発売当日限り有効 下車前途無効 

発売当日限り有効 下車前途無効

たぶん、これは私が初めて覚えた交通用語。

昭和44年発行の新小岩からの国鉄切符。

当時私は小学校3年生。
板橋に住んでいましたが、父親が江戸川の会社に勤めていました。
父は巣鴨から秋葉原で総武線に乗り換えて、亀戸からバスに乗って会社へ通っていたので、ときどき会社帰りの父と待ち合わせで亀戸まで出かけて行って、貨物線のD51に手を振ったりしたものです。
そんな父ですが、会社の帰りに一杯ひっかけるのは新小岩と決まっていたようで、飲んだ後、新小岩から亀戸まで切符を買って総武線に乗って、そのまま定期券で秋葉原乗り換えで巣鴨まで来ていたので、帰って来ると、「あきら、ほら、切符」と言って、新小岩からの切符をくれたのです。

同じ30円区間でも2種類あるのが不思議ですが、金額だけの表示のものは自動券売機で購入したもの。矢印で亀戸-小岩となっているのは、有人窓口で買ったものだと思われます。

というのも、当時は自動券売機でも単能式といって、一つの切符しか販売できないタイプのものがたくさんあって、30円区間だけの切符を販売するような、そういう単能式の券売機からは硬券の切符が出てきたのです。
きっと、機械の裏側には同じ切符がたくさん積まれていて、お金を入れると順番に1枚ずつ出てきたのだと思います。
今のような金額のボタンがたくさんついたタイプが出始めたのはもう少し後のことでした。

表面に駅名が書かれている窓口販売の切符も、裏を返せば「発売当日限り有効 下車前途無効」と書かれています。
電車好きな小学校3年生のガキにとってみたら、この漢字を解読することから鉄道趣味が始まったと言っても過言ではありません。

さて、本日は久しぶりにYAHOOニュースを書きました。

令和1年11月11日記念乗車券に見る鉄道業界の異変

今の子供たちは切符というものをほとんど知らぬまま大きくなるのでしょう。
すでに大人になっている人たちも、切符という感覚を失いつつあります。

かくいう私も、電車に乗る時に改札口で見せて、電車の中でも「乗車券を拝見」と言われ、目的地に着いた時に出口で提示できなければ無賃乗車を疑われるような、そんな切符という制度自体が今の世の中に合わなくなっていると考えている人間ですので、おそらく切符というものが鉄道業界から消え去ることは近いと考えている一人なのであります。

なにしろ飛行機なら航空券などというものは既にバーチャルになっていて、到着地で飛行機を降りた時に「お客さん、切符は?」などと問われることはありませんから。

そう考えると、記念乗車券というのは、なかなか貴重なコレクションになると思うのであります。