外資系への就職について

私のところへは毎日のようにメールや手紙が来ます。
いすみ鉄道に対するご意見はもちろんのこと、私の考え方と自分の考え方が一致しているとか、食い違っているとかといったことや、こういうビジネスプランはいかがか、というようなことまで、盛りだくさんの内容です。
そういうお手紙やメールに対しては、私は就任以来、お返事をお出ししないポリシーです。
世の中には色々な人がいるのですから、いろいろな意見があって当然ですし、どの考え方も、その人なりに一生懸命でしょうから、尊重します。
そして、そういう考え方を手紙やメールで送られるのも構わないと思います。
私は一応すべてに目を通しているつもりですし、参考にできるものは参考にさせていただいております。
ただし、「返事をくれ」というのはどうかと思いますし、意見を求められても、私の考え方は基本的には変わりませんので、時間も無駄ですから、お返事を書く必要性を感じないのです。
そんな中で、先日、気になる手紙がありました。
次のような内容です。
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私は以前に外資系の会社に派遣社員として勤めていました。・・・あることがあってから、外資全体をとても信用できなくなってしまい、働く意欲がわかなくなっています。・・・この程度のいい加減さは外資では普通のレベルであって、我慢しなければならないことなのでしょうか。
過労死をはじめとした同世代の社員の過酷な扱いを耳にするにつけ、会社不信を抱いていることから、正規雇用を避け、非正規雇用を選んで働いてきました。転職も4~5回しました。外資にかかわる仕事にもう一度就こうという前向きな気持ちよりも、業界への不信感が大きく締めている状態です。
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30代半ばの男性のようです。
私が外資系航空会社に勤務していたから聞いてきたのかもしれません。
ご本人が何を迷っているかよくわかりませんが、外資系だからといっていい加減なところとは限りませんし、日本の会社だからといって、きちんとしているとも限りません。
要は、その会社がどのような理念を持っているかということではないでしょうか。
「仕事を通じて広く社会に貢献する」とか、経営者にはビジョンがあるのが普通だと私は思います。
中には「お金になれば、儲かれば何でもよい」というビジョンの経営者もいると思いますが、その会社がどういう方向性で、どのようなビジョンを持って経営をしているかということをまず考えるべきで、外資系とか日本の会社とかいうのは、あまり気にする必要はないのかと思います。
もう一つの考え方としては、外資系企業というのは、基本的には営業拠点として日本に来ているわけですから、どうしても数字を求められる仕事が多くなると思います。
会社の中には、総務や人事、広報やマーケティング、研究開発など、いろいろな職種があると思いますが、外資系の会社では営業部門がほとんどで、日本IBMのような大きな会社でもない限りは、経営方針を決めるような仕事などはないのが普通です。
また、外資系の会社には「あなたは学卒の幹部候補生」「君は中途採用だから上へは上がれない」というような考え方はあまりないと思います。
私は航空会社出身ですが、前の会社には中途採用で30歳で入りました。
新卒で同じ会社に入った同僚もいましたが、結局、使える奴だけが上に行くという合理的なシステムで会社が動いているのを感じました。
どんな良い大学を出ても、レールが敷かれているわけではないのが外資系の良いところ?かもしれません。
私がいたのは航空会社ですけど、航空会社というと聞こえがいいのは日本だけかもしれません。
欧米人は大学を出てわざわざ航空会社に就職する人はあまりいませんからね。
欧米ではエアラインに勤めてるというと、気の毒そうな、かわいそうな顔をされるのが普通です。
日本や東南アジアなどの途上国では大学を出て航空会社に入るのがステータスがあると思われているのが一般的かもしれませんが、欧米ではそうではありません。
そう考えると、一口に外資系といっても、欧米資本の会社もあれば、アジアやインドなどの会社もありますから、それぞれの国ごとに考え方に特徴があると思います。
