いすみ鉄道の新形式導入について

9月8日の千葉日報で報じられておりますように、いすみ鉄道では現在、新形式車両として、JR西日本の大糸線で活躍しておりましたキハ52型を導入すべく手続きを進めております。
千葉日報の記事
現時点では現車がいついすみ鉄道に来るかなど、全く未定の状況です。
何しろ古い車両のため、この車両導入にはクリアしなければならない問題がたくさんあり、課題が山積している状態です。
車両1つを取ってみても、輸送方法、警備、申請手続き、保安基準のクリア、バリアフリー対策、車両検査、それらに伴う各種書類の準備など、難しい問題だらけです。
また、資金的な問題も大きく、今後、ファンの皆様へ、募金、協賛金などをお願いすることになると思います。
ただ、如何に大きな問題があろうとも、私はいすみ鉄道の社長として、何とかしてこの車両をいすみ鉄道に導入するという強い意志を持っております。
きっと皆様に喜んでいただけると思いますし、いすみ鉄道の業績改善につながると確信しております。
どうぞ皆様、温かい目で応援してくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
なお、正式な時期等につきましては11月以降にプレス発表を行う予定ですので、本件に関しましての弊社及びJR西日本へのお問い合わせは固くお断り申し上げます。
皆様のご協力をお願い申し上げます。
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【社長解説】
なぜ、キハ52なのか。
私が子供のころ、房総半島は気動車(ディーゼルカー)天国と呼ばれていました。
西千葉に関東最大の気動車区(ディーセルカーの車庫)があり、千葉発の普通列車はもちろん、新宿、両国からの房総、総武方面への急行列車はディーゼルカーの列車が長編成を組んで走っていました。
当時の列車は、窓が開く向かい合わせのボックスシートで、冷凍ミカンやお弁当を食べながら汽車旅を楽しんだものです。
私は、いすみ鉄道に観光列車を走らせるにあたり、乗る人みんなが楽しんでいただける 「窓が開く向かい合わせのシートでお弁当を食べられる車両」にこだわりました。
ただし、他の鉄道のように観光列車を新造したり、大きな改造をしたりする金銭的な余裕はいすみ鉄道にはありません。
会社の資金的には手も足も出ない状況にあります。
今回のキハ52導入に係る総予算は約3000万円。
1両1億5000万円と言われる新造車両から見れば破格の値段ですが、それでもいすみ鉄道にとっては大きな買い物です。
現時点で、すでに予算が500~600万円ほど不足する状態です。
3000万円という金額は、個人的には大きな金額ですが、鉄道会社が一つのプロジェクトを進めるにあたっての金額としては、大きいとは言えません。
でも、沿線市町がコストをコントロールしているいすみ鉄道には、それだけの資金的余裕もないのです。
私は個人的に付き合いのある銀行に相談しました。
その銀行員も 「それだけの金額で、観光の目玉になるような車両を導入できるのですか? 都内に中古マンション1つ買うようなものですよ。」 と言われましたが、彼が言う 「それだけの金額で」 がいすみ鉄道にとっては大きな壁なのです。
でも、私は意を決しました。
なぜなら、今、このチャンスを逃したら、2度と手に入らないからです。
私が日ごろから考えていること、それはお金がなくても幸せになれる方法です。
いすみ鉄道沿線には何もありません。
自然の里山が、渓谷があるだけです。
その中をオンボロのディーゼルカーがガタゴト走る姿。
それを再現することで、皆さんに喜んでいただきたいと考えています。
窓が大きなかっこよい観光列車を走らせることはできません。
出来合いの観光地を作ることもできません。
ただ、昭和の鉄道を再現することは可能です。
キハ52はそのための主役なのです。
1両のディーゼルカーが1日どれだけのお客様を運べるか。
それによる運賃収入はいくらかを計算した場合、会社の業績が飛躍的にアップするというものでもないと思います。
この話を聞きつけてやってくる鉄道ファンも多いでしょうが、過去の事例から見ると10人のうち8人までは、ただ写真を撮るだけで、会社の売り上げにはなんら貢献しないかもしれません。
でも、私はそれでも、いすみ鉄道沿線に観光客が来てくれればよいと思います。
自分のカメラを自慢しながらマイカーでただ鉄道の写真を撮りに来るだけであっても、マナーを守って行動していただければ、私はそれで良いと思います。
(もちろん、記念切符やお土産品を購入していただければありがたいですが)
鉄道が走っているというだけで、シーズンにこだわらず、通年型の観光資源であるということが証明できるからです。
ローカル線があれば、多くの人が幸せになれるということ、そしてそれが路線の存続につながれば、それで良いのです。
私は自分自身が鉄道ファンです。
その1鉄道ファンが鉄道会社の社長にしていただいたのですから、その分、鉄道ファンやローカル線ファンをはじめとする多くの皆さまへ恩返しをしたいと考えているのです。
それにしても行く手に立ちはだかる資金ショートという大きな壁。
今後、皆様にも大きなお願いをすると思いますが、国鉄時代の木原線を再現するという夢の実現のため、手を貸していただけることを期待しております。
皆さま、どうぞよろしくお願い申し上げます。