おやすみエクスプレス

東京生まれ、東京育ちに私にとって、子供のころからあこがれというか、良いなあ、住んでみたいなあ、と思う場所がいくつかあります。
その一つが北陸の金沢。
加賀百万石というだけあって、何だかすべてにおいて洗練されているイメージがあるし、根拠はないけど、「きっと綺麗な人がたくさんいるんだろうなあ。」と高校生のころから思っていた土地です。
でも、残念ながら私の人生ではほとんど縁がなかったところ。
観光したこともなければ、友達がいるわけでもなく、ただ長年にわたって何となく憧れていた場所です。
まあ、縁がないといっても、「鉄」ですから、昭和51年に日本食堂でアルバイトして特急「白山」の食堂車で初めて金沢の地を踏んでから、もうかれこれ20回ぐらいは金沢の駅には降り立っていますが、実はそのうちの半分、約10回は、ここ2年ほどの間。今年に入ってからだけでも、もう5回も行っているのですから、あながち縁がないわけでもなく、ましてこのところ通い詰めているのは、少々歳はとっていますが、昭和39年生まれの可愛い子ちゃんに会いに行くのですから、足取りも軽いわけです。

さて、そんな私が旅先でこだわっているのが、通勤電車。
観光などの短期滞在者はまず乗ることがない通勤電車に遠い彼の地で乗ってみると、何となく「自分はこの町に住んでいるんだ。」的な気分になれるから不思議です。
で、乗ったのがこの「おやすみエクスプレス。」という特急列車。
金沢の通勤者たちが自宅へ帰るために乗る列車だと思いますが、ホテルを福井に取ったにもかかわらず、わざわざ金沢に飲みに来て、帰宅するサラリーマンに混じってほろ酔い気分で乗ったホームライナーです。
列車そのものは683系の3両編成で、金沢を21:41に出て、松任、小松などに停車する福井行。
ライナー券300円とかで乗れるのではなくて、ちゃんと特急料金が必要だからだと思いますが、車内はガラガラ。
ゆったりとしたシートに身を任せていると、酔った身体に列車の揺れが心地よく、途中で夢の中へと落ちて行きました。

「お客さん、終点です。」
で目が覚めましたが、つかの間の金沢通いのジモティ―気分を味わうことができたハッピートレインでした。