夜行列車の需要 その3

夜行列車は「高くて遅い」とても生産性が低い移動手段になってしまったので、今どき、夜行列車で目的地に行くなんていうことは、時間とお金の無駄であるということになるのでしょうか。
ここ数年の間、国鉄時代から走り続けてきた伝統の夜行列車が立て続けに廃止されています。
JR化で線路が会社ごとに分断されたため、夜行列車を走らせることが面倒になったのだろうという人もいますが、それはJRの人に聞いてみないとわかりません。
でも、一つだけ言えることは、消えて行った夜行列車は基本的には旧態然としたままで、何もテコ入れをされなかったということです。
それはなぜかと考えると、やはり「夜行列車で目的地へ行く」という需要が、今の時代に合わなくなってきていて、テコ入れをする、すなわち資金を投資しても需要の増大が見込まれなかったからです。
ところが、元気な夜行列車もある。
「トワイライトエクスプレス」や「カシオペア」などの豪華寝台列車は、どう考えても夜行列車として存続できる理由が見当たりません。
なにしろ昼間や夕方早くに始発駅を出て延々走る「高くて遅い」列車なのにどういうわけか切符が手に入らないほど大人気なのです。
これは、どういうことかというと、「寝ている間に移動する。」という本来の目的ではなくて、「乗ることに意義がある。」ということで、寝台列車で目的地へ行く人はもはやほとんどいなくなりましたが、寝台列車に乗ってみたいという需要は潜在需要として明らかに存在するということになります。
私はいつも思うのですが、「本来このようにあるべきだ。」とか、「建設された経緯はこうだ。」などということにこだわっていると、時代の変化に対応できなくなって、結局は「不要論」になるわけですが、一歩引き下がって物を見る余裕があれば、不要になってしまったものでもいろいろ新しい使い道が見えてくると思います。
JRの人たちも当時としては画期的だったのでしょうが、「北斗星」に豪華な個室や食堂車を連結してデビューさせたことは英断だったと思います。
この「北斗星」が大人気になり、カシオペアやトワイライトへ派生していくわけですが、これはあくまでも観光重要でありますから、しばらくすると人気が下がってきます。だから、常にテコ入れをして、お客様に乗っていただく努力をしない限りは、廃れてしまいます。
でも、それって、どんな商売にも言えることで、民間企業であればそんなことは当たり前のことですから、お客様を飽きさせない工夫が必要です。
JRは今度は新しいコンセプトの夜行列車を登場させる計画のようですね。
面白そうです。
私はなにも目的地へ行かなくても、同じ所へ戻ってくるだけでも乗ってみたいという人がいると思いますから、上野⇒高崎⇒小山⇒上野とか、青森⇒盛岡⇒青森などの区間で夜行寝台列車を走らせても週末ならばお客さんが結構いると思いますがいかがでしょうか。
夜行列車ばかりでなくローカル線も全く同じで、ローカル線に乗って目的地へ行くという需要はほとんどなくなってしまいましたが、「ローカル線に乗ってみたい。」という需要は必ず存在するはずだ、と私は確信していますから、「わざわざ乗りに行きたくなるようなしくみ」を展開しているわけです。
伝統の夜行列車もローカル線も、日本がここまで発展することができた礎になっている産業遺産であり、文化財だと思います。
もういらなくなったからという理由で捨てるのではなく、今生きている私たちが時代に合った活用法を考えて利用し、次の時代につなげていくことをしなければいけないのではないでしょうか。
140年の鉄道の歴史の中で、私たちの先輩方が守ってきた列車や線路を、自分たちの代で捨ててしまうことは、恥ずかしいことなのだと思いませんか。
今あるものをどう活用するか。
これが活性化ですから。
さあ、今度「あけぼの」に乗りに行こう!
青森には用はないけど、そろそろやばそうだしね。
(おわり)