大雪の影響

昨日首都圏に降った雪は各方面に影響を及ぼしているようです。

昔から東京は雪に弱いと言われていますが、雪に対する設備投資があまりできていないのですから仕方ありませんね。
冬山の装備がないのに冬山に登ろうという人がいたら、「行くな!」と止めますよね。

それと同じように、気象庁があれだけ「大雪に警戒」と言っているわけですから、無視することもできないでしょう。
過去の苦い経験から早めに規制をかけたのも理解できないこともありません。

そして、首都高速は今21時現在も多くのところで止まっています。

私は東京生まれの東京育ちですから、首都高速がどのように建設されて延伸されてきたかをつぶさに見て来ています。

例えば、板橋区の熊野町ですが、あの交差点を川越街道から山手通りへ首都高速も同じように右折しています。
90度のカーブです。

その先、東上線の手前で下から上がってきた中央環状線と合流し、さらに板橋ジャンクションでトライアングルになっていて、5号池袋線と中央環状線が分岐して、またすぐに合流します。
そして、その部分は上下2段になっているのです。

実は、あのトライアングルの真下が私のふるさと板橋2丁目。
三角形になったところの真ん中、今は高速道路で囲まれた地点が私が育った場所なんです。
私はあのトライアングルの中で育って、公園で遊んで、友達と銭湯へ行って。
小学校の帰りに駄菓子屋さんでお菓子を買ったり、自転車やさんでパンクの修理をしてもらったり。
思い出がいっぱい詰まった場所が、今は高速道路の橋の下。

だから全部知ってる。
どうやって高速道路ができたのか。

用地買収に難航して急カーブと急勾配でしのいだ箇所が首都高速にはたくさんあって、例えば大橋のジャンクションなんて螺旋階段ですからね。
ぐるぐるぐるぐる。
地下鉄よりも深い地下からビルの5階か6階まで上がって、3号線に合流するためにはいったん上に上がった道路が下がるわけです。

ランプと呼ばれる出入口は横川-軽井沢間なんて問題にならないぐらいの急勾配。

そういうところが何十か所もあって、そこに雪が降るわけです。

そして、都内を走る自動車のほとんどすべてがノーマルタイヤ。
ノーマルタイヤで雪の積もった急坂を登るとどうなるか。
もちろん登れないんですが、登れない車がそのままずるずると下がってくるんですよ。
そしてブレーキが利きませんから後ろの車にぶつかります。

まして地下トンネです。
ぶつかった車が火でも噴いたら大惨事です。

そういうことが容易に予測されますから、首都高は早めの閉鎖。

そして、除雪用の機械など雪国に比べたら貧弱ですから、回復まで多くの時間がかかるわけで、今日1日やってもダメ。
21時の時点でも、まだ多くが通行止めなのです。

つまり、これが首都東京の現実なのです。

でも、今回は鉄道の多くの路線が始発から動いています。
高速バスが軒並み運休なのに、新幹線や特急電車が動いてる。
なんとなく、いつもと逆な感じがしますね。

いつもは鉄道が先にダメになって、道路が最後まで動くんですから。

鉄道に係わる身としてはちょっとだけ優越感に浸りたい気分ですが、混乱している多くの皆様方のことを考えるとそんなことは言ってられませんね。

こういうことがあるとわかるのですが、高速道路と鉄道が競合して鉄道が負けると、「もう鉄道なんかいらない。」という議論になります。
最初に鉄道があって、そこに高速道路ができる。
高速道路は国や県がお金を出しますから、利用者は料金を払えば24時間いつでも利用できます。
でも、鉄道は鉄道会社が線路設備の維持管理をしなければなりませんし、列車には時刻というものがありますから、利用者は自分の都合よりも列車の時刻に合わせた行動が求められます。

そうなると、「もう鉄道なんかいらない。」という話になるというのが昨今のこの国の実情のようですが、私は、高速道路も鉄道も両方あった方が良いと思うのです。

両方同時に作ろうというのならどちらかにしておけとなるかもしれませんが、最初に鉄道があって、そこに高速道路ができるのですから、両方手に入るわけです。
飛行機と新幹線も同じです。

だから、両方持っておけばよいのですが、この国の議論は新幹線ができたのだからもう飛行機は要らないなどと、どちらか一つあれば片方は要らないとなる。
不思議ですよね。
それぞれ用途が違う面があるのですから、両方あった方が良いのです。

地域交通もそうなんですけど、マイカーがあればローカル鉄道は要らないとか、バスで十分だとか。
そういう議論が起きるのは判断基準がすべてお金だからなんですね。
インフラというものに赤字黒字と言い始めたころからこの国は弱体化してきたと私は思っていますが、せっかく今あるんだから、上手に使って両方維持するのが正しいインフラの使い方ではないかと思うのですが、今回の高速道路のマヒを考えると、やはりインフラにはそれぞれ得手不得手というものがあるわけですから、それぞれの特徴を活かした使い方をするのが私たち人間なのではないかと思う次第であります。

かくいう私の息子は高速道路の会社に勤めていますから、昨日今日は大変だったろうなあと思うわけで、「インフラ系は楽だから。」などとのたまわっていた彼の就活時代を思い出すと、「一生懸命頑張りなさい。」と思う父なのであります。