私が、この相談者の考え方で気になるのは、基本的に会社というものを信用していないところ。
会社が信じられないから正社員にはならないで派遣で働いてきた、というのもよくわかりません。
今はとても就職難の時代で、何十もの会社を受けても採用されない人が多くいますから、正社員になれるかどうかよりも、とにかく仕事を見つけることが大事だと思いますが、だからといって自分を安売りする必要はないでしょう。
でも、働く側が、会社が信じられないということがあるとすれば、会社の方も、この人信用できないかも、ということもあるでしょう。
どちらも基本的に相手を信じることから人間関係は始まると思いますから、会社の理念が理解できて、この会社で働こうと思ったら、まずは自分から会社を信用しなければ、会社はとてもじゃないけどあなたを信用しないでしょうし、重要な仕事を任せることもしないと思います。
世の中には構造というものがあります。
その社会の構造を理解しないと、いくら頑張っても這い上がることはできません。
そういう状況を理解しないで、世の中が、会社が信じられないといっても、結局は自分の内面との戦いなのです。
私は学生結婚をしました。
両方の親にも反対され、周りに味方がいなかったので、誰も頼れることができない状態でした。
学校もろくに行かず、一生懸命時給のバイトをして、当時の手取りは2人で15~6万。
家賃38000円のアパートに住んで、銭湯に通いながら、いろいろ考えました。
世はバブルの前夜。
毎年うなぎ上りに物価は上がり、給料は物価についていくのがやっとだった時代。
少しも贅沢などできません。
都内でしたが、駅からアパートまで徒歩25分。
バス代が200円。
そのバス代を3日間節約して、駅前の不二屋で2歳になったばかりの子供にケーキを買って帰るのが幸せ感を味わえる唯一の瞬間でした。
その時に考えたのが社会の構造ということ。
どうしたら這い上がれるか。
毎日そればかり考えていました。
構造というと解りづらいかもしれませんが、当時の私の頭の中にあったのは、アダムスミスの言葉。
「金貨でワインが買えるのならば、ワインで金貨が買えるはずだ。」
つまり、お金があれば好きなものが買える。
ということは、
皆が欲しがるものを提供できれば、お金が手に入るということ。
時給で働いている人は、いくら時給が高くても、1日の時間は限られているから、当然収入も上限がある。
だから、そういう仕事は、収入的にはいずれ頭打ちになる。
そうならないためには、労働集約的な作業を伴う仕事はするべきではない。
たとえ弁護士になったとしても、1日に相談できる件数には限界があるから、収入にも限界がある。
というようなことを、毎日真剣に考えていましたよ。
25~26歳のころです。
だから、体の調子も良くなくて、体重も今より30キロもやせていたのです。(笑)
まあ、そんなことはどうでもよいとして、人生について悩むのは今も昔も全く同じ。
この相談者も一生懸命悩んでいるのでしょうが、違うのは、今の人はとりあえず食えるということでしょうか。
団塊の世代の親がいれば、とりあえず住むところがある人がほとんどでしょうし、バイト人生でも、とりあえず食える。
だから、とりあえず食えるというところがスタートラインで、そこから悩み始めている。
私のように、オヤジが事業に失敗して、身ぐるみはがされて、それでも生きていかなければいけなかった人種は、おそらく幸せの理想が、今の人と比べて、とてつもなく低いところにあるので、とりあえず、食っていくためにはどうすればよいか、ということで悩んでいる。
だから、とりあえず食えれば、それがほとんどゴールでもあり、幸せなのかもしれません。
私のかつての同僚には、1年に2~3回、休暇を取って海の向こうまで飛行機に乗って買い物に行かなければ自分は幸せでないと思っている人も少なからずいましたが、私は「仕事の後の1杯の焼酎がうまい!」
これが一番幸せだと思っていますから、意外と簡単に幸せが手に入るのです。
ということで、いすみ鉄道では、現在、総務課のスタッフを募集しています。
私と、これ以上の話がしたかったら、どうぞ履歴書を出してみてください。
面接しますよ。
ただし、指示待ち型の人間は、いすみ鉄道では仕事がありませんので、そこのところ、よろしくお願いします。
市原のSさん。答えになったでしょうか。