全日空が新型旅客機、B787の導入を開始しました。
国内線に就航するのは最初は羽田から岡山、広島便のようで、初便の航空券が発売から数秒間で売り切れたとニュースで言っていましたが、新しい飛行機が就航すると、私もいつも乗ってみたいと思います。
B787やB777は双発機と呼ばれるエンジンが2つの機体です。
この機体は経済性に優れ、双発機は今や時代の主役ともいえる飛行機です。
私が航空会社に入った1980年代当時はB747ジャンボジェットの全盛期で、それも、初期型の100型と200型と呼ばれる2階席があまり大きくないタイプが主力機でした。
その後、300型、400型と進化した機種が登場して、働く側として、その全部とお付き合いさせていただきました。ですから個人的には飛行機といえばB747ジャンボジェットという世界を歩んできましたので、ジャンボのことなら何でも解る。最大離陸重量396890kgなんて数字が今でもそらで言えるほど長い付き合いをしてきましたので、双発機が主流となった現在は、隔世の感があります。
4発のジャンボジェットと、双発のB777、B787の間に、3発機という飛行機が多数を占めていた時代がありました。
1970年代から90年代にかけてのことです。
この3発機というのはエンジンが左右の翼と胴体後方の尾翼の付け根あたりについているタイプの飛行機で、2つの航空会社を経験している私は、20代のころから、B727、DC10、L1011トライスターと、やはりいろいろ経験させていただきましたが、エンジンの性能が上がり、信頼性が増すにつれて、双発機に取って代わられてしまい急速に姿を消してしまいました。
この3発機がどうして登場したのかというと、それはアメリカ本土からハワイに行くため。
つまり、海の上を越えて飛行するためには、エンジンが2つの双発機では1発トラブルがあった場合に不時着するところがないために、3発なければ洋上を飛行してはならないという法律があった時代の話です。
何しろ双発機ではエンジンは2つしかないのですから、1発トラブルで止まったら即緊急事態宣言をして最寄りの飛行場に緊急着陸をしなければなりません。
その当時のルールでは、双発機の場合、エンジンが1発停止したら60分以内に緊急着陸しなければならなかったのです。
3発、4発の飛行機では1発停止しても他に異常がなければそのまま目的地まで飛行しても問題ありませんので、これが双発機の弱点だったのです。
だから、アメリカ本土からハワイに行くためには、双発機ではたとえ燃料が足りて航続距離的に飛行できたとしても、お客様を乗せては飛行してはいけなかったのです。
何しろ、飛行機王国のアメリカにとっては本土からハワイというのは国内線なわけで、その国内線を飛ぶというのはある意味輸送の基本ですから、B727というベストセラーとなったナローボディー機(客室内に通路が1本の飛行機)に続いて、ダグラスのDC10やロッキードのL1011トライスターといった3発ワイドボディー(客室内に通路が2本)の飛行機が誕生したわけです。
ところが、時代が変わり、エンジンの性能が上がって信頼性が当時とは比べ物にならないほど向上すると、双発機でも海の上を飛んでも良いのではないか、という議論が出始めました。3発機より双発機の方が整備も楽ですし燃費も良いのですから、航空会社としては、洋上を飛行できるのであれば、3発よりも双発の方がありがたいのです。
そこで、誕生したのがETOPS(イートップス)という考え方。
英語をそのままいえば「Extended-range Twin-engine Operational Performance Standard」
日本語で言うとしたら、「双発機運用拡大基準」 とでもいいましょうか、要するに双発機で1発エンジンが停止した場合、緊急着陸をしなければならない時間を、それまでの60分から120分に伸ばしましょう、という基準ができたのです。
120分以内に緊急着陸すればよいということになれば、上空の風向き等を考慮に入れなければ、簡単に言えば4時間かかる海の上を双発機でも飛行できることになります。
これで、双発機の利便性がぐっと増したのです。
さらに、このETOPSでは、航空会社が双発機を運航していて、ある一定の期間、エンジントラブルなど重大な異常事態が発生しなければ、緊急着陸までの時間をさらに伸ばして180分にしても良いですよ、という運用拡大が行われました。
日本でも10数年前にB777(トリプルセブン)が就航した当時は、もっぱら国内線で飛んでいましたが、そのうち中国路線を飛び始め、今ではアメリカやヨーロッパ線など、12時間以上かかる路線にも就航するようになったことも、運航の実績を付けて、ETOPS180分ルールまで拡大していったことの現れです。
これが、B777や今回就航するB787がB747を引退に追い込んでいる主な理由なのです。
だけど、わたくし的にはどうも腑に落ちない点がある。
それが、このETOPS180という考え方なのです。
まあ、偉い人たちがみんなで考えた規則ですから、部外者の私がそれに文句をつけるつもりは毛頭ありませんが、過去の事例を盛る限り、万全とは言い難いと個人的には考えているのです。
(つづく)
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