突然のスランプ

夕方から突然落ち込んでいます。

理由は特にありません。
ただ、何もする気が起きません。

昔、三無主義という言葉がありました。

無気力、無関心、無責任。

でも、それともちょっと違う。

自分の内面での落ち込み。
たぶんスランプ。

仕事で問題があるわけでもなく、基本的には順調。

では何かというと、強いて言うならばお家に帰れないことでしょうか。

夕方5時半、終業のチャイムが鳴りました。

「皆さん、今日はノー残業デーです。早くお家に帰りましょう。」

と係の女性がそう言いました。

「そうか、ノー残業デーか。」

皆さん、仕事を終えて家路につきます。

私も18:03発のいつもの電車に乗って高田駅に着く直前にポケットの中に何か固いものがあるのに気が付いた。

あれ?

そう、ホテルの部屋のカード。
ピッとやってドアロックを解除して、カチッと差し込むと部屋の電気が点くあのカード。

すっかり家へ帰る気分になっていた私に急に現実が訪れた瞬間でした。

そうか、ホテルか。

さて、夕飯何しよう。
コンビニだな。

ビールとつまみを数品買ってホテルの部屋に入って鏡の前のデスクに座った瞬間、あれあれ?
何か変だ。

俺は一体何をしているのだろう。

そう、今日でホテル9日目。
歩いて数分のところにあるお家へ帰れないのです。

そう思った瞬間、なんだか急に気が抜けちゃいました。

俺は一体何をしているのだろう。

63歳、単身赴任。

山中鹿之助には遠く及ばず、50年近く前に読んだ高野悦子の気持ちにもなれない。

つまり、苦労しているわけでもなく、悩んでいるわけでもなく。
ただ、なんだかわからない気持ちの落ち込み。

「困ったなあ。」

こういう時はどうしたらよいのだろうか。

正直申し上げて、私は落ち込むことなどめったにありません。

20代の頃にはいろいろありましたけど、もう大丈夫。
何も落ち込む要素はありません。

そりゃ、いろいろありますよ。
毎日。

でも、そういうことでいちいち気にしてられないのが私の性格。
酒飲んで寝たら次の朝にはすべて忘れているのです。

でも、なんだろう。
どうしたんだろう。

というのが今の感じかな。

「女を口説くときは、考えさせちゃダメなんだ。」

尊敬する野坂昭如氏がエロ事師の中で言っていたと昔の悪友の言葉を今になって思い出してみると、今日の私のような心理状態の時には、考えてはいけないのであろう。

そう、余計なことは考えてはいけないのである。

なぜなら、私は余計なことや難しいことを考える頭を持ち合わせていないから。

そう、馬鹿なのである。
そして、馬鹿の特徴として、馬鹿ほど余計なことを考えるのである。

馬鹿に向かって「お前は馬鹿だねえ」と言うとものすごく怒るのである。
なぜならば、馬鹿だから。

私はパスカルではないから。
「人間は考える葦である。」
などと言われてみたところで、子供のころからそんなことはよくわからない。

つまり、考えてはいけないのである。

で、考えることと言えば、「面白い仕事をしたい。」ということ。

これなら考えてもいいよね。

ディーゼルカー2両に寝台車を挟んで走らせてみようとか。

佐藤愛子のように、死ぬときに「あぁ、面白かった。」と言って死ねれば本望でしょうから。

でも、佐藤愛子はまだ生きてるし、私は川上宗薫にはなれそうにもないからどうかな。

おっと、もう11時。
こんな時間になってしまった。

では、余計なことは考えずに、「今日も一日、あぁ、面白かった。」と言って寝ることにしましょう。

それでは皆様、おやすみなさい。

まだ寝ないけどね。