カレーライスかライスカレーか

子供のころの話で恐縮です。
私が子供のころというのはもう50年以上前のことで、そうですね、新小岩機関区に煙が立ち上っていたころと言えば鉄マニの皆様方にはわかりやすいと思いますが、その頃のある日、父と一緒に食堂に入りました。

食堂というのは蕎麦屋でもなくラーメン屋でもなく洋食屋でもなく、食堂。
つまり、当時街中によくあった日本蕎麦も中華もオムライスも出す、今ならさしずめファミレスのような、でも、オヤジさんが鍋を振ってる感じの個人営業のお店です。

で、父はカレーを頼みました。

「ライスカレーください。」

すると、ウエイトレスのお姉さん(ウエイトレスと言えばお姉さんですが、あえてお姉さんと付け加えましょう。つまり集団就職で出てきて数年ぐらいの若い人)が、

「カレーライスですね。」

と言いました。
すると父は

「ライスカレー」

と言い返します。

お姉さんはプイッと膨れたような顔をして「カレーライスお願いします。」と、奥の厨房へ向かってそう言いました。

私は小学生でしたが、父がウエイトレスさんをからかっているような、いちゃもんを付けているような、そんな気がして少し恥ずかしくなりました。
当時、父は30代半ばぐらいでしたが、男の子というのは父親のことをすごい人だと思っています。そのすごい人が、ウエイトレスさんにいちゃもんを付けているようで、今でも記憶しているぐらいですからよほど恥ずかしかったんでしょうね。

ずっとずっと後の世になって、インターネットが発達してから私はふと思い出して調べてみたのです。
カレーライスとライスカレーの違いを。

そうしたら出ていました。
カレーライスとライスカレーは別のものだと。

カレーライスというのはご飯だけをお皿に盛りつけてあって、カレーのルーがソースポットなど別の入れ物に入って出てくるもので、ライスカレーというのは1つのお皿にカレーと御飯が一緒に盛り付けてあるものだと出ていたのです。

私は焦りました。
なぜなら、半世紀以上前の出来事は父が正しかったからです。
ウエイトレスにいちゃもんを付けていたとばかり思っていた父の行動が、実は間違っていなくて正しかったのです。
昭和の時代、街中の食堂のカレーはソースポットに別に入れて出されるものではなくて、当然のようにご飯とカレーが一つのお皿に盛り付けてあるもので、それも、今のように半分がご飯、半分がカレーというような盛り付けではなくて、平たく盛られたご飯全体にカレーがかけてあって、その上に数粒のグリンピースがのっかっていて、大人たちはカレーの上から中濃ソースやウスターソースをかけて食べる、つまりはカレーライスではなくてライスカレーだったのです。

先日、久しぶりにソウルの街を歩いていた時のこと。ちょうど昼時だったのですが、さて何を食べましょうか。唐辛子の韓国料理は食べたくないし、かと言って蕎麦屋やうどん屋、さらにはハンバーガーショップに入る気にもなれなかったので、「何にしようかな」とぶらぶらと考えながら歩いていたのですが、ふと、あるお店の前で私は足を止めました。

そこはとんかつ屋さんで、メニューに「カレーカツ」と書いてありました。
カレーカツか。
きっとカツカレーのことだろう。
そう思ってお店に入ったのです。

で、そのカレーカツを頼みました。

お兄さんがテーブルの上に伝票を置いて行きました。
書いてあるでしょう。
カレーカツ定食って。

あっ、実は私、20代のころに韓国の会社に勤めていましたので、その名残りと言っては何ですが、ハングルはある程度読めるのです。
でも、ちょっと気になりました。
なぜなら、カレーカツ「定食」となっているからです。

定食? なんだろう?

一瞬不安がよぎりましたが、でもまあ、日本でもカツカレーにサラダとスープが付いてくるお店もありそうですから大丈夫だろう。
そう思って、気を取り直して待つこと約10分。
私の前に運ばれてきたのはこちらでした。

ジャァ~~ン!
とんかつの上にカレーがかかっているとんかつ定食!

全く予想もしなかった展開です。
いやぁ、そういうことだったのか。

でもまぁ、おいしかったですよ。

テーブルにはこんなボトルが置いてあって。

皆さん悩むでしょう?
なんだこれ?って。

左がキャベツ用のドレッシングで右がとんかつソースね。
せっかくなのでカレーがかかっているとんかつの上からさらにソースをかけてみましたが、その瞬間、私の脳裏に50年以上前に父親と入った食堂の光景が浮かんだのです。
まるでフラッシュバックのように。

そういえば父はカレーにソースをかけて食べていたなあ。

「オヤジ、疑ってごめん。」

あの時はてっきりウエイトレスにいちゃもんを付けているとばかり思って、父親をある種軽蔑していた自分でしたが、こんなところで思い出させてもらったのでありました。

ご飯を食べた後は駅を散歩して、「あぁ、あの電車乗りたいなあ。」と思いながら、今回は乗れずじまいの旅でした。

いやですねえ。
爺さんになると突然大昔のことが浮かんでくるんです。
若いころから話には聞いていましたが、いざ自分の身に起こってみると、まぁ、これはこれで当分楽しめそうですから、時の流れに身を任せてみようと思います。

昨日の昼飯に何を食べたかも覚えてないくせにね。

今度、レストランで「ライスカレーください。」って言ってみようかな。

皆さんはこちらをどうぞ。
紛れもないライスカレーでございます。
年末年始の必需品ですよ。

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