NPO法人 観光立県フォーラム

千葉県の観光振興を進める目的で活動しているNPO法人 「観光立県支援フォーラム」。
昨日、この勉強会に講師として招かれて行ってまいりました。


テーマは「観光鉄道創生への挑戦」。
いすみ鉄道の取り組みや地域とのかかわりを、観光マイスターを目指す皆様方の前でお話しさせていただきました。
私は、いすみ鉄道を地域密着型の鉄道として観光鉄道化し、地元の乗客の皆さま方からの運賃収入で不足する部分を、観光客の皆様にいらしていただくことで補おうと考えて活動しています。
地元の人たちも、日常の生活の中で鉄道を利用することはできないけれど、鉄道を目的にいらしていただく観光客におもてなしをすることならいすみ鉄道に協力できるということで、ムーミン列車応援団の皆さま方のような活動があるわけです。
鉄道というのは本来は目的地へ行くためのものでありますが、ローカル線ではその本来の目的だけでは存続できない。そこで観光鉄道となるわけですが、観光鉄道とは目的地へ行くために乗るのではなく、乗ることそのものが目的になる鉄道なのです。
いすみ鉄道も観光鉄道として考えた場合、ムーミン列車やキハ52に乗るために夷隅郡市を訪ねてもらうわけです。
だから、鉄道があれば、地域に人がやってくるようになるし、やってきた人を地域がうまく取り込めるようになれば、地域が活性化するのです。
私が都会の皆様に「どうぞ自家用車で来て下さい。」と言っているのはそのためで、いすみ鉄道を目的にいらっしゃるのでしたら、高いお金を払って遠回りとなる外房線で来る必要はないのです。
鉄道で来て下さいと言うと、来ようかなあと思っている人のハードルが高くなってしまいますから。
さて、地元に目を転じてみるとどうでしょうか。
先日、ある人がこんなことを言っていました。
「サーファーはいっぱい来るけど、経済効果がないからなあ」と。
私は、違うと思います。
たくさん来てくれるサーファーを自分たちの商売にお客様として取り込むことができないのです。
時代が変われば嗜好も変わる。お客様の客層も変わります。
40年前の海水浴客を相手にしていたのと同じスタイルの商売のやり方では、新しい時代のお客様を取りこむことができません。
「高速道路が出来て便利になったら、皆、日帰りで帰ってしまうようになった。」
これも違います。
房総半島には泊まってみたいと思わせるような宿泊施設がほとんどないのです。
房総半島の宿泊と言えば昭和30年代の海水浴全盛時代から今に続くまで 「民宿」 に代表される簡易な宿泊施設。
鉄道もそうですが、さばききれないほどお客様がいた時代は寄せ集めの車両で大量輸送をやっていれば良かったのですが、今はそれでは誰も乗ってくれないわけです。
渋滞さえ考慮しなければ、自家用車の方がはるかにフレキシブルで快適ですから。
だから乗ってみたいと思わせるような車両を走らせなければだめなわけで、泊まってみたいと思わせるような宿泊施設がなければだめなんです。
民宿じゃガールフレンドが一緒に来てくれませんからね。
房総半島は温暖な気候と豊富な海産物や農産物に恵まれ、ヨウ素や天然ガスなどの地下資源も豊富です。
首都圏という大消費地を控え、とても恵まれた環境にあるのです。
簡単に言うと、永年にわたりそれら資源を東京に輸出することで生計を立ててきた資源輸出国なのです。
豊かな資源に恵まれている房総半島は大都市で生活している人たちから見ればうらやましい地域ですが、世界を見ればわかるように、資源輸出国はいつまでたっても後進国じゃないですか。
房総半島が垢ぬけていないように感じるのはそのためなのです。
裏を返せば、だから房総には今でも自然がたくさん残っている。昭和の田舎の風景が残っているのです。
私は、これをツールに観光鉄道としての再生を考えているわけですが、時々、残念に思うことがあります。
それは、住んでいる地元の人たちがお客様として取り込む都会人の好みや嗜好を全く理解していないことです。
海岸沿いにある食堂で新鮮なお刺身を食べた時のことです。
びっくりするようなおいしいお刺身が安価で出てきます。
ところが添えられているワサビが粉を水でといだ練りワサビ。
醤油も刺身醤油ではありません。
チューブのワサビでもよいから、本わさびを添えてほしいと思いませんか?
私からしてみるとせっかくの刺身が台無しです。
山の中の食堂に入ると、山菜、タケノコ、アユ、イノシシのメニューしかありません。
30分走れば海岸線なのですから、観光客をターゲットにするなら新鮮な海の幸を出した方が良いと思いますが、
「ここは山だからねえ。魚が食べたければ勝浦へ行け。」
と言われているような商品構成です。
都会から房総半島にやってくる目的の一つがシーフードなわけで、勝浦や南房総まで行かなくても、手前の山の中でシーフードを食べられるお店があれば、観光客は立ち止まるわけです。そして、そのメニューの一品に山の物を添えれば地域を主張できるのです。
ところが、イノシシが食べたくて立ち止まる人を探すとなると、マーケットはかなり狭くなる、つまり素通りされてしまうのです。
自分たちの主張。
「ここは山の中だから、山の物しか出さない。」というようなことは、地域がブランド化できて初めてお客様が耳を傾けてくれること。
地域をきちんとブランド化せずして、田舎の人間の主張は都会人には届かないのです。
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と、昨日はこのような内容のお話をさせていただきました。
都会の皆さん。
菜の花はもうすぐですよ。
飛行機に乗って地球の反対側へ行く時代ではありません。
日帰りのふるさとを楽しめる房総半島へいらしてください。
地元の皆さん。
観光客を迎え入れる準備は出来ていますか。
自分たちに何ができるかを考える前に、観光でいらしていただくお客様は何を望み、何を欲しがっているのかをよーく考えてくださいね。
観光地というのは時代の流れに合わせられないと、すぐに寿命が来てしまいますよ。