東京生まれで東京育ちの私にとって、ふるさとと呼べるような町はありません。
私が育った商店街を今でも守り続けてくれている同級生には頭が下がりますので、彼らに少しでも貢献できないかと、私は年に一度ほどふるさとの街の学校で子供たちにお話しをさせていただいておりますが、東京というところは半世紀も前から原っぱなどは無くて、家とビルとに挟まれた小さな公園が私の遊び場でした。
そんな地域で育った私は、田舎の景色に強いあこがれを持つようになりました。
ちょうどそのころSLブームがあって、田舎の景色の中を走るSLの写真に「いいなあ」と思ったものです。
今思えば、南正時先生の写真だったことになりますが、道祖神があったり、刈り入れが終わった田んぼだったり、あるいはぽつんと1本立っている実を付けた柿の木だったり。
そういう景色の中を走る蒸気機関車が引く列車の写真を見て、「いいなあ」と思ったものです。
そんな私が大人になって手に入れたのは、北海道釧網本線の茅沼駅です。
このブログの読者の皆様であれば、何のことかはすぐにおわかりいただけると思いますが、ある時、釧網本線の茅沼駅の土地が売りに出ていることを知りました。
国鉄時代は有人駅で駅舎が立っていました。
その後JRになるにあたって無人駅となり、駅舎が取り壊されて更地になりました。
その土地を元国鉄清算事業団が払い下げたのです。
そして、ご縁があって私が手に入れました。
その土地に、またまたご縁があってC58の動輪を設置しました。
C58‐88号機。
四国で活躍した罐でしたが、釧網本線で最後まで走っていた機関車はC58でしたので、私は四国から北海道までこの動輪を運んで、茅沼駅の自分の土地に設置しました。





なぜ、茅沼駅かと言うと、この駅は日本で唯一丹頂鶴が来る駅だからです。
今となっては笑い話になりますが、まだ航空会社に勤めていたころの話ですが、何度も下見に行って、土地を買って、動輪も入手して四国から運び、台座を作って設置しましたので、かなりの金額を費やしたことになります。
でも、こういうことをやってみると不思議なこともあるもので、その後この地域とご縁をいただくことができまして、北海道の観光列車の企画委員にしていただいて、このような美女ともお友達になることができました。


皆様ご存じの矢野直美さんです。
そして、私は今でも毎年、冬になると釧網本線を訪ねてSLに乗って自分の駅の自分の動輪に会いに行くのです。
関東にいると冬は空っ風です。
夜、テレビの天気予報を聞いていると、
「明日は西高東低の気圧配置で、北国では大荒れの天気になるでしょう。」
などと言っています。
そんな時は北の空を眺めて、
「あぁ、俺の駅にも雪が降ってるかなあ。」
などと思いを馳せることができるのです。
ありがたいことに、今、JR北海道は冬の間SLを走らせてくれています。
その時刻が近づくと、
「あぁ、俺の駅にも今頃は汽車が来ているかなあ。」
と考えたりします。
もちろん、
「今頃はタンチョウが来ているだろうなあ」
などとも思ったりします。

これはね、実際に体験してみないとわからないことだと思いますが、北国の駅に思いを馳せる。
この、心の充足感と言いましょうか。
都会で働く皆様方にとって、一種の心のカンフル剤になるのが田舎の鉄道だと私は身を持って体験しているのです。
そんな私が、今回皆様方にお届けするのが大井川鐵道の12系客車の座席オーナー制度です。
「客車の座席に名前を付けてどうするの?」
たぶんですが、全人口の8割ぐらいの皆様方はそう思われることでしょう。
確かに、その金額を投資したところでリターンはほとんどありません。
損得勘定で言ったらやめておいた方がよいと思います。
そういう人は物の価値をお金でしか判断できない人でしょうから、いくら説明してもご理解はいただけないと思います。
だけど、心の満足というのはお金ではなかなか買えないものだと私は考えます。
食堂列車や夜行列車など、私はいろいろな鉄道商品を企画して実現してきました。
私が商品を企画立案するときに決めていることがあります。
それは、「自分だったらこの商品を買うだろうか」ということです。
価格設定もそうなんですが、自分ならお客様になるかどうか。
自分ならこの金額を出して買おうと思うだろうか。
それが私の商品づくりの意思決定ポイントです。
その私が、今回お届けするのが12系客車の座席オーナーです。
10万円という金額が高いか安いかはその人それぞれだと思います。
ただ、数百万円という金額を北国の駅の投下した私としては、
「あぁ、今頃、俺の汽車が大井川鐵道で走っているんだ。」
「よし、今度の休みに会いに行こう。」
そう思ってもらうことで、遠くに思いを馳せてる体験をしていただきたい。
なぜなら、同じことを自分でやってきた私が、自分の経験上皆様にお勧めしたいからです。
自分で買った商品が「失敗した」と思う人は他人には勧めたくないでしょう。
それと同じように、「買って良かった」と思う商品なら自信を持ってお勧めできるでしょう。
日々の生活の中で、1日が終わった夜にふと遠くに思いを馳せることができたら、私は素晴らしいと思っています。


12系客車は長年に渡って全国的に活躍をしてきました。
皆様方の心の中にもたくさんの思い出が残っていると思います。
その12系客車が、今、大井川鐵道で動態保存されます。
このことに価値を見出すことができる方は、たぶん全人口の1割ぐらいではないかと思いますが、自分の客車が今でも走っているんだと静岡に思いを馳せることができるまたとないチャンスが、今回の12系客車の座席オーナー制度なのです。
おそらく9割の皆様方にはご理解いただけないと思いますが、ご理解いただける皆様はぜひ、ご参加いただきたいと思います。
心の充足感をどう手に入れるか。
2027年12月末までの2年2か月間。
48000円の切符代を除けば1日あたり約70円弱ですからね。
皆さん、私のように遠くに思いを馳せる経験をしてみませんか?
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