小さな心遣い

昨日四国から帰って来る時の便。

チェックインの時に荷物を預けたのですが、羽田空港に到着して受け取った私の荷物に、小さなタグが付いていました。

「本日は日本航空の翼をお選びいただきましてありがとうございます。」と手書きのメッセージが書かれていました。

航空業界は今本当に大変だと思います。
経営危機になると、会社の中というのがぎくしゃくし始めます。
そういう時にはコストをどう切り詰めるか、サービスをどうやって削るか、そういう話ばかりになりますから、社内の雰囲気も暗くなります。
まして、誰かに辞めてもらわなければならないというようなことになるとしたら、戦々恐々でしょう。
コロナが1年以上続いている今、航空業界はそういう状況にあって、きっと殺伐とした雰囲気に支配されているんだろうなあ。
そんなことは誰でも思いますよね。

でも、受け取った荷物にさり気ないメッセージが付けられているのを見て、なんとなくホッとしました。

なぜなら現場が殺伐とした雰囲気になると、運航面にも支障が出てくることがあって、そうなるといろいろトラブルが発生する危険性があるというのが現場の通念ですからね。
鉄道会社もそうだと思いますが、現場を知らない空論ではわからないことがありますから私は長年の経験からそんなことを感じるのです。

だから、この小さな心遣いにとても温かなものを感じてホッとしたのです。

さて、その飛行機の機内でこんなものを目にしました。

大分の焼酎会社の宣伝広告です。

おぉ、いい所に使ってくれましたね。

ありがたや、ありがたや。

でもふと思ったんです。
4月も半ばを過ぎているのに、こういう広告があることがインターネットの世界を含めて全く話題になっていないのはなぜか。

もったいないですね。
せっかくの告知のチャンスが、話題になっていないということは告知のチャンスを活かせていないわけです。

私もさんざんやってきましたが、こういう広告やCMに採用してもらうのって、なかなか大変なんです。

「メディアを利用して情報発信して全国区にすれば、たくさんの人にいらしていただける。」

一見簡単なことのように聞こえるかもしれませんが、これも実際にやったことの無い人間がわかったように言うだけなら誰だって言えますが、じゃあ、実際にどうやってやるのかという話になるとなかなか大変です。それを実現して形にしているのですから会社の努力はきちんと評価されるべきではないかと思うのですが、せっかくここまで実現しても世間で話題になっていない。

で、どうして話題になっていないのか?

そうです、今の時期、飛行機に乗る旅行者の数がものすごく少ないのです。
飛行機自体が欠航でオングラウンド。
飛んでる飛行機もお客様はまばらですから。

では、そのまばらなお客様はどんな人たちだろうかと考えると、多分お仕事で利用する人たちが多いのではないか。
観光客というのは自粛でほとんどいないのですからね。
だとすると、お仕事で飛行機を利用する人というのは機内でいちいち前のポケットから機内誌を取り出して読んだりはしない。
観光客なら飛行機に乗ることもめったにないでしょうから機内誌にも手を伸ばすでしょうけど、出張で飛んでいる人たちは機内誌など見ませんから、つまりは人の目に触れないのです。
だから、話題になっていない。
飛行機に無縁の房総半島の過疎地の人たちは、そもそもそんなことは知る由もありませんしね。(笑)

そう考えると、なんともったいないことでしょうか。
これだけのチャンスが活かされていないのですから。

CM広告に使われるということは、「おっ、いい所だなあ。」と思っていただいて、「行ってみよう。」という動機付けになります。
鉄道旅の番組ならそれなりのファンがいるでしょうから、こういう場所があることは知っています。でも、お酒の広告に使われるということは、ローカル鉄道に興味のない人たちにも見てもらえるチャンスがあるということですから、新規顧客の開拓につながります。

そういう絶好のチャンスなのですが、そもそも飛行機に乗る人が居ないし、せっかく乗ってくれている人が機内誌を手にしないんじゃあ、本当にもったいないですね。

私はこの航空会社の社長が毎月何を書かれているのかというあいさつ文が気になるのと、中ほどにある浅田次郎のエッセイを読むのが好きなので、毎号1度は手にすることにしておりますので、目に入った次第です。

この会社のCMは昔から味がある映像で、私はなかなか気に入ってるのですが、私自身が麦は飲まないので、この商品の良さがわからないのが残念ですが。

1999年のお気に入りのCMです。

こんな夢の世界のような鉄道が東京から1時間のところにあるのです。

郷土写真家、上総中野の渡辺新悟さん撮影の昨日今日の沿線。
菜の花と桜は終わりましたが、緑が萌えるこれからの季節が一番素敵な時期です。

こういう鉄道が令和の時代に走っているという価値を、いろいろな皆様にぜひ気づいていただきたいと思います。

長引くコロナ禍の中で頑張っている鉄道と、頑張っている地域の人たちに、ぜひ、皆様方のやさしい小さな心遣いをお願いいたします。