前原国土交通大臣にモノ申す。

どう考えても納得ができません。
地方鉄道の疲弊、特に、国鉄から引き継いだ第3セクター鉄道について、国が積極的に再生させよう、支援しようという姿勢が全く見受けられないのはどうしてでしょうか。
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国鉄が赤字だから、採算が取れないローカル線を切り捨てて、輸送量が多い幹線部門だけを残し、民営化して、黒字化する。という話が今から25年ほど前に話題になりました。
国鉄の路線のうち、採算の合わない路線を「地方交通線」に指定して、廃止対象としたわけです。
当然、地元からは猛反発が挙がりました。
本当に「採算が取れないのか?」という検証もされないままの廃止論議。
ワンマン化もせず、減量運転もせず、「めんどうだから」 「お荷物だから」という態度がありありと見てとれた廃止行為でした。
私は大学生でしたから、学生なりにいろいろ調べました。
当時の国鉄の収入計算方式はこうです。
例えばいすみ鉄道の前身である国鉄木原線。
大原から上総中野まで、営業キロは今と全く同じ。
ところが、国鉄の経営区分上、大原駅は外房線の駅とされていましたから、大原駅の売り上げは木原線利用者の乗車券、定期券、回数券を含め、すべてが外房線の収入として計上されていました。
これでは木原線にいくら人が乗っても、運賃収入が増えるはずがありません。
当時の沿線住民は、それでも、増収、増員をすれば廃止を免れるだろうと、大原駅で木原線区間の回数券を買ったり、当番を決めて用もないのに列車に乗ってみたり。実に涙ぐましい努力をしていました。
でも、結局、国鉄としては「廃止」。
住民運動で廃止決定が遅れたため、国鉄民営化後1年間はJR線として運転されましたが、
「おまえたち、そんなに残してほしいなら、自分たちで経営してみろ!」と転換交付金という僅かながらの手切れ金を渡されて、「ハイどーぞ!」
国鉄時代の木原線は、当然、廃止前提で運営してきましたから、線路の保守や点検は、転換以前から最低限のものだけ。第3セクターとしていすみ鉄道が開業した当初から、線路設備はすでに疲弊していました。
車両も、当初せいぜい10年持てば良い(鉄道そのものが)という発想でしたから、バス車体と自動車用エンジンの設計を流用したレールバスと呼ばれる簡単な構造の車両を導入。
2両編成以上お客さんが乗ることもないだろうということで整備され、開業しましたので、ホームや駅設備も高需要に対応できない状況。
これが、いすみ鉄道だけでなく、全国的に見た第3セクター鉄道の生い立ちです。
それ以来20年以上の年月が経過。
監督官庁は運輸省から国土交通省と名を変えましたが、地方鉄道に対して大した支援もしてこなかったことは、名前が変わろうが変わるまいが同じ。
私がいすみ鉄道の社長になって、内情を知るようになってからも、国交省からは、業務上の注意を受けることはあっても、設備の維持管理に対する支援は何もなし。
千葉県と大多喜町、いすみ市、御宿町、勝浦市の沿線自治体は、地元の交通を守ろうと、必死になって議会で予算化して、線路を直す経費などをひねり出す努力をしているにもかかわらず、国は全く「関係ない」という態度。
本来廃止になるはずの国鉄線から第3セクター化して鉄道を残したのは、おまえたちが自ら希望したことなのだから、せいぜいがんばんなさい! という姿勢が、20年以上経過した今でも続いていることを強く感じます。
県だって、沿線市町だって、不景気で税収が限られるうえ、これだけいろいろ中央から絞られてきている現状では、これ以上お金をかけて鉄道を維持することは、本当にぎりぎりのところまで来ています。
国として、少しは何とかするべきじゃないでしょうか?
少なくとも、上下分離の下の部分だけでも、国が時期を区切って、ある程度まとまった予算を付けて支援しなければ、何が「コンクリートから人へ」ですか。
交通というのは、人と人とが交流して通い合うことでしょう。
その意味からすれば、鉄道は、少なくてもローカル線は、コンクリートではなく「人」のはずです。
今、千葉県では、成田空港へ向かう新路線が急ピッチで建設されています。
国は、新しい路線を作るためにはいろいろと手を差し伸べているようですが、地元に密着した地方鉄道が、どこも疲弊し、立ちいかなくなっていることには目を向けようとしていないように見えてしまうのは私だけでしょうか。
新しい鉄道を建設するのは「コンクリート」。
古い鉄道を守ろうとするのは、まちがいなく 「人」 です。
今、いすみ鉄道はやっと絞り出した予算で、最低限の枕木交換作業を行って線路の保守に努めていますが、もし、万が一、線路保守を怠って、列車が脱線でもしようものなら、国交省は目の色を変えて「いったい安全管理はどうなっているのだ。報告書を提出しろ。」というでしょう。
この時とばかり、監督官庁の権威を大上段に構えて・・・・
でもねえ、そんなこと言うだけなら小学生だってできますよ。
何も偉そうな顔した役人さんじゃなくてもね。
国の政策をつかさどる役所であるならば、そうならないために事前に手を差し伸べることが、国として、とりあえず、最低限やらなければならないことではないでしょうか。
何も手を差し伸べずに放っておいて、いざ事故が起きたら「管理者としてのお前たちの責任だ!」では、国交省の存在自体も怪しくなってきませんか?
国鉄ばかりでなく、国交省そのものも民営化議論が出る時代がやってくるかもしれませんよ。
実際、私は成田空港時代に、パスポートにスタンプを押す出入国管理官(法務省職員)や手荷物検査を行う税関職員(財務省職員)に対して、空港会議で、「このような仕事は国が直接行うような内容ではなく、民営化することにより、効率的な運用が可能となる」 という意見を、航空会社代表として常に言い続けてきましたから。
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地方の交通が疲弊しています。
第3セクター鉄道には大手私鉄やJRのような高収益の都市部の幹線はありません。
良いところ、おいしいところは皆、JRとして残したわけですから、3セクは最初から採算が合わないところだけなのです。
他の私鉄のように関連事業を強化して収入増を図ることも容易ではありません。
バス部門を持とうと思えば、地元のバス会社が黙っていないでしょう。
不動産部門を持とうと思っても、地元の不動産組合が目の色を変えて反発するでしょう。
スーパーを開こうにも、地元の商店会が黙っていません。
比率はともかくとして、第3セクターは地元の自治体が出資者となっている以上、地元が反発するようなビジネス展開は一切できないのです。
こういう現状があるにもかかわらず、高収益部門がないのに、国鉄から引き継いだ古い線路を、すべてその地方に任せっきりにしておくのは、「何の治療もせずに自然死を待つだけ」にしているとしか思えません。
そういう状況に追いやっておいて、「国交省も応援しています。頑張ってください。」じゃ、あまりにも無責任ですよね。
今までのローカル線の運営では将来展望が開けなかったかもしれません。
でも、地方鉄道もこうやれば存続できる、地域と共に発展の可能性があるということを、いすみ鉄道が、私が社長として身をもって示しているわけですから、新線ばかりでなく、既存の疲弊した地方鉄道にも予算を付けて、一度、きちんと整備させることをしても、決して税金の無駄遣いにはならないと確信しています。
何なら、事業仕訳でねん出した埋蔵金から、とりあえずいすみ鉄道に10億円でいいですから、予算を付けてみませんか。
1~2年お時間をいただければ、国民のだれもが納得できる姿に、素晴らしく発展させて見せますから。
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私は佐倉市に在住しています。
ここには、昔、佐倉宗吾郎という人材がいました。
お上にモノ申すとどうなるか、佐倉宗吾郎の歴史が示しています。
それを覚悟で、ついに言ってしまった!
あーあ、自社養成運転士に続き、またしても国交省から目を付けられる会社になってしまいました。
前例のないことをやらなければいすみ鉄道のような弱小鉄道は再生できないということは誰の目にも明らかなこととは言え、前例のないことを極端に嫌うお役所からは、私の就任以降、不良少年のように目を付けられているというのに。
国交省からの電話に肩身の狭い思いで出るのは、いつも鉄道部長。
大手私鉄やJRのような普通の鉄道会社なら「絶対に」国交省にモノ申すことなどないのにねえ。
「社長が鉄道業界を知らないバカ者ですから、どうぞお許しください。」
そう言ってかわしてくださいね。
川上さん、すみません。