ローカル線つながり

昨日の夕方、新聞記者の方から取材を受けていました。
ローカル線がこんなに頑張っていて、地域の皆様も喜んでくれている。
それなのに、儲からない仕組みについて、おかしいんじゃないか? というような取材でした。
いすみ鉄道では、昭和の汽車旅をお楽しみいただくために国鉄形のディーゼルカー、キハ52・キハ28を走らせています。
そのキハに1年間に2万人以上のお客様にご乗車いただいています。
ローカル線が1年間に1万人、2万人というお客様にいらしていただいているということは驚異的な数字で、それも、大した改造をしたわけではない、そのままの姿のオンボロディーゼルカーでこれだけの数字を稼ぎ出しているわけですから、いすみ鉄道でやっていることは、本当にすごいことですね。
というのが新聞記者の方の感想でしたが、私は、それに対して、
確かにこの地域にキハだけで年間2万人。ムーミン列車も合わせると1年間に6万人の観光のお客様の乗車があって、それが増え続けていますし、車でいらしている人たちの数字は把握できないけれど、おそらくそれの倍以上はいるはずですから、観光効果や、昨今よく言われる経済効果という点では、大きな役割をいすみ鉄道は果たしていると思いますが、でも、例えば1万人がキハに乗っていただいたとして、1人300円の急行料金をお支払いいただいても300万円ですよ。
ディーゼルカーは新車で買えば1億3000万円以上するし、いすみ鉄道のキハ、土休日のみの観光用ということで、お金を掛けたくないからボロのまま使っているけど、それでも2両で5000万はかかっているのです。
あと1年後に迫っているキハ52の全般検査の費用が業者から最低でも3000万はかかると言われています。
線路の点検や修理も休むことなく行わなければなりません。
だから、私は検査期限が来たらキハ52はもう止めちゃおうかなと考えているんですよ。
だって、これだけ地域の観光資源であるという証明をいくらしたところで、鉄道会社は儲からない仕組みになっているんだから、努力をするだけ無駄なんです。
キハ52やめて300万収入が減るけど、3000万の支出を抑えられるんだから、経営判断としてはある意味正しいわけで、地域に人が来るとか、地域が活性化するとかは、私に求められていることではなくて、ついでにやっていることだから、そういうことでは評価されないわけです。
銚子電鉄だって、あれだけ一生懸命やっていて、増収策のためにおせんべいを年間3億円も4億円も売っている。
いすみ鉄道が血の出るような思いをして営業しても、物販売り上げは1億円に届かないというのに、銚子電鉄は3億円も4億円もおせんべいを売っている。
おそらく想像を絶するような努力をされているはず。
それなのに鉄道会社が維持できない。
そういう社会の構造は私はおかしいと思うんです。
3億円も4億円もおせんべいを売って、鉄道会社が維持できないんなら、鉄道会社何てやめちゃって、最初からおせんべい屋さんになった方が、少なくとも働いている人は幸せになれるんだから。
今の世の中を見ると、ローカル線は貧乏くじを引いたようなもので、優秀な人間がローカル線で働いてみようとは思わない。
ということは、すなわち、田舎には優秀な人間は集まらないという構造になっていて、だから地域がどんどん衰退していくわけで、それを変えるのは国の仕事なんじゃないだろうか。
そんな話をしていたんです。
そしたら、そこへひょっこりと、ひたちなか海浜鉄道の吉田社長さんがやってきました。
「近くまで来たもんですから。」
何て言いながら。
驚いたのは新聞記者の方で、「お知り合いなんですか?」
どうやら、私たちがふだんからよく会っていて、いろいろ意見交換をしたり、相談に乗ったり乗ってもらったりしていることをご存じなかったようで、ローカル線どうしが繋がっているとは思っていなかったご様子。
新聞記者の方が驚くぐらいですから、世間の方々はローカル線どうし、線路は繋がっていないけど、人と人とは繋がっているんですよ。ということご存じないでしょうから、これを記事にしていただこうと、
「吉田さん、ちょうど良いところへいらっしゃいました。」
とインタビューに入っていただきました。
吉田さんも公募社長で、他にも山形鉄道の野村社長さんや、由利高原鉄道の春田社長さんも公募社長で、みんな仲良しで情報を共有し合っているんですよ。
そういうお話を新聞に書いていただけると、人と人との繋がりとか、ローカル線は孤独じゃないんだ、ということが皆様にもご理解いただけるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
そして、日本全国どこのローカル線にも共通しているのが、鉄道は負担が重すぎで、どんなに努力しても立ちいかなくなる構造が今の日本にあるということ。
このままで行ったら、10年後には小私鉄や第3セクターはもちろん、JRだって小さな支線は皆無くなってしまいます。
そういうことを考えるのは国の役目なんですが、それを国のお役人さん方が認識しているかどうか。
そして、認識していたとしても、前例主義が徹底している機構制度の中で、優秀なお役人さん方が、はたして実行できるかどうか。
これは、ローカル線だけの問題ではなくて、日本の田舎町全体の問題なんだと思います。
そういうことを新聞に書いていただくことが、大切なんじゃないかと思う今日この頃なのです。
ひたちなかの吉田社長さん、飛び入りでご参加いただきましてありがとうございました。