いくら休眠中とはいえ、時には更新しないと世の中から忘れ去られてしまう危険がありますから。
ということで、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく 行ってみましょうか。
本日のタイトルは、「いすみ鉄道 危機一髪!」
危機一髪とか間一髪という言葉がありますが、この「一髪」というのは、髪の毛一本の差という意味で、危機一髪とは髪の毛一本の差で難を逃れたという意味です。
「ファイト一発!」の一発とは根本的に意味が違うわけですが、では、いったい、いすみ鉄道が、何が髪の毛一本の差で難を逃れたかというと、それは自然災害であります。
10月20日に伊豆大島に大きな災害をもたらした台風26号は、茂原市内やその他の地域でも大規模な浸水被害が起きるなど、房総半島にも大きな爪痕を残しました。
皆様ご存知のように、房総半島にはJR久留里線、小湊鉄道線、そしていすみ鉄道と、昭和の面影を今に伝える非電化のローカル線が3路線走っていて、かつて昭和40年代には気動車王国と呼ばれた千葉の鉄道の面影を今も垣間見ることができる地域として、全国の鉄道ファンから注目を集めていますが、そのうちの2路線、JR久留里線と小湊鉄道線が台風の豪雨により大きな被害を受けて、一部区間が今も不通(※)になっているのです。
(久留里線、小湊鉄道関係者、沿線の皆様には心よりお見舞い申し上げます。)
※久留里線は間もなく復旧工事が終わり、14日の始発から平常運転に戻ります。
通常、台風の風や雨などに伴う被害は、太平洋側に集中しそうですが、今回の台風26号の場合は、どういうわけか太平洋側、つまり外房線から分岐するいすみ鉄道ではなくて、房総半島の分水嶺を越えた内房側の久留里線と小湊鉄道線に被害が集中した結果となりました。
湿った空気が山に当たって雨雲ができ、その地域に豪雨をもたらすのですが、それが内房側だったということになり、久留里線や小湊鉄道線では災難でしたが、このことが、逆にいすみ鉄道にとって危機一髪であったと思うのです。
もちろん、いすみ鉄道沿線でも大雨により雨量計の数値が基準値を超えましたので、列車の運転を一時ストップするなどの事態は発生しておりますが、線路設備等に対する被害は一部区間で倒木があった程度で、大きな被害を免れました。
昨今では異常気象ということで、毎年のように全国各地で自然災害が発生し、今年も信楽高原鉄道で橋脚の一部が流され、今、バス代行が行われ、復旧を急いでいる状況と聞いておりますが、今回の台風26号が久留里線と小湊鉄道線に与えた被害の大きさを見ると、もし、同じような被害がいすみ鉄道で発生したら、予定外の莫大な復旧工事費をねん出するだけの内部留保もありませんから、お手上げ状態になることは目に見えているわけで、そう考えると、「皆様、いすみ鉄道はいつまで走っていられるかわかりませんよ。」と私の口から言ったとしても、決して脅かしでも脅迫でも責任放棄でもないということはご理解いただけると思います。
幸い、久留里線も小湊鉄道線も現在復旧工事を急いでいるようですが、例えば久留里線の場合は、駅中や新幹線などで大儲けをしている会社の路線ですから、できるかできないかではなくて、その気になるかならないかだけの問題ですし、小湊鉄道線も高速バス路線網が充実している黒字会社ですから、厳しい状況とはいえ、何とか復旧工事が可能なのだと思います。
でも、いすみ鉄道の場合、そういう収入減がありませんから、簡単な話、売店でせんべいやもなかを売っている程度では、何かあった時にはお手上げなのは目に見えているのです。
鉄道ファンには興味深い習性があります、
それは、時刻表を見るだけで行ったつもり、乗ったつもりになって旅行気分を味わえること。これはある意味素晴らしい特技だと思います。
私のところにも、「今度乗りに行きます。」「いつかきっと乗りに行きます。」というメッセージが届きますが、私は、そういうメッセージはいすみ鉄道に対する応援メッセージだと解釈することにしています。
なぜなら、来る人はすぐにでも来るし、来ない人はいつまでたっても来ないから。
キハ52やキハ28が今でも田園地帯を走っているということは、理解できる人にとって見れば現代の奇跡に相当することなのですが、時刻表や雑誌記事、インターネットなどを見て、「ああ、いいなあ。」と思うだけで、「いつか行ってみよう。」と思っているだけでは、来ない人は来ないわけで、でもやっぱり私としてはこのあたりでもう一度宣言しておく必要があると思うのです。
「来るんだったら早くした方が良いですよ。」と。
なぜなら、今回の台風を見てもわかるように、危機一髪、間一髪のところで難を逃れているわけですから、いすみ鉄道だって明日は我が身であることは間違いないし、それはいすみ鉄道に限った事じゃなくて、日本全国のローカル線がそういう状況に置かれているということなのです。
私が育った昭和の時代には、SLブームというのがあって、例えば陸羽東線のC58が今話題の「あけぼの」の迂回列車を引いたり、五能線のハチロクが貨客混合列車を引いていたり、函館本線の五稜郭にはD52がたくさんいたり、石北本線では夜行の急行「大雪」をC58が引いていたり、宗谷本線のさいはて鈍行は流線形改造のC55だったりと、まだまだ全国でたくさんの味のある列車が走っていました。
当時中学生の私としては、今とは時代が違いますからなかなか行けない事情があったのですが、それでも、時刻表を見ながら、「今ごろ走ってるんだろうなあ。」なんて思ったりして、行動に移さなかったのです。
そうしたら、そのうちすべてなくなってしまったという苦い経験がありますから、今、いすみ鉄道でキハ52とキハ28が走っているなんてことは、今の若い人にしてみたら、私の時代である昭和50年頃までC58が定期急行を牽引していたのと同じか、それ以上の奇跡でしょうから、来るんだったら早くした方が良いですよ、というのが率直なアドバイスなのです。
私の仕事は、いろいろなやり方があると思いますが、例えば、観光列車を走らせたり売店を充実させることは、日々、会社としての営業を継続させるために必要なことですが、それだけではいざという時に対応できませんから、できるだけ早い時期にいすみ鉄道が地域にとって貢献しているということを皆さんにご理解いただいて、たとえ災害に見舞われたとしても、地域の皆様から「何とか復旧させるぞ。」と言っていただけるような鉄道にしていくということも大事なことなのです。
台風の季節は終わったようですが、このところ地震だって頻発しているし、それも〇〇沖といった海で起きるのではなく、だんだんと内陸部に震源地が移ってきているのが不気味です。
だから、いすみ鉄道だけでなく、いつどうなるかわからないのが日本のローカル線ですし、それがまた人生というものなのかもしれません。
そうでも考えないと病気になりそうですからね。
あっ、もう十分病気になってるわ。
この光景、昭和ではありません。
今年のいすみ鉄道です。
とりあえず、私の口から言えることは、こういうシーンの価値がわかる人だけお越しください。
ということですね。
これから紅葉、そして冬枯れの、何とも情緒ある季節に入ってまいります。
(いすみ鉄道ファンブログより。tassさん、写真借りたよ。)
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