ゴールデンウィークには飛行機で旅行された方も多いと思います。
飛行機の旅はお楽しみいただけましたでしょうか?
私は航空業界を離れてからすでに16年が経過し、日進月歩の航空業界ですから、ずいぶん変わったなあと思うのですが、今、空港へ行くと、ほとんどすべての飛行機がエンジン2つの双発機になっていることに気が付きます。
ところが、私がまだ現役時代、と言っても15~6年前まではエンジンが4つ付いた飛行機や3つの飛行機がたくさん飛んでいました。
その中でも3つの飛行機というのがありました。
奇数だと不思議ですよね。
右に2つ、左に1つ?
とか思われるかもしれませんが、エンジン3つの飛行機は後ろに1つ付いていました。

フィンエアーのMD11 ムーミン塗装です。

ロッキードL-1011 全日空のトライスター。
日本で飛んでいたエンジン3発機にはこのほかにボーイング727という飛行機がありました。

全日空のホームページより
このボーイング727はエンジンが3つとも後ろに付いているタイプで、ダイナミックなスタイルに昭和の少年は憧れたものでした。
さて、ではなぜ3発の飛行機が存在したのでしょうか?
そして、どうして今は無くなって2発になったのでしょうか?
その理由はアメリカ本土からハワイへ行くためのものです。
エンジンが2つの飛行機は、飛行中にもし片方のエンジンがトラブルを起こして停止してしまったらどうなるでしょうか?
簡単な話ですよね。
残った1つのエンジンで緊急着陸できる空港まで飛ばなければなりません。
当時の法律では60分以内に緊急着陸しなければならないとされていました。
そこで問題になったのはハワイへ行く路線です。
西海岸とハワイの間は5時間ほどかかります。
飛行中に太平洋上でエンジントラブルが発生しても、60分以内に緊急着陸することができません。
かと言って、ジャンボジェットB747のような超大型機はともかく、中型の飛行機ではわざわざエンジン4発にする必要もありません。
そこで登場したのがエンジン3発の飛行機ということなのです。
あくまでも確率論の話ですが、3発であれば1つダメになっても太平洋を越えられるだろうという考え方です。
1960年代はこの片エンジンで最大飛行できる時間が60分でした。
それが、エンジンの性能が向上し、信頼性が増してきた1980年代になると120分になりました。
でも、120分でも片道5時間かかるハワイ便には就航できませんでした。
アメリカの航空メーカーが最後まで3発機を作っていたのはこのためです。
やがて片肺飛行のルールが最高で180分に引き上げられるようになりました。
この片肺飛行のルールをETOPS(Extended-range Twin-engine Operational Performance Standards)と言いますが、現在は機種によって最大370分とされています。
これでエンジン2発の双発機でも太平洋横断が可能になったということになります。

そこから急速に3発機、4発機の役目が終わりまして、あれほど数を誇った写真のジャンボジェット(B747)もう退役してしまいました。
そして、今はどこの空港へ行っても双発機ばかりになったということであります。
でも、双発機って私としてはやっぱりちょっと不安です。
なぜなら1発ダメになったらその瞬間に緊急事態だからです。
つまり精神的余裕がない。
太平洋や大西洋ばかりではありません。
アフリカの砂漠地帯や冬のシベリアなども、緊急着陸できる空港が無ければ大海原と同じですからね。
つまり、飛行できるルートが制約を受けるということになるのです。

双発機のフライトプランを組むときには、緊急着陸できる飛行場を中心として、こうして半径180分の円を描いて、この円が必ず重なるようにしなければなりません。
重なっていれば合格。離れるようであれば飛行できませんよ。となるのです。
B747だと何も考えませんでしたが、B777になった時には神経使いました。
というのも懐かしい思い出です。
まぁ、現在ETOPSも300越えであれば、ほぼほぼ何も気にする必要はないかもしれませんが、そういう過去を知っている身としては、海を越えるような長距離路線では双発機の便には乗りたくないなあと思う次第であります。
ということを言っているような昭和の人間は、すでに航空業界ではお払い箱ということですね。
これからの皆さん、頑張ってください。
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