G県のこと。 A県のこと。

G県には第3セクター鉄道が3つもあります。
長いものは70kmを越える路線長があり、そのほとんどを高速道路が並行しています。
末端部分は冬は豪雪地帯となる過疎地域です。
どの鉄道もいろいろとイベントをやったり、観光列車を走らせたりと、できる限りの努力をしていますが、ご多分にもれず赤字です。
でも、どの路線も20周年を迎えるまでに開業当時の簡易車両であるレールバスの車両更新を終え、新しい車両が走っています。
廃止になる前提で路線存続協議をしているところはありません。
A県には第3セクター鉄道が2つあります。
一つは路線長90kmの長大路線。
年間2億円以上の赤字を県と沿線の市が補填しています。
2つの路線はどちらも過疎地を走る鉄道で、お客さんは少なく、冬は雪に閉ざされますので、人の移動はとても少ないところです。
いろいろと経営努力をしていますが、過疎地ですから黒字化は夢の話です。
G県、A県とも地方の交通、特に過疎地において鉄道がどれだけ重要な役割を果たしているか、県と地元自治体が十分認識しているため、鉄道を何とか地元住民の足として残そうという基本姿勢を持っています。
C県はどうでしょうか。
数百万人の人口を抱える都市部があって、都市部にすむ人たちは皆、その都市部と東京のことしか考えていないように私には見えます。
(事実、私自身も、いすみ鉄道に来るまでは佐倉に住んで成田空港と東京しか見ていませんでした。)
南部地域には県全体の3分の1の面積を占める袋小路のような過疎地域があり、内陸部は少子高齢化が進み、年々さびれています。
高等学校も廃校になるような地域です。
でも、そこを走る鉄道の重要性に関する認識度が低く、「いらないよねえ」という発言が主流を占めているようです。
「まあ、せいぜいがんばって、我々を納得させるだけの結果を出せれば、残してやってもいいけどねえ」
こういうことを平気で口にする方もいらっしゃるようです。
世の中にはいろいろな人がいますから、何を言われても構わないと思いますが、自分たちは国に向かって、地方を切り捨てるな ! などと声高に叫んでいるのに、C県そのものが日本の国の縮図になっているのに気がついているのでしょうか。
都市部、つまり中央部分に夢中になって、過疎化した地方に目を向けず、効率最優先の考えに固執し、地元の足としての交通機関を廃止するような行動に出ようとする。
国を批判しておきながら、その国と同じことをしているのだから、言葉を持たない地元の小市民はやりきれないのではないでしょうか。
G県もA県も、県のほとんどの地域で過疎化、少子高齢化が進んでいる。
だから、そういう地域で、交通がいかに大切かを身をもって理解している。
バス代行?
鉄道と同じ路線網をバス代行するとしたら、鉄道を維持する以上にお金がかかることは、どこも基本的知識として持っているし、実際にバス代行となった路線で、鉄道時代以上に便利になったり、たくさん人が乗るようになったところはない。
考え方を変えよう。
こう考えるのはどうだろうか?
年間40万人が利用する公共施設があって、その施設の維持、管理に年1億かかっている。
その1億がはたして高いか安いか。
美術館や公会堂、スポーツ施設など、年間どれだけ利用者があって、維持管理費にどれだけかかっているか。
鉄道は同じ公共施設であっても、交通機関なのだから美術館や公会堂などより公共性の度合いははるかに高いはず。
そう考えたら、鉄道を廃止しようという議論よりも、いかに利用していくかということを考える方が合理的であることが理解できるだろう。
何が大切かをよーく考えれば、答えは一つのはずだ。
日本の玄関口であるC県が、日本をリードしていく県になるためには、都市部に住む大多数の人たちが、もっと、地方の現実を勉強しなければならないことは確かだ。
廃止を平気で口にする人たちに言いたい。
「この1年でどれだけ地方鉄道に乗ったのか?」と。
俺は乗ってるぞー。
C県住民の誰よりも多く乗っているのだ。
過疎地域の交通を確保すること、その大切さが、都会にあまりに近いC県の住民にはなかなか理解してもらえないかもしれないけれど、
百聞は一見に如かず。
何もG県やA県に行けとは言わない。
東京を向いている今の姿勢を「まわれ右」して、房総半島に目を向けてみてごらん。
素晴らしい自然の中をムーミン列車がのんびりと走っている。
これがどれだけ大きな財産であることにきっと気付きますよ。
乗らないから廃止にするという議論やイデオロギーは20世紀の置き土産ですからね。
Can You See It ?