私が警察から職務質問を受けたこと

先日、週刊「大衆」の記事をご紹介させていただきました鉄道写真家の南正時先生が、警察の職務質問を受けたお話が先生のFACEBOOKで紹介されていました。
ご自宅近くの名水公園を散歩がてら花や木を撮影されて、公園を出たところで、「ちょっとすいません」と2人の刑事に声を掛けられたそうで、先生はどうやら誘拐(未遂)犯に間違われたご様子。
そういえば公園内の作業員も自分の方を監視していたと先生はお気づきになられたようですが、いわゆる張り込みだったのでしょうか。
いろいろ質問されて、嫌疑が晴れると、2人のうちの1人の刑事が先生に向かって「存じ上げております。何冊かご本も読ませていただいております。私も好きなもので。」と言われたそうな。
誘拐事件はけしからんし、和服姿でカメラを持って公園を散歩している先生のような人を犯人扱いするのもけしからんことですが、なんとなく和むお話しでした。
さて、かくいう私も、すぐに思い出すだけで、警察官から職務質問されたことが、今までの人生で3回ほどあります。(交通事故、違反関係は除く。)
1回目は中学1年の時、上野駅の構内で。
いつもお話ししていることですが、中学生のころは学校が終わると上野駅に出かけては、発着する汽車を眺めるのが趣味だったんですが、何しろ当時(1970年代前半)の上野駅は、SLこそありませんでしたが、EF58とかEF57、EF80何て機関車が引く列車など当たり前の時代で、食堂車を連結した特急列車は各方面に出ていましたし、キハ58系のディーゼル急行や交直両用の電車急行などというのも当たり前でしたから、夕方の早い時間でも十分に楽しめたのです。
その時も、私はいつものように上野駅の構内を散歩していたのですが、「ちょっと君きみ」とおじさんから声を掛けられました。
振り返るとコートを着たおじさんが、そのコートの内側から黒い警察手帳を半分ほど見せて、私を見下ろしていました。
「ここで何をしているんだい?」とその刑事さんは私に尋ねました。
テレビドラマのシーンを見るようです。
私は「電車を見に来てるんですよ。」と答えましたが、それを聞いて、その刑事さんは「ああ、そう。ありがとう。もういいや。気を付けてね。」と言って去って行ったんですが、当時はやりだった家出人を上野駅で探している刑事さんだったんでしょう。私の言葉を一言聴いただけで東京の人間だということがわかって、「もういいや」となったんだと思います。
生意気盛りの私は、いくら刑事でも、人に声をかけておいて「もういいや」は無いだろうと思いましたが、その刑事さんがコートの中からチラリと見せた警察手帳にはヒモがついていて、たぶん落としたりなくしたりしないためでしょうが、幼稚園生の連絡帳みたいだったのがおかしくて、ゴリさん、デンカ、ボスの刑事番組に出てくる刑事とは全然違う姿に笑ってしまいました。
2度目の職務質問は30代半ばの時。
これはロンドンで受けました。
当時、航空会社ではヒースロー空港を経由するお客様の受託手荷物が盗難にあうという事件が頻発していて、日本に到着したお客様の荷物からも金品が盗まれる事件がありました。そこでイギリスの警察は空港内に隠しカメラを設置して、その証拠を押さえようとしました。スーツケースをこじ開けて中から金品を盗んでいる瞬間を写した映像を使って警察は犯人グループを検挙したいと考えていたのです。
今では防犯カメラ先進国となったイギリスですが、今から20年ぐらい前からその兆しがあったということになりますね。
そしてその証拠映像に写っているスーツケースというのが、私が担当したお客様のものだったのです。
本社から成田に連絡が入り、事件の経緯を聞かれ、お客様からの被害の申告などをいただいて、ちょうど出張予定がありましたので、ロンドン滞在中にホテルの支配人室を借りて刑事さんの職務質問を受けたのです。
ロンドンは年に数回出かけている勝手知ったる所ではありましたが、やはり私は不安でしたので、当時ロンドンに駐在していた同じ会社の日本人職員に立ち会ってもらって、約1時間ほどの職務質問を受けましたが、その時の刑事さんと言うのがなんとなくハリー・キャラハン(ダーティーハリーに出てくるクリントイーストウッドの若い時)に似ていましたので、日本の刑事とはずいぶん違うなあとおかしく思いました。
3回目の職務質問は、40代半ばだったと思います。
お袋のところに遊びに行っている子供を迎えに行くために、中山道を板橋に向かって走っているときでした。
ちょうど、西巣鴨の方から来て埼京線の陸橋を越える辺りで、後ろから覆面パトカーに停められました。
道路が膨らんで少しスペースができるところに車を停められたのです。
私はスピードは出していませんでしたので、「スピード出してませんけど、何キロでしたか?」と降りてきた警察官に尋ねました。
でも不思議なことに、警察官は私服の刑事だったんです。
彼は少し栃木なまりがある言葉で、自分たちは交通課ではないからスピード違反を捕まえるのではないと言って、実は世田谷の方であった未解決の大きな事件を捜査していること。その容疑がかかっているのが私が当時乗っていた黒いステーションワゴンで、東京ナンバーじゃなかったので職務質問をしたということでした。
その刑事は「照会が終わったらすぐデータ消しますから。」と言って、私に人差し指の指紋を押すように黒い朱肉を差し出しました。私は別に拒否する理由もないので素直に従いましたが、夜の国道で覆面パトカーに停められて、指紋を押されるのは気分の良い物ではありませんね。
私は基本的には警察を信用しておりませんので、「すぐ消すから」と言ったあの指紋は、きっと今でもデータベースのどこかに残っているだろうなあと考えていますが、そう思うと、何か悪いことをしたらすぐ捕まるわけですから、悪いことはできませんと気を引き締めるわけです。
さて、FACEBOOKで南先生がもこのこの世田谷で起きた未解決事件に触れられていますが、八王子の方で発生したスーパーマーケットの強盗事件と合わせて、何とか解決してほしい事件でありますので、そのためには私も協力を惜しまない姿勢が、この3回目の職務質問に表れているということなのであります。
皆さんも、いつ何時このような職務質問を受けるかもしれませんので、警察官に対する心の準備はきちんとしておいた方が良いですよ。
向こうからお巡りさんがやってきたら、思わず踵を返して逃げたくなるのが人情です。
お巡りさんとしては、「悪いことをしてなければ逃げる必要はないだろう。」と言いますが、悪いことしてなくたって、お巡りさんを見たらよい気分がしないのが人情だということをお巡りさんは理解できませんから、そういう人に理解させようとする努力をするのも面倒だから、私は警察とは関わり合いになりたくないのであり、関わり合いにならなくて済むような人生を歩んでいるつもりなのです。
わなを仕掛けて交通違反を捕まえておいて、青切符と払込票を渡しながら、「今度から気を付けるように。」と言うのが彼らのお客様に対する言葉遣いですが、予算があって目標があって、その売り上げのためにお金をいただく行為をしているわけですから、そういう時は日本語では「ありがとうございました。」というのが正しい言葉遣いだと私は思います。
警察官には警察官特有の習性とか臭いというのがありますから、それが気に食わないだけなんですがね。
日々、厳しい勤務をこなされている警察官の皆様、ご苦労さまでございます。