線路の保守点検。

このところ毎日のように線路の保守点検、整備不良が話題になっています。
JRでさえ、あの程度なのだから、いすみ鉄道ではどうやっているのか。
不安に思われる方もいらっしゃると思いますが、いすみ鉄道は、私が就任した2009年から、ここ4年間、毎月どこかで線路の工事をしている状況です。
線路は列車が走行したり、また、経年変化で補修が必要になります。
いすみ鉄道は旧国鉄ですから、線路の幅はJRと同じ1067ミリ。
1メートル6センチ7ミリです。
これが基準値であって、ポイントの部分や、カーブでは列車が走行しやすいように(線路と車輪が摩擦できしむのを避けるために)、少し広めに設定しています。
私は線路の専門家ではありませんので、社長としてどうするかというと、線路の専門家を常に傍らにおいています。
その人が、JR出身で、45年間も線路一筋で仕事をしてきた荒井工務課長と、電気通信専門の末吉電気課長です。
この二人がいつも線路や信号などの沿線設備に目を光らせてくれています。
そして必要な工事を行っているわけです。
いすみ鉄道では自社で抱える工事作業スタッフがほとんどいませんから、外注業者に線路の点検をお願いしています。
今話題になっている線路の狂いは、1年にいっぺん、外注業者といすみ鉄道の職員が一緒に全区間を歩いて、枕木や道床の状態、軌間の広がりなどをチェックしています。
その点検結果に基づいて、緊急性の高いところから、工事の順番を決めて、修繕を行っています。
自社で工事部門を持たないというのは、「持たない経営」として、私が就任する以前から行われてきたことですが、第三者である外注業者が入ることで、透明性というか、公正さというか、「お手盛りじゃない」検査修繕ができると考えています。
外注業者が検査結果をきちんと報告書にして提出してきますし、そういう報告書が出されれば、知らなかった、気づかなかったでは済まされませんから、修繕計画もきちんと立てなければなりませんし、実際の工事も行わなければなりません。そして、その実際の工事を行うのが、検査業者とは異なる別の工事業者なわけで、そこでも第三社が絡んできますから、内内でのお手盛りが通用しなくなるわけです。
2010年に存続が決定して、「本当に線路は大丈夫か?」という議論になった時のことですが、確かに廃止するかどうかという時は、線路設備の修繕などにはあまりお金を掛けなくなっていましたが、私がキハ52を走らせると言ったことで、それまでのいすみ200よりも15トンも重いキハ52を走らせるわけですから、緊急に全区間の線路を点検し安全性を確認しました。そして、それ以来、毎月必ずどこかで工事が行われている状況が続いているわけです。
ですから、いすみ鉄道の線路は、今でも木の枕木を使用するなど、JR線から比べれば確かに見劣りはしますが、身の丈に合った設備といいましょうか、いすみ鉄道ぐらいの輸送量の鉄道にしてはきちんと整備されている状況にあります。(鉄道総研の専門家の方からもお墨付きをいただいております。)
私の仕事は、これらを管理していくことでありますが、もう一つ、私にとって最大の仕事は、こういう保守修繕のための資金を確保することで、千葉県や沿線各自治体に事情を説明して資金手当てをしていただく交渉をすることですが、とても幸いなことに、輸送の最大の使命は安全であるということを、市長さん、町長さん皆様方が本当に理解してくれていますから、お金に上限は当然あるものの、必要最小限の修繕を重ねていく費用の確保はできているわけです。
そりゃそうですよね。
いすみ鉄道が観光列車を走らせて、いくら活性化しても、安全性が揺らぐようでは本末転倒ですからね。
到着した乗務員さんから、「〇〇付近の線路が少し変だよ。」と言われれば、すぐに見に行って、少しでも不安材料を消していくのが安全を守るということなのです。
ですから、いすみ鉄道の線路は、今日現在、全く問題なく安全です。
これは、私が自信を持って言えることです。
ただし、昨日のように台風が来たり、大雨が降ったり、いつ何時どうなるかわからないのが今の日本の状況です。
踏切障害も考えられますし、落雷などで電気通信設備がいつ不具合を起こすかもわかりません。
だから、常に緊張感を持って業務に当たらなければなりませんし、慢心とか油断は大敵なのです。
皆さんにはご理解いただけないかもしれませんが、私は航空の現場に長い期間勤務していましたので感じるのですが、安全を守る輸送の現場では、「こんなもんでいいか。」という発想はないんです。
修繕のための予算には限りがありますが、いくらでも、最善を尽くすことに労力を惜しんではいけないんです。
そういうことはお金で置き換えるのではなくて、輸送に従事する職員の心構えなんですね。
もちろん、線路だけ万全でも安全だとは言えませんから、電気通信、信号、踏切、そして運転士の訓練など、あらゆる面で考えられる努力をしていくというのが、私のポリシーであり、いすみ鉄道職員の考えでもあるわけです。
ただし、工事のお金は降って湧いてくるものではありませんから、緊急の度合いによって優先順位を付けて、緊急性の低いものに関しては経過観察をする指示を出していくというのも管理職者の仕事なわけです。
というわけで、私は今度の週末も列車に乗って沿線を走ろうかと考えております。(決して趣味ではありませんので、誤解されませんようにお願いいたします。)

[:up:] 国吉駅での枕木交換と線路の点検。手前の線路は痛んでいた路盤を整備し、砕石を敷き直したところです。
JRや大手私鉄から見たら本当に小さな工事ですが、こういうことを地道に続けていくのがいすみ鉄道の身の丈に合った安全対策なのです。