いすみ鉄道の安全対策について

昨日、大多喜町商工会の皆様方のお招きで、「いすみ鉄道の現状と将来について」お話をさせていただく機会をいただきました。


この写真は、講演会の後、養老渓谷の旅館で商工会の皆様方と行われた懇親会(少し早目の忘年会)で、いすみ鉄道会長である飯島大多喜町長さんが和やかに挨拶されているところです。
この講演会では、いすみ鉄道に今たくさんのお客様がいらして、レストランや夜行列車など、予約が取れない状態だというお話をさせていただいて、今や、いすみ鉄道は都会の皆様の憧れの場所であり、「行ってみたいなあ。」「乗ってみたいなあ。」と都会の皆さんが思ってくれているということは、すなわち、大多喜町が都会人の憧れの場所になっているんですよ、というお話をしたわけですが、それと同時に、地元の皆様方が心配されている「いすみ鉄道の安全対策」についてお話をさせていただきました。
いすみ鉄道では昨年の12月末に小規模な脱線事故が発生しました。
そのため、いすみ鉄道では、会社として、この事故を教訓として、大きな事故を未然に防ぐための対策を進めてきましたが、この11月に半径200メートル以下の急カーブへの脱線防止レールの設置を完了し、さらに、一部区間へのPC(コンクリート)枕木の設置も行いました。
また、築堤の補強対策として、獣害を受けた路盤の補強も、昨年の脱線事故以降の重点対策としてすでに工事が終わっています。
いすみ鉄道というと、テレビや雑誌でたくさん取り上げられて、社長がお金を稼ぐことしか考えていないと思われがちですが、安全対策については、できる範囲のことですが、しっかりとやっていますよというお話をさせていただきました。


[:up:] コンクリート枕木は東京のある私鉄が線路改良のために外した枕木を無償でもらいうけて敷設したものです。通常なら枕木交換したところは白く見えますが、新品ではないので道床に同化しています。一定間隔でPCを入れることにより、線路の強化を図っています。

[:up:] これは脱線ガードレールと呼ばれるレールです。
通常は曲線区間、橋梁部分などに設置されています。
万一列車が脱線しても、軌道敷内から飛び出して転覆することを防止するレールです。
昨年の事故では、この脱線ガードレールの作用で大事故になるのを防ぎました。


[:up:] こちらは脱線防止レールです。
昨年の脱線事故現場を含め、急曲線部分にはこの脱線防止レールを設置しました。今年は半径200メートル以下の急曲線すべてに設置が完了し、来年度以降、順次設置個所を広げていきます。


[:up:] これは築堤部分の路盤強化箇所です。
この付近はイノシシが多数生息する場所で、築堤の下に穴を掘った跡がありましたので、大雨等で路盤が弱くなることを防ぐために、特殊なブロック状の砕石を敷いて路盤の下部を補強したものです。JRでもこれと同じ方式が使われています。
このように、いすみ鉄道では昨年の脱線事故を受け、さらなる安全対策として、長期修繕計画とは別に今年これだけの追加工事を行いました。
この追加工事につきましては上下分離の予算に入っておりませんが、列車は毎日走るものですから、お役所仕事の予算の配分を待っているわけにはいきません。
たったこれだけの工事でも、総額3000万円ほどかかりますが、会議を開いても満額の予算は出ませんので、社長である私の独断で今年実施したものです。
従いまして、いすみ鉄道の決算は、来年度はこの余計な出費の分が赤字になる計算です。
しかし、線路を預かる社長としては、「安全はすべてに優先する」という考えの下、できる限りの対策をとるべきだというのは当たり前のことですから、昨年の脱線事故から1年になるのを前に、通常の設備保守にプラスして、懸案箇所の補修工事をすべて行った次第です。
ということを、大多喜町のリーダーの皆様方にご報告させていただきました。
私は株式会社の経営者ですから、当然、黒字を目指しています。でも、安全が確保できないのに黒字もへったくれもありません。
輸送の安全が最大の使命でありますから、上下分離の上の部分のキャッシュを使っても安全対策を行ったわけですが、おそらくこれに対する出費が、今後数年間ボディーブローのように効いてくるんだろうなあと考えています。
地域鉄道は、煎餅やまんじゅう、もなかなどを売って維持できるものではありません。
国が、どう考えるのか、頓珍漢な「地方創生」にならないことを祈るばかりです。
※ おかげさまで、昨日発売開始しました1月の夜行列車企画につきましては、今朝まで全席完売となりました。お申し込みありがとうございました。
なお、いすみ鉄道では12月31日にキハによる終夜運転を行いますので、こちらもぜひご利用ください。