「鳥塚さん、こんにちは」の頃

もう10月ですね。

私が車を千葉に置いてきてから1年が経ちます。
いろいろ家庭の事情で、車をこちらに持ってくることができなくなりまして、簡単に言うと息子が北海道から帰ってきたのと、娘が出産で戻ってきたのが去年の10月。
だから、車が2台必要になったので、「お父さんは電車でお願いします。」
ということ。

まぁ、いわゆる交通弱者と呼ばれる車に乗れない皆様方はどのような気持ちになるのか。
雪国で車がないというのはどういうことなのか。
そういうことを身を持って体験することは、地域の交通事業者としては大切なことなのではないだろうか。
そう思って車のない生活を始めたとたんに足が痛くなって、本当に難儀する中で、私は駅までバスに乗るという方法を編み出しました。

歩いて15分ほどなんですが、朝は毎日バスに乗っておりまして、そのうち、知らない間に運転士さんとも顔見知りになるというのが田舎暮らしならではで、今日も「おはようございます。」と言ったら、運転士さんが、「この間、いすみと小湊に乗りに行きましたよ。」と声をかけてくれました。

私は一瞬、ドキッ!

笑顔を繕って、「そうですか、それはありがとうございます。」と答えましたが、心の中では「しまった! 面が割れてる!」

地域で面が割れているというのは、コンビニでHな本の立ち読みもできないし、スーパーで見切り品の刺身を「ラッキー!」って顔をして買うこともはばかられるということなのです。
田舎ではね。

面が割れてると言えば、昔からある地域では面が割れていまして、ある時北海道で特急列車に乗っていた時のこと。
そう、かれこれ30年も前の、まだ私が30ちょっとの頃。
その時はカミさんと一緒に北海道旅行をしていたのです。

あれは確か「オホーツク」だったかな。
車掌さんが車内検札に回ってきたときのこと。

「おそれいります。乗車券、特急券を拝見します。」

と言った車掌さんが、私の前で立ち止まりました。
そして、笑顔で、
「鳥塚さん、こんにちは。今日はご旅行ですか?」
と言ったんですよ。

まぁ、知り合いだったんですが、そうしたら隣りにいたカミさんが固まりましてね。

「なんで北海道の特急に乗ってるときに名前で呼ばれなければならないの?」って感じです。

その時は北見で降りたんですが、駅を出ようとしたら改札口で駅員さんがニコニコしている。

「鳥塚さん、こんにちは。」

「お~、哲夫さん、元気?」
ってな感じ。

当時、航空会社では会員のお客様をお名前でお呼びしましょうなんてことが始まったばかりの時代でしたが、鉄道ではそんなことはあり得ません。

航空会社ではお客様はCUSTOMERと呼んでいましたが、鉄道ではPASSENGERですからね。
右から左へただ単に通り過ぎていく人たち。
それが鉄道のお客様なのです。(多分今でもそうだけど)
だからお客様を名前で呼ぶなんてことは考えられない。
そんな時代に、北海道の特急列車で、車掌からも駅員からも「鳥塚さん、こんにちは」と言われたんだから、カミさん的には仰天なわけです。

ちなみにうちのカミさんは40数年前のグラビアモデル系ですから、本人としては絶対に面が割れたくない。
面が割れれば、あの人は今・・・ですから、人に逢ったり外へ出かけたりするのが大嫌いで毛嫌いしているのです。

札幌から飛行機に乗ったら「鳥塚さん、こんにちは」

地球の反対側へ行くときだって、飛行機に乗った瞬間から、「鳥塚さん、こんにちは」

地球の反対側に着いても「鳥塚さん、こんにちは」

ということで、「私はもうあなたと旅行へは行きません。」となったのでありまして、子育てが終わった今でも夫婦で旅行をすることなど皆無なのであります。

まして、こういう仕事をするようになって、時々テレビにも出るようになる。
でも、そういうカミさんですから、母親譲りで我が家では子供たちは誰も私が出ているテレビを見ない。
数日後に学校や職場で他の人から「お父さん出てましたね。」と言われるのが大嫌い。
そういう生活なのであります。

だから私のブログには家族写真はほとんど登場しないでしょう。


▲「鳥塚さん、こんにちは」の頃の帯広駅。シャッターを切ったのはカミさんですが、カミさんの写真は無し。

ですから、最近でも家に帰ろうと京成に乗ろうとしたら「鳥塚さん、こんにちは」
振り向くと地下鉄株式会社の幹部の方だったり、
東北新幹線「はやぶさ」の中で、「鳥塚さん、こんにちは」
などなど、あちらこちらでお声をおかけいただくのでありまして、そういう時は西城秀樹とか郷ひろみになったつもりで、「はい、こんにちは」と笑顔で答えることにしておりまして、決してN口5郎のように「誰ですか? あなたなんか知りません。」などという態度は取らないようにしているのであります。

なぜなら、相手にしてみたら声をかけるときに相当勇気がいるでしょう。
その勇気を振り絞って声をかけてくれているのですから、その気持ちにはきちんとお答えしなければ失礼じゃないですか。

まぁ、時々あまのじゃくな気分の時もありますけど、そういう時は、
「鳥塚さんですよね?」
「違います!」
「え~、トキめき鉄道の鳥塚さんじゃないですか?」
「知ってるんですか? あれは、私の腹違いの弟です。」
とか言って、受け流すときもありますけどね。(爆)

ということで、横浜そごうの「ヨコハマトレインパラダイス」が始まります。
いない時もあるとは思いますが、見かけたら声をかけてくださいね。

そうしたら一緒に写真を撮りましょう。
もちろん、声をかけていただいたあなたはブログデビューですから、うちのカミさんのように世間から逃げ回っているような人は、「写真は良いですけどブログはダメです。」とか、わけのわからんことは言わずに、黙ってにっこり笑って通り過ぎてくださいね。

皆様のご来場をお待ちいたしております。

ちなみにこちらは本日の直江津D51レールパーク見学の団体のお客様。
地元直江津の皆様方です。
好むと好まざるとにかかわらず、私に逢ったら写真を撮られるのであります。

ご来場いただきましてありがとうございました。
地元の方にいらしていただけるのは、うれしいですね。
黄色いTシャツも似合ってるし。