですが、実は身の回りにあるもので判断できるんです。
例えば、皆さんが自動販売機で買うペットボトルの水。
あの水のペットボトルの容量はどれだけかご存知でしょうか?
「500cc」と答えられる方が多いと思いますが、本当にそうでしょうか?
実は、ペットボトルをよく見ると、520ccだったり、550ccだったり、さまざまで、実際には500cc以上入っているのですが、お気づきでしょうか?
実はこれ、数年前から見られる現象で、同じ値段で中身が余計に入っているということは、「デフレ現象」の表われなんです。
そう。経済現象というのはいきなり価格に反映されるだけじゃないんですね。
ということは、これから「インフレ」になって物価が上昇する時代がやってくるわけですが、インフレはいきなりモノの値段が上がるのではなくて、例えば、それまで520cc、550cc入っていたペットボトルの水が、いつの間にか500ccになったり、480ccになったりすることから始まる。
なぜなら、物の値段を変えて値上げするようなことをすると消費者は敏感に反応しますが、内容量を変えることは目立ちませんから、いきなり価格を上げることはせずに、まず、同じ値段で販売単位を小さくすることから始まるのがスタートなんです。
そして、皆さん足並みを揃えて、「値上げしましょう。」となるのが第2段階。
なぜなら、消費者にとってイメージが悪いことは、「みんなでやれば怖くない。」ことですから、何かのきっかけで、一斉に行われる。
それは多分、消費税の値上げがきっかけになるんだろうなあ、と考えるわけですが、現在の5%から8%になることがきっかけになるか、それともその次に10%になることがきっかけになるかはわかりません。
ただ、一つだけ言えるのは、物の値段が上がる前に、「あれっ? この商品、最近何だか小さくなったんじゃない?」と思えるようなことが身の回りで起き始めたら、インフレの時代が始まったということなんです。
(つづく)