全国共通 地元の問題点や障害

先日、いすみ市商工会の皆様方と酒席を共にさせていただきました。
勝浦も御宿も対前年比で海に来るお客様が伸びているそうですが、いすみ市だけが対前年比で海に来るお客様が減っている。
どうしてなんだろうか。
そんな状況の中で、いすみ鉄道が何かイベントを企画すると、たくさんのお客様がやってくる。
ゴールデンウィークに行った「みんなでしあわせになる祭り in 夷隅」には2日間で15000人もの人がやってきた。
これはもしかしたら地元にとって1000年に一度のチャンスかもしれない。
だったら、このお祭りをみんなでサポートして育てて行っくのが今やらなければならないこと。
このいすみ鉄道の情報発信力と集客力にあやかって、我々も乗っかって行こう。
これがいすみ市商工会の出口会長さんの意見です。
私は以前から、鉄道というのは利用するためにあるのです。と申し上げています。
ただ、今の時代は通勤や買い物などの用途での利用は難しくなっています。
でも、沿線地域の人たちが、別の意味でいすみ鉄道を利用することは可能なはずです。
いすみ鉄道の情報発信にみなさんが一緒に乗っかって、沿線情報を発信することができれば、鉄道に乗ったことになりませんか?
こんなふざけた話をしていますが、これはおふざけではなく、本心です。
いすみ鉄道はいすみ市、大多喜町、御宿町、勝浦市の2市2町が連携して国鉄木原線の廃止の時から支えてきてくれています。
沿線地域の人々はマイレール意識がとても強く、いすみ鉄道をとても大切にしてきてくれています。
だから、私は、地域に対する恩返しの意味も含めて、いすみ鉄道を皆様のご商売の発展のためにどんどん利用してください。と申し上げています。
すると、こんな意見が。
商工会というのは、商店主だけではなく、俺たちのような工務店や建設業者なんかも加盟しているんだ。だけど、俺たちがどうやっていすみ鉄道にやってくる観光客を自分たちの商売に取り込むんだ。
そういうことは商工会ではなく商店会でやることなんじゃないの?
これが地域の商売人の意見です。
商工会というのは、最前線で日々商売をしている人たちの組織ですが、その組織が、「商店主と、工務店等が同じ判断基準で物事を決められなくなっている。」のが、地域の現実なのです。
最前線にある最小単位の会でさえ、臨機応変に動けない。
その会の中にはそれぞれの部会があって、その部会には建前や大義名分があるし、今までの経緯もある。
それが今ではしがらみとなって、自由に物事を決められなくなっている。
日々商売をやっている人たちの集まりでさえ、そういう状況で、日本経済の最前線である各地域の商工会ですら、その組織の構造というか、成り立ちが現状に即さなくなっている。
現状に即さなくなっているのは組織なのか、フレキシブルに運用できない構成員なのか、原因はどこにあるにしろ、地方組織が物事を自分たちで決めて前進していくことができなくなっているのが、おそらく全国的に起きているのでしょう。
日本の国が全国的に地盤沈下しているのは、国が悪いんじゃなくて、それぞれの手足が動かなくなっているのだと思います。
私の意見はこうです。
あなた方は経営者でしょう。経営というのは時代の流れを読む力が必要です。時代の流れに合わせることも必要です。
かつて海岸沿いの人たちが口をそろえて、「サーファーは経済効果がない。」と言っていた。
でも、それは、地元の人たちが新しいお客様であるサーファーを自分たちの商売のお客様にできなかっただけの話。
昭和40年代までの海水浴客をあてにした旧態然とした商売のやり方では、新しいお客様に対応できなかったわけで、サーファーが経済効果がないのではなく、自分たちが、目の前にいるお客様を取り込むことができなかっただけのことなのです。
そう。
田舎には色々なしきたりや仕組みがあります。
この商工会という仕組みも、何か新しくやろうとしたときに、昔からの仕組みが障害になりかねない。
これはいすみ鉄道沿線だけでなく、全国で見られることです。
新しく何かをやろうとする。
地元の人ではできない新しいことは、よそ者が提案して企画する。
でも、それがどんなに素晴らしいアイデアであっても、そのよそ者がまず、「お前は誰だ!」という洗礼を受けるわけです。
そして、せっかくの気運がスポイルされてしまう。
「お前は誰だ!」というのはだいたい地元の有力者。
前述の商工会のメンバーとかです。
誰かが裏で糸を引いている場合もあるかもしれません。
そうならないためには、地元の人たちからすんなり受け入れてもらうためには、役場のお墨付きが必要になります。
田舎ですから、役場が「この人は大丈夫だ。」と言えば、意外とすんなり物事が進みます。
ところが次なる問題が。
行政と民間とではタイムスケジュールが違います。
例えば、我々民間が何かイベントをやろうと考えた時には、イベントの規模にもよりますが、だいたい2~3か月あれば十分。
ていうか、コストや効率、タイミングを考えると、それ以上長いスパンは考えられません。
でも、役場が絡んでくると、予算化が必要ですから、例えば来年のゴールデンウィークに行おうとするイベントはちょうど今頃から話を根回ししなければなりません。
ところが、予算化といっても今の時代お金が限られているから、新しいことを提案するということは、今までやってきたイベントなどが淘汰される危険性がある。
となると、さあ大変だ。
どこの誰かもわからない奴らに俺たちの予算を持って行かれる。てなわけで、またしても排除しようとする動きが水面下で活発化する原因になります。
私は民間の人間ですから、どうしても行政とのタイムスパンが合わない。
今、私の頭の中で今考えていることは10月のキハ28のお披露目イベントであり、夷隅人車軌道百周年記念の「能楽とオペラの協演 in 夷隅」(10月6日)。
そしてそれが終わったら、12月のキハ28運転開始。
とてもじゃないけど、ゴールデンウィークのイベントの予算取りや、そのための根回しなんかやっていられないから、「すみませんが、いすみ鉄道主催でやります。お祭りは自費でやりますから、予算取りも必要ありません。」と言ってしまうのです。
これがまた一部の人から煙たがられる原因かも。
行政には行政の物事の進め方があるのは理解しています。
だから、それはそれでかまわないと思います。
ただし、田舎の皆さんは、例えば商工会の皆さんは、行政ではなく民間です。
民間というのは、常に利益を出して、その利益で前に進んでいかなければならないのです。
でも、田舎の民間人は、もしかしたらものの考え方やタイムスパンが、すっかり行政化している。
もしかしたら、日本全国の田舎がこうなっているのではないかと、田舎にいて思うのです。
そして、それが日本が地盤沈下している本当の原因なのかもしれません。
(商工会の皆さん方は、いすみ鉄道からいろいろなことを学ぼうと必死です。私の考えをぜひ聞かせてくれといつもお願いされていますでの、今回は、そういう意味で私の考えを述べさせていただきました。)
「いすみ鉄道の社長はまたオンボロディーゼルカーを買うようだ。今度は何をやるんだろう。少しでも地域や自分たちがこの機会に浮上できるように、いすみ鉄道を利用しよう。」
これが地域の商工会トップの人の今の考え方です。
地域の皆さんに大いに利用していただくのがいすみ鉄道の役割です